婚姻の成立(婚姻意思・婚姻障害・無効と取消し)こんいんのせいりつ
婚姻の成立とは、当事者間に婚姻をする意思があり、婚姻障害(731条・732条・734条〜736条)がなく、戸籍法の定めるところにより届け出ることで婚姻が効力を生ずることで(739条1項)、婚姻をする意思がないときや届出をしないときは無効(742条)、婚姻障害に違反した婚姻や詐欺・強迫による婚姻は家庭裁判所に請求して取り消すことができ、その取消しは将来に向かってのみ効力を生じます(743条〜748条)。
婚姻は役所に届け出たときに成立しますが、届出の書類がそろっているだけでは足りず、本当に夫婦になる気持ちが要ります。子どもを嫡出子にするためだけの「形だけの結婚」は無効です。反対に、近親婚や18歳未満の婚姻のように、法律が禁じる婚姻でも届出が受理されてしまえば一応成立し、あとから家庭裁判所に取り消してもらう仕組みです。取り消しても、それまでの夫婦生活や生まれた子の身分を覆さないよう、効果は将来に向かってだけ生じます。

婚姻をする意思とは、真に社会観念上夫婦であると認められる関係の設定を欲する効果意思をいい、他の目的のための便法にすぎない届出は無効です
婚姻は、人違いその他の事由によって当事者間に婚姻をする意思がないとき、無効です(742条1号)。判例は、この婚姻をする意思とは、当事者間に真に社会観念上夫婦であると認められる関係の設定を欲する効果意思をいい、婚姻の届出自体について意思の合致があっても、それが単に他の目的を達するための便法として仮託されたものにすぎないときは、婚姻は効力を生じないとしています(最判昭和44年10月31日)。「婚姻の届出自体について当事者間に意思の合致があった場合において、それが単に他の目的を達成するための便法であって真に社会観念上夫婦であると認められる関係の設定を欲する効果意思がなかったときは、婚姻はその効力を生じない。」という肢(R7 問20 エ)は正しいです。子に嫡出子の身分を得させるため後日離婚する合意で届け出た婚姻も、効力を生じません。意思能力を欠く者は婚姻をする意思を持てないので、その婚姻は742条1号の無効に当たり、取消しの原因(743条以下の限定列挙)ではありません。人違いの婚姻も742条1号で無効で、財産行為の錯誤(95条)は適用されないので、人違いに重大な過失があっても婚姻の無効を主張できます。
婚姻意思は届書の作成時にあれば足り、無断で出された届出も実質的な夫婦関係があれば追認で届出の当初に遡って有効になります
婚姻は届出によって効力を生ずるので(739条1項)、婚姻をする意思は届出の時にも必要なのが原則です。判例は、事実上の夫婦共同生活関係にある者が婚姻意思を有し、その意思に基づいて届書を作成したときは、届出の受理の当時に意識を失っていても、その前に翻意したなどの特段の事情のない限り、受理によって婚姻は有効に成立するとしています(最判昭和44年4月3日)。また判例は、事実上の夫婦の一方が他方の意思に基づかないで婚姻届を作成提出した場合でも、当時両名に夫婦としての実質的生活関係が存在しており、後に他方がその届出の事実を知って追認したときは、婚姻は追認によりその届出の当初に遡って有効となるとしています(最判昭和47年7月25日)。追認の時から有効になるのではありません。
- 他の目的の便法として届け出た(最判昭和44年10月31日)無効
- 届書作成後、受理の時に昏睡状態(最判昭和44年4月3日)特段の事情がなければ有効
- 実質的な夫婦関係のある一方の無断の届出を他方が追認(最判昭和47年7月25日)届出の当初に遡って有効
- 届書作成時に意思能力がない無効(742条1号)。取消し原因ではない

婚姻障害に違反した婚姻は、各当事者・その親族・検察官が家庭裁判所に取消しを請求できますが、取消しが制限される場合があります
婚姻適齢(731条)・重婚(732条)・近親婚(734条〜736条)の規定に違反した婚姻は、各当事者、その親族又は検察官から、その取消しを家庭裁判所に請求できます(744条1項本文)。違反した婚姻も届出が受理されれば成立し、取り消されるまでは無効ではないので、「それぞれ 17 歳である男女の届け出た婚姻届が受理された場合には,当該婚姻は,取消しの請求がなくとも,当然に無効である。」という肢(R3 問20 ア)と、「配偶者のある者が重ねて婚姻をした場合には、その後婚は当然に無効である。」という肢(R7 問20 ウ)は誤りです。後婚の当事者も各当事者として取消しを請求でき、「配偶者のある者が重ねて婚姻をした場合には,後婚の配偶者は,当該後婚である婚姻の取消しを家庭裁判所に請求することができる。」という肢(R3 問20 イ)は正しいです。検察官は当事者の一方が死亡した後は請求できません(同項ただし書)。不適齢者が適齢に達したときは取消しを請求できません(745条1項)。養子と養方の傍系血族の間では婚姻できるので(734条1項ただし書)、養子と養親の実子の婚姻は近親婚を理由に取り消すことができません。養親子等の間では離縁で親族関係が終了した後でも婚姻できないので(736条)、「養子Aと養親Bが離縁をしたことによって親族関係が終了した後は、AとBは、婚姻をすることができる。」という肢(R7 問20 イ)は誤りです。
- 731条(婚姻適齢18歳)取消し可。適齢に達すれば請求不可(745条1項)
- 732条(重婚)取消し可。前婚の配偶者も請求できる(744条2項)
- 734条〜736条(近親婚)取消し可。養子と養方の傍系血族は禁止の対象外
- 747条(詐欺・強迫)詐欺・強迫を受けた者が請求。発見・強迫を免れた後3か月か追認で消滅
- 請求の相手方家庭裁判所。検察官は当事者の一方の死亡後は請求できない
婚姻の取消しは将来に向かってのみ効力を生じ、婚姻中に懐胎した子の嫡出推定は覆りません
婚姻の取消しは、将来に向かってのみその効力を生じます(748条1項)。取り消された行為が初めから無効であったものとみなされる121条と違い、婚姻の上に積み重なった夫婦の生活や子の身分を覆さないためで、縁組の取消しにも準用されます(808条1項)。「強迫による婚姻の取消しは,婚姻時に遡って,その効力を生ずる。」という肢(R3 問20 エ)は誤りで、「詐欺による婚姻の取消しは、将来に向かってのみその効力を生ずる。」という肢(R7 問20 ア)は正しいです。強迫を理由に婚姻が取り消されても、妻が婚姻中に懐胎した子は夫の子と推定されます(772条1項)。婚姻によって財産を得た当事者は、取消し原因を知らなかったときは現に利益を受けている限度で、知っていたときは得た利益の全部を返還します(748条2項・3項)。
成年被後見人は成年後見人の同意なく婚姻でき、婚姻適齢と再婚禁止期間は改正で変わりました
成年被後見人が婚姻をするには、その成年後見人の同意を要しません(738条)。意思能力があれば本人が単独でできるので、「成年被後見人が,成年後見人の同意を得ないで婚姻をした場合には,成年後見人は,その同意がないことを理由として,当該婚姻の取消しを家庭裁判所に請求することができる。」という肢(R3 問20 ウ)は誤りです。婚姻は18歳にならなければできず(731条)、令和4年4月から男女とも18歳になり、未成年者の婚姻への父母の同意(旧737条)はなくなりました。父母の同意がないことは、改正前も取消し原因(744条)に挙がっていませんでした。女性の再婚禁止期間(旧733条)は令和6年4月に削除されたので、前婚の解消の日から100日以内であっても再婚をすることができます。
民法 第739条第1項婚姻は、戸籍法(昭和二十二年法律第二百二十四号)の定めるところにより届け出ることによって、その効力を生ずる。
民法 第742条(婚姻の無効)
婚姻は、次に掲げる場合に限り、無効とする。
一 人違いその他の事由によって当事者間に婚姻をする意思がないとき。
二 当事者が婚姻の届出をしないとき。ただし、その届出が第七百三十九条第二項に定める方式を欠くだけであるときは、婚姻は、そのためにその効力を妨げられない。
民法 第744条第1項第七百三十一条、第七百三十二条及び第七百三十四条から第七百三十六条までの規定に違反した婚姻は、各当事者、その親族又は検察官から、その取消しを家庭裁判所に請求することができる。ただし、検察官は、当事者の一方が死亡した後は、これを請求することができない。
民法 第748条第1項婚姻の取消しは、将来に向かってのみその効力を生ずる。
試験ではこう問われる
- 他の目的のための便法として届け出た婚姻は効力を生じない(742条1号・最判昭和44年10月31日。R7 問20 エ ○)
- 届書作成時に婚姻意思があれば受理時に昏睡状態でも有効で、無断の届出の追認は届出の当初に遡る(最判昭和44年4月3日・最判昭和47年7月25日)
- 不適齢婚や重婚は無効ではなく取消しの対象で、後婚の配偶者も取消しを請求できる(744条。R3 問20 ア ×、R7 問20 ウ ×、R3 問20 イ ○)
- 養親子は離縁で親族関係が終了した後も婚姻できない(736条。R7 問20 イ ×)
- 詐欺・強迫による婚姻の取消しも将来に向かってのみ効力を生じる(748条1項。R3 問20 エ ×、R7 問20 ア ○)
- 成年被後見人の婚姻に成年後見人の同意は要らず、同意がないことを理由に取り消せない(738条。R3 問20 ウ ×)
- 婚姻適齢は男女とも18歳で、父母の同意(旧737条)と再婚禁止期間(旧733条)は削除された

