多数当事者の債権債務の類型(分割・不可分・連帯・不真正連帯)たすうとうじしゃのさいけんさいむのるいけい
多数当事者の債権債務の類型とは、債権者又は債務者が数人いる場合の関係を、別段の意思表示がない限り等しい割合で分かれる分割債権・分割債務(427条)、給付の目的が性質上不可分な不可分債権・不可分債務(428条・430条)、法令の規定又は当事者の意思表示によって各自が全部について権利を有し又は責任を負う連帯債権・連帯債務(432条・436条)に分けた区別です。
兄弟二人で親から100万円の貸金債権を相続すれば、兄が50万円、弟が50万円の債権を別々に持つのが原則です。他方で、二人で一台の車を買ったときの引渡請求権のように、分けようのない給付もあります。民法は、債権者や債務者が複数いる場合を、ばらばらに分かれる分割債権・分割債務、分けられない給付についての不可分債権・不可分債務、当事者の意思表示などで全員が全部について責任を負う連帯債権・連帯債務に分けて、それぞれの効力を定めています。

数人の債権者又は債務者がいるときは、別段の意思表示がない限り、等しい割合の分割債権・分割債務になるのが原則です
数人の債権者又は債務者がある場合において、別段の意思表示がないときは、各債権者又は各債務者は、それぞれ等しい割合で権利を有し、又は義務を負います(427条)。分割された債権・債務は互いに独立しているので、一人の債権者や債務者について生じた事由は他の者に影響しません。判例は、金銭債権のような可分債権が共同相続されたときは、相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されるとしています(最判昭和29年4月8日)。そのため、期限の定めのない貸金債権を共同相続した一人が債務者に全額の弁済を請求しても、自分の相続分を超える部分は権利のない請求にすぎず、債務者が履行遅滞になるのはその相続人の分だけです。相続開始から遺産分割までの間に遺産である賃貸不動産から生じる賃料債権も、遺産とは別個の財産として、各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得し、後の遺産分割の影響を受けません(最判平成17年9月8日)。ただし、預貯金債権は当然には分割されず遺産分割の対象になります(最大決平成28年12月19日)。この点は相続財産の語で扱います。
不可分債権・不可分債務は給付の目的が性質上不可分なときだけに成立し、意思表示で数人に全部の責任を負わせると連帯債権・連帯債務になります
令和2年4月施行の債権法改正の前は、債権の目的が「性質上又は当事者の意思表示によって」不可分である場合に不可分債権・不可分債務が成立するとされていました(旧428条)。現在の428条・430条は、債権・債務の目的がその性質上不可分である場合に限っています。性質上可分な給付について、法令の規定又は当事者の意思表示によって数人が連帯して債権を有し又は債務を負担するときは、連帯債権(432条)・連帯債務(436条)になります。そのため、当事者の意思表示によって不可分債権・不可分債務が成立することはありません。改正前は旧428条により金銭債権も意思表示で不可分債権にできましたが、現在の428条は性質上の不可分に限っているので、金銭債権を当事者の意思表示によって不可分債権とすることはできません。金銭債権について意思表示で数人に全部を請求させたいときは、連帯債権の約定をすることになります。
- 分割債権・分割債務(427条)別段の意思表示がなければ等しい割合で分かれる。一人に生じた事由は他に影響しない
- 不可分債権・不可分債務(428条・430条)給付の目的が性質上不可分なときに限る。連帯債権・連帯債務の規定を準用する
- 連帯債権・連帯債務(432条・436条)性質上可分な給付で、法令の規定又は当事者の意思表示によって成立する
- 共同不法行為者の損害賠償債務(719条1項)法令の規定による連帯債務。改正前は不真正連帯債務と呼ばれた
連帯債務者が破産しても、債権者は破産手続開始の時の債権の全額で各破産手続に参加できます
連帯債務では、債権者は、連帯債務者の一人に対し、又は同時に若しくは順次に全ての連帯債務者に対し、全部又は一部の履行を請求できます(436条)。この地位は連帯債務者が破産しても変わらず、債権者は破産手続開始の時に有する債権の全額について、それぞれの破産手続に参加できます(破産法104条1項)。改正前は同じ内容の規定が民法にありましたが、現在は破産法だけに置かれています。頭割りにした額に限って配当に加入するのではありません。

共同不法行為者の損害賠償債務は連帯債務で、一人に対する請求や免除は原則として他の者に効力を生じません
共同不法行為者は、各自が連帯してその損害を賠償する責任を負います(719条1項)。判例は、各自の行為が客観的に関連し共同して違法に損害を加えた場合には、各自が相当因果関係にある損害の全部について賠償の責任を負うとしています。歩行者が二台の車の衝突で負傷した事例では、被害者は損害額の全額をどちらの運転者にも請求できます。改正前は、共同不法行為者の債務は債務者相互の結び付きが弱い不真正連帯債務とされ、請求や免除に絶対的効力を認めた旧434条・旧437条は適用されないと解されていました。現在は請求・免除も相対的効力しか持たないので(441条本文)、通常の連帯債務と同じ結論になります。一人を被告とする訴えの提起は他の共同不法行為者の債務の時効を中断させないとされてきました。現在の言葉では、時効の完成猶予・更新の効力が他の共同不法行為者に及ばないと言い換えられます。判例は、被害者が共同不法行為者の一人に債務を免除しても、他の共同不法行為者の残債務をも免除する意思を有していると認められるときに限って、その者にも免除の効力が及ぶとしています(最判平成10年9月10日)。被害者が他の共同不法行為者の債務を免除する意思を有していなければ、被害者はその者に損害の全額を請求できます。
債務引受があっても債務者と引受人が分割債務を負うことはなく、併存的債務引受の引受人は債務者と連帯して債務を負います
債務者以外の者が債務者の債務と同一の内容の債務を負担する債務引受には、債務者も債務を負い続ける併存的債務引受と、債務者が自己の債務を免れる免責的債務引受があります。併存的債務引受の引受人は、債務者と連帯して、債務者が債権者に対して負担する債務と同一の内容の債務を負担します(470条1項)。改正前も、判例は併存的債務引受の債務者と引受人の関係を連帯債務としていました。債務引受がされても、原債務者と引受人が分割債務を負うことにはなりません。債務引受の要件と効果は併存的債務引受・免責的債務引受の語で扱います。
民法 第427条(分割債権及び分割債務)
数人の債権者又は債務者がある場合において、別段の意思表示がないときは、各債権者又は各債務者は、それぞれ等しい割合で権利を有し、又は義務を負う。
民法 第430条(不可分債務)
第四款(連帯債務)の規定(第四百四十条の規定を除く。)は、債務の目的がその性質上不可分である場合において、数人の債務者があるときについて準用する。
民法 第436条(連帯債務者に対する履行の請求)
債務の目的がその性質上可分である場合において、法令の規定又は当事者の意思表示によって数人が連帯して債務を負担するときは、債権者は、その連帯債務者の一人に対し、又は同時に若しくは順次に全ての連帯債務者に対し、全部又は一部の履行を請求することができる。
試験ではこう問われる
- 数人の債権者・債務者は、別段の意思表示がなければ等しい割合の分割債権・分割債務になる(427条)
- 各連帯債権者は、全ての債権者のために全部の履行を請求することができる(432条。R4 問16 ア ○)
- 不可分債権・不可分債務は性質上不可分な場合に限る。意思表示によるものは連帯債権・連帯債務になる(428条・430条・432条・436条)
- 遺産分割前の賃貸不動産の賃料債権は、各共同相続人が相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得する(最判平成17年9月8日)
- 連帯債務者を債務者とする抵当権の設定の登記では、連帯債務者ごとの負担割合を申請情報の内容としなければならないわけではない(R4 午後 問13 オ ×)
- 連帯債務者の一人に対する債権だけが譲渡されたときは、「債権譲渡(連帯債務者Aに係る債権)」を原因として抵当権の一部移転の登記をする(R7 午後 問24 エ ○)
- 共同不法行為者の一人への請求は他の者の時効に影響せず、免除は他の者を免除する意思があるときだけ及ぶ(441条本文・最判平成10年9月10日)

