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相続分(法定相続分・指定相続分・特別受益・寄与分・特別寄与料・相続分の譲渡)そうぞくぶん

民法 第15章 親族・相続 過去問で16肢

相続分とは、共同相続人が相続財産全体に対して持つ割合のことで、遺言で指定されなければ900条・901条の法定相続分により、特別受益(903条)と寄与分(904条の2)で調整した額を具体的相続分といいます。

相続人が何人もいるとき、誰がどれだけ受け継ぐかを割合で示したものが相続分です。遺言がなければ民法の決めた法定相続分によりますが、生前に家を建てる資金をもらった子と何ももらわなかった子を同じ割合で扱うと不公平になります。そこで、生前の贈与や遺贈を計算に戻す特別受益の持戻しと、親の家業を手伝って財産を増やした相続人に上乗せする寄与分で調整し、実際の取り分(具体的相続分)を出します。

遺産分割協議の座卓の場面。座卓を囲んで女性(札「配偶者B」)、男性(札「子C」)、女性(札「子D」)が座っている。Cの前に「生前に受けた住宅資金1000万円」の札、Dの前に「家業を手伝った」の札。座卓の中央に「遺産4000万円」の箱。先生が

法定相続分は配偶者と組み合わさる血族の順位で決まり、同順位の血族は頭数で等しく分けます

子と配偶者が相続人であるときは各2分の1、配偶者と直系尊属のときは配偶者3分の2・直系尊属3分の1、配偶者と兄弟姉妹のときは配偶者4分の3・兄弟姉妹4分の1で、子・直系尊属・兄弟姉妹が数人あるときは各自等しく分けます(900条)。配偶者と父母が相続人なら、父母の相続分は各6分の1になります。父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の2分の1です(900条4号ただし書)。嫡出でない子の相続分を嫡出子の2分の1とする規定は違憲とされ(最大決平成25年9月4日)、削除されたので、現在は嫡出子と同じです。代襲相続人の相続分は被代襲者が受けるべきであったものと同じです(901条)。

  • 配偶者と子配偶者2分の1・子2分の1(900条1号)
  • 配偶者と直系尊属配偶者3分の2・直系尊属3分の1(父母なら各6分の1)(900条2号)
  • 配偶者と兄弟姉妹配偶者4分の3・兄弟姉妹4分の1(半血は全血の2分の1)(900条3号・4号)
  • 代襲相続人被代襲者が受けるべきであった相続分を頭数で分ける(901条)

遺言で相続分を指定できますが、相続債権者は指定に応じた承継を承認しない限り法定相続分で権利を行使できます

被相続人は、遺言で共同相続人の相続分を定め、又はこれを定めることを第三者に委託できます(902条1項)。遺留分を侵害する指定も無効にはならず、遺留分権利者は遺留分侵害額の支払を請求できるだけです。相続分の指定は債権者の関与なくされるので、相続債権者は、指定がされた場合でも各共同相続人に法定相続分に応じて権利を行使でき、共同相続人の一人に指定相続分に応じた債務の承継を承認したときはこの限りではありません(902条の2。最判平成21年3月24日を明文化したものです)。「Aが相続開始の時に有した債務の債権者は,遺言による相続分の指定がされた場合であっても,その指定された相続分に応じた債務の承継を承認しない限り,B及びCに対し,その法定相続分に応じてその権利を行使することができる。」という肢(R3 問22 エ)は正しいです。共同相続人全員が協議すれば、指定と異なる割合で遺産分割ができます(907条1項)。相続放棄をした者は初めから相続人とならなかったものとみなされるので(939条)、放棄の後にその者の相続分を指定する遺言が見つかっても、その者は相続しません。

特別受益は相続財産に持ち戻して計算しますが、超過分を返す必要はなく、配偶者への居住用不動産の贈与は持戻し免除が推定されます

共同相続人中に遺贈を受け、又は婚姻・養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは、相続開始時の財産にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみなし、法定相続分又は指定相続分から遺贈・贈与の価額を控除した残額をその者の相続分とします(903条1項)。遺贈・贈与の価額が相続分の価額以上のときは相続分を受けられませんが(903条2項)、超過分を他の共同相続人に返還する必要はありません。被相続人が持ち戻さない意思(持戻し免除)を表示したときはそれに従います(903条3項)。遺産4000万円、相続人が配偶者Bと子C・Dの事例で、死亡の3年前にDに生計の資本として1000万円を贈与していれば、5000万円を基に計算してBが2500万円、Cが1250万円、Dが250万円となり、遺言で持戻し免除を指示していれば、Bが2000万円、C及びDがそれぞれ1000万円となります。婚姻期間が20年以上の夫婦の一方が他方に居住の用に供する建物又はその敷地を遺贈又は贈与したときは、持戻し免除の意思を表示したものと推定されます(903条4項、平成30年改正)。贈与の目的財産が受贈者の行為によって滅失し又は価格が増減したときでも、相続開始時に原状のままであるものとみなして評価しますが(904条)、地震のように受贈者の行為によらない滅失には適用がありません。

板書の図解の場面。黒板に計算式「遺産1億円+Cへの贈与1000万円−Fの寄与分2000万円=9000万円」。その下に「E(配偶者)4500万円」「C 1125万円−1000万円=125万円」「D 1125万円」「F 1125万円+2000万

寄与分は相続財産から控除して寄与者の相続分に加え、相続人でない親族の特別の寄与は特別寄与料という金銭の請求になります

共同相続人中に、被相続人の事業に関する労務の提供や療養看護などで被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした者があるときは、相続開始時の財産から協議で定めた寄与分を控除したものを相続財産とみなし、算定した相続分に寄与分を加えた額をその者の相続分とします(904条の2第1項)。協議が調わなければ寄与者の請求で家庭裁判所が定め(同条2項)、寄与分は相続財産の価額から遺贈の価額を控除した残額を超えられません(同条3項)。遺産4000万円、相続人が配偶者Bと子C・Dで、Cに800万円の寄与分があれば、3200万円を基に計算してB及びCがそれぞれ1600万円、Dが800万円となります。遺産1億円、Cに生計の資本の贈与1000万円、Gに遺贈1000万円、Fに寄与分2000万円がある事例では、1億円に1000万円を加え2000万円を引いた9000万円を基に計算します。相続開始から10年を経過した後の遺産分割では、原則として特別受益と寄与分の規定は適用されません(904条の3、令和3年改正)。相続人でない被相続人の親族が無償で療養看護その他の労務を提供して財産の維持・増加に特別の寄与をしたときは、相続人に対して特別寄与料という金銭の支払を請求できます(1050条1項)。特別寄与者からは相続人が除かれるので、相続人である配偶者Bが療養看護をした事例で、BがCに特別寄与料の支払を請求できるとする肢(R6 問23 ア)は誤りです。子Cの配偶者Dは3親等内の姻族として親族に当たり(725条3号)、相続人ではないので、「Aには、子B及びCがおり、Cの配偶者DがAに対して無償で療養看護をしていたところ、Aが死亡し、B及びCがAを相続した。この場合において、Dが療養看護をしたことによりAの財産の維持又は増加に特別の寄与をしたと認められるときは、Dは、B及びCに対し、特別寄与料の支払を請求することができる。」という肢(R6 問23 イ)は正しいです。特別の寄与は無償の療養看護その他の労務の提供によるものに限られるので、被相続人の弟が預金口座への振込送金で生活費を援助した事例で特別寄与料を請求できるとする肢(R6 問23 ウ)は誤りです。特別寄与料は金銭の請求で、特別寄与者が遺産の持分を取得するのではありません。特別寄与者は親族に限られ、親族でない者は特別寄与料を請求できません。協議が調わないときは、特別寄与者は家庭裁判所に協議に代わる処分を請求でき、その請求は相続の開始及び相続人を知った時から6か月、相続開始の時から1年を経過するとできません(同条2項)。この旨の肢(R6 問23 エ)は正しいです。特別寄与料の額は、相続開始の時の財産の価額から遺贈の価額を控除した残額を超えることができず(同条4項)、この旨の肢(R6 問23 オ)は正しいです。

相続分は第三者にも譲渡でき、他の共同相続人は取り戻せますが、特定の財産の持分を譲渡した場合には取戻しの規定は使えません

共同相続人の一人が遺産の分割前にその相続分を第三者に譲り渡したときは、他の共同相続人は、その価額及び費用を償還して、その相続分を譲り受けることができ、この権利は1か月以内に行使しなければなりません(905条)。この規定は第三者への譲渡ができることを前提にしているので、相続分は共同相続人以外の第三者にも譲渡できます。判例は、共同相続人の一人が遺産中の特定の不動産の共有持分を第三者に譲渡した場合には、905条を適用も類推適用もできないとしています(最判昭和53年7月13日)。他の共同相続人は、その持分を取り戻すことはできません。判例は、相続分の全部を譲渡した共同相続人は、遺産全体に対する割合的な持分をすべて失うので、遺産分割審判の手続等で遺産に属する財産の分割を求めることができないとしています(最判平成26年2月14日)。相続分の全部を譲渡した者は、遺産分割協議の当事者にもなりません。

民法 第902条の2

(相続分の指定がある場合の債権者の権利の行使)
被相続人が相続開始の時において有した債務の債権者は、前条の規定による相続分の指定がされた場合であっても、各共同相続人に対し、第九百条及び第九百一条の規定により算定した相続分に応じてその権利を行使することができる。ただし、その債権者が共同相続人の一人に対してその指定された相続分に応じた債務の承継を承認したときは、この限りでない。

民法 第903条第4項

婚姻期間が二十年以上の夫婦の一方である被相続人が、他の一方に対し、その居住の用に供する建物又はその敷地について遺贈又は贈与をしたときは、当該被相続人は、その遺贈又は贈与について第一項の規定を適用しない旨の意思を表示したものと推定する。

民法 第905条第1項

共同相続人の一人が遺産の分割前にその相続分を第三者に譲り渡したときは、他の共同相続人は、その価額及び費用を償還して、その相続分を譲り受けることができる。

試験ではこう問われる

  1. 配偶者と父母が相続人なら父母は各6分の1、配偶者と兄弟姉妹なら兄弟姉妹は合わせて4分の1で、半血の兄弟姉妹は全血の2分の1(900条)
  2. 相続債権者は指定相続分による承継を承認しない限り法定相続分で権利を行使できる(902条の2。R3 問22 エ ○)
  3. 特別受益の超過分は返還不要で、婚姻20年以上の夫婦の居住用不動産の遺贈・贈与は持戻し免除を推定し、寄与分は遺贈を控除した残額を超えられない(903条2項・4項・904条の2第3項)
  4. 特別寄与料を請求できるのは相続人でない親族で、相続人である配偶者は請求できず、相続人の配偶者は請求できる(1050条1項・725条。R6 問23 ア ×、イ ○)
  5. 特別の寄与は無償の療養看護その他の労務の提供によるもので、協議が調わなければ家庭裁判所に請求でき、額は遺贈を控除した残額を超えられない(1050条。R6 問23 ウ ×、エ ○、オ ○)
  6. 相続分は第三者にも譲渡でき他の共同相続人は1か月以内に取り戻せるが、特定の不動産の持分の譲渡には適用されず、相続分の全部を譲渡した者は遺産分割を求められない(905条・最判昭和53年7月13日・最判平成26年2月14日)
  7. 相続分の譲渡を受けた共同相続人は被相続人から直接の相続の登記を単独で申請できるが、相続人でない者への相続分の贈与では直接の登記はできない(R8 午後 問16 エ ○、R5 午後 問18 エ ×)

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