保全事件の記録の閲覧等ほぜんじけんのきろくのえつらんとう
保全事件の記録の閲覧等とは、保全命令に関する手続又は保全執行に関し裁判所が行う手続の記録について、利害関係を有する者が裁判所書記官に閲覧・謄写などを請求することで、債権者以外の者は、債務者を呼び出す期日の指定又は債務者への保全命令の送達があるまで請求できません(5条)。
保全事件の記録の閲覧等には、民事訴訟と違う制限があります。仮差押えのように債務者に知られないうちに発令と執行をする手続では、債務者が先に記録を見ると財産を隠されるおそれがあるからです。

民事保全法 第5条第1項保全命令に関する手続又は保全執行に関し裁判所が行う手続について、利害関係を有する者は、裁判所書記官に対し、事件の記録の閲覧若しくは謄写、その正本、謄本若しくは抄本の交付又は事件に関する事項の証明書の交付を請求することができる。ただし、債権者以外の者にあっては、保全命令の申立てに関し口頭弁論若しくは債務者を呼び出す審尋の期日の指定があり、又は債務者に対する保全命令の送達があるまでの間は、この限りでない。
債権者以外の者は、債務者を呼び出す期日の指定か保全命令の送達があるまで、記録を閲覧できません
5条本文は、保全命令に関する手続又は保全執行に関し裁判所が行う手続について、利害関係を有する者が裁判所書記官に記録の閲覧・謄写、正本・謄本・抄本の交付、事件に関する事項の証明書の交付を請求できるとしています。ただし書は、債権者以外の者については、保全命令の申立てに関し口頭弁論若しくは債務者を呼び出す審尋の期日の指定があり、又は債務者に対する保全命令の送達があるまでの間は請求できないとしています。
債権者は、この制限を受けず、発令前でも記録を閲覧できます
ただし書の制限は「債権者以外の者にあっては」とされているので、申立てをした債権者自身には及びません。「保全命令に関する手続については、債権者であっても、保全命令の申立てに関し口頭弁論若しくは債務者を呼び出す審尋の期日の指定があり、又は債務者に対する保全命令の送達があるまでの間は、裁判所書記官に対し、事件の記録の閲覧を請求することができない」という肢(R5 午後 問6 ウ)は誤りです。
令和5年のIT化改正の残りの部分の施行後は、電磁的事件記録の閲覧の規定が分かれますが、債権者以外の者の制限は同じです
令和5年法律第53号(2023年6月14日公布)のうち、公布の日から5年を超えない範囲内で政令で定める日に施行される改正の後は、紙の記録(非電磁的事件記録)の閲覧等と、電磁的事件記録の閲覧・複写等と、事件に関する事項の証明とが、別々の条に分かれます。債権者以外の者が期日の指定又は保全命令の送達まで請求できないという制限は、これらをまとめて受ける独立の条に移り、内容は変わりません。R5 午後 問6 ウ の結論は、改正後も変わりません。
民事訴訟の記録と違い、閲覧できるのは利害関係を有する者に限られます
民事訴訟では、何人も裁判所書記官に対し非電磁的訴訟記録の閲覧を請求でき、謄写や正本等の交付は当事者と利害関係を疎明した第三者に限られます(民事訴訟法91条1項・3項)。民事保全では、閲覧も謄写も正本等の交付も、利害関係を有する者に限られます(5条本文)。保全の手続は非公開で進むことが多く、債務者の信用にかかわる情報も含まれるからです。さらに、債権者以外の者については、債務者が手続を知る時点までは閲覧等を請求できないという時期の制限が重なります(5条ただし書)。
当事者が秘密記載部分や秘匿事項記載部分を除いた文書を提出した場合には、閲覧・謄写は、その提出されたものによってさせることができます(民事保全規則6条1項)。住所や氏名を相手方に知られたくない当事者を守るための民事訴訟の秘匿制度(民事訴訟法133条)も7条により準用され、その届出書面の閲覧は、秘匿事項などを除いて提出されたものによってさせることができます(民事保全規則6条2項)。
試験ではこう問われる
- 債権者以外の者は、債務者を呼び出す期日の指定か保全命令の送達があるまで記録の閲覧を請求できない(5条ただし書)
- 債権者自身は、発令前でも記録の閲覧を請求できる(5条ただし書。R5 午後 問6 ウ ×)
- 閲覧等を請求できるのは利害関係を有する者で、請求の相手は裁判所書記官である(5条本文)
- IT化改正の残りの部分の施行後も、債権者以外の者の閲覧の制限は同じ内容で残る(令和5年法律第53号)
この用語が問われた肢
保全命令に関する手続については、債権者であっても、保全命令の申立てに関し口頭弁論若しくは債務者を呼び出す審尋の期日の指定があり、又は債務者に対する保全命令の送達があるまでの間は、裁判所書記官に対し、事件の記録の閲覧を請求することができない。
解説と関連先例は肢別演習で読めます。

