後見の機関(未成年後見人・成年後見人・後見監督人の選任と職務)こうけんのきかん
後見の機関とは、被後見人の財産を管理し代表する後見人(未成年後見人・成年後見人)と、後見人の事務を監督する後見監督人のことで、未成年後見人は遺言による指定か請求による家庭裁判所の選任で、成年後見人は後見開始の審判の際に家庭裁判所の職権による選任で就任します(839条・840条・843条・849条)。
親が亡くなった子や、判断する力を失った大人には、代わりに財産を管理し契約をする人が必要です。それが後見人で、子のための未成年後見人と、後見開始の審判を受けた大人のための成年後見人があります。後見人は他人の財産を預かるので、家庭裁判所が選び、辞めるにも家庭裁判所の許可が要り、さらに後見監督人が付くことがあります。後見人を誰がどう選ぶか、何をするのに許可や同意が要るかが、この語の中身です。

未成年後見は親権を行う者がいなくなれば当然に始まり、成年後見人は後見開始の審判のときに家庭裁判所が職権で選びます
後見は、未成年者に対して親権を行う者がないとき又は親権を行う者が管理権を有しないとき、及び後見開始の審判があったときに開始します(838条)。未成年後見は審判を要せず、親権停止の審判で親権を行う者がいなくなるときも開始します。未成年者に対して最後に親権を行う者は遺言で未成年後見人を指定できますが、管理権を有しない者はできず(839条1項)、「未成年者に対して最後に親権を行う者であっても、管理権を有しない場合には、遺言で未成年後見人を指定することはできない。」という肢(R5 問21 ア)は正しいです。遺言で指定された者は家庭裁判所の審判を経ずに未成年後見人となるので、遺言で指定された者が家庭裁判所の審判により未成年後見人となるとする肢(R8 問21 ウ)は誤りです。指定がないときは、未成年被後見人又はその親族その他の利害関係人の請求によって家庭裁判所が選任します(840条1項)。未成年後見人の選任は職権ではできないので、「未成年後見人が欠けたときは、家庭裁判所は、職権で未成年後見人を選任することができる。」という肢(R5 問21 イ)は誤りです。親権喪失の審判などで未成年後見人を選任する必要が生じたときは、その父又は母は遅滞なく選任を請求しなければならないので(841条)、「親権を喪失した父又は母は、未成年後見人の選任を家庭裁判所に請求することができない。」という肢(R5 問21 オ)は誤りです。これに対し、成年後見人は、家庭裁判所が後見開始の審判をするときに職権で選任します(843条1項)。「家庭裁判所は,職権で成年後見人を選任することはできない。」という肢(R3 問4 イ)と、後見開始の審判をする場合でも成年後見人を付さないことができるとする肢(R8 問4 イ)は誤りです。成年後見人が欠けたときは請求により又は職権で選任します(843条2項)。夫婦の一方が後見開始の審判を受けても、他方が成年後見人になる規定はありません。
- 未成年後見人の就任遺言による指定(839条)→指定がなければ請求による家庭裁判所の選任(840条1項)
- 成年後見人の就任後見開始の審判の際に家庭裁判所が職権で選任(843条1項)
- 欠けたとき未成年後見人は請求により選任(840条1項後段)。成年後見人は請求又は職権(843条2項)
- 追加の選任未成年後見人も成年後見人も、必要があれば請求又は職権で更に選任できる(840条2項・843条3項)
後見人は複数でも法人でもよく、未成年者・破産者などはなれず、辞任には家庭裁判所の許可が要ります
未成年後見人も成年後見人も、既に後見人がある場合に家庭裁判所が更に選任できます(840条2項・843条3項)。未成年後見人の追加選任を認める840条2項は平成23年の改正(平成24年施行)で設けられたもので、「未成年者について未成年後見人があるときは、家庭裁判所は、更に未成年後見人を選任することができない。」という肢(R8 問21 イ)は誤りです。法人も後見人になれます(840条3項・843条4項の括弧書は法人が後見人となる場合を前提としています)。「家庭裁判所は、法人を未成年後見人に選任することができる。」という肢(R5 問21 エ、R8 問21 ア)は正しいです。未成年者、家庭裁判所で免ぜられた法定代理人・保佐人・補助人、破産者、被後見人に対して訴訟をし又はした者とその配偶者・直系血族、行方の知れない者は後見人となることができません(847条)。「破産者は、未成年後見人となることができる。」という肢(R8 問21 エ)は誤りです。遺言で未成年者を未成年後見人に指定しても、その者は未成年後見人になりません。後見人は、正当な事由があるときは、家庭裁判所の許可を得て辞任できます(844条)。この「後見人」は未成年後見人と成年後見人の両方を指し、「成年後見人は,家庭裁判所の許可を得なければ,その任務を辞することができない。」という肢(R2 問21 ウ)は正しいです。解任(846条)と報酬(862条)も、未成年後見人と成年後見人に共通します。

数人の未成年後見人は共同して権限を行使し、家庭裁判所が単独行使や分掌を定められるのは財産に関する権限だけです
未成年後見人が数人あるときは共同してその権限を行使し(857条の2第1項)、家庭裁判所は職権で、その一部の者について財産に関する権限のみを行使すべきことを定めたり(同条2項)、財産に関する権限について各未成年後見人が単独で又は事務を分掌して行使すべきことを定めたりできます(同条3項)。単独行使や分掌を定められるのは財産に関する権限だけなので、「未成年後見人が数人選任されている場合であっても、各未成年後見人は、未成年被後見人の身上の監護に関する権限を単独で行使することができる。」という肢(R5 問21 ウ)は誤りです。未成年後見人は身上の監護について親権を行う者と同一の権利義務を有しますが、親権を行う者が定めた教育の方法や居所を変更するには、未成年後見監督人があるときはその同意を得なければならず(857条)、「未成年後見人は、親権を行う者が定めた未成年者の居所を変更するには、未成年後見監督人があるときは、その同意を得なければならない。」という肢(R8 問21 オ)は正しいです。成年後見人が数人あるときは、家庭裁判所が職権で共同して又は事務を分掌して権限を行使すべきことを定められます(859条の2第1項)。親権を行う者が管理権を有しない場合の未成年後見人は、財産に関する権限のみを有します(868条)。後見人は善良な管理者の注意をもって後見の事務を処理し(869条・644条)、自己のためにするのと同一の注意で足りるのは親権者の財産管理です(827条)。後見人は被後見人の財産を管理しその財産に関する法律行為について被後見人を代表しますが、被後見人の行為を目的とする債務を生ずべき場合には本人の同意が要ります(859条)。成年後見人は成年被後見人の意思を尊重しなければなりませんが(858条)、その意思に反した代理も無権代理にはなりません。
居住用不動産の処分には家庭裁判所の許可が、重要な財産行為には後見監督人の同意が要り、利益相反行為は後見監督人が代表します
成年後見人が成年被後見人に代わってその居住の用に供する建物又はその敷地について売却、賃貸、賃貸借の解除又は抵当権の設定その他これらに準ずる処分をするには、家庭裁判所の許可を得なければなりません(859条の3)。賃貸借の解除にも許可が要ります。許可が要るのは居住用不動産の処分に限られるので、「成年後見人は,家庭裁判所の許可を得なくても,成年被後見人名義の預金口座を解約することができる。」という肢(R2 問21 エ)は正しいです。後見監督人があるときは、後見人が被後見人に代わって営業や13条1項各号の行為をするにはその同意を得なければなりませんが、元本の領収は除かれます(864条)。預金の払戻しは元本の領収に当たるので、後見監督人の同意は要りません。同意を得ないでした行為は被後見人又は後見人が取り消すことができ(865条1項)、「成年後見人が成年後見監督人の同意を得ることなく成年被後見人に代わって金銭を借り入れる契約をした場合には、成年被後見人は、その契約を取り消すことができる。」という肢(R4 問21 エ)は正しいです。後見人と被後見人との利益が相反する行為は、826条の準用により特別代理人の選任を家庭裁判所に請求しなければなりませんが、後見監督人がある場合は後見監督人が被後見人を代表するので請求は要りません(860条・851条4号)。「成年後見監督人は、成年後見人と成年被後見人との利益が相反する行為については、成年被後見人のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならない。」という肢(R4 問21 オ)は誤りです。利益相反行為の判断基準は親権の内容と利益相反行為の語で扱います。
後見監督人には後見人の近親者はなれず、後見の計算が終わるまでは後見人に有利な契約や遺言が取り消され又は無効とされます
家庭裁判所は、必要があると認めるときは、被後見人、その親族若しくは後見人の請求により又は職権で後見監督人を選任でき(849条)、未成年後見人を指定できる者は遺言で未成年後見監督人を指定できます(848条)。選任は必要があると認めるときにできるもので、「家庭裁判所は、成年被後見人の請求がある場合には、成年後見監督人を選任しなければならない。」という肢(R4 問21 ア)は誤りです。後見監督人には後見人の規定の多くが準用され(852条)、法人も成年後見監督人になることができ、報酬は家庭裁判所が与えることができるにとどまります。「家庭裁判所は、成年後見監督人として、法人を選任することができる。」という肢(R4 問21 イ)は正しく、成年後見監督人の請求があれば報酬を与えなければならないとする肢(R4 問21 ウ)は誤りです。後見人の配偶者、直系血族及び兄弟姉妹は後見監督人となることができません(850条)。後見人を監督する者が後見人と近い身分関係にあっては監督が働かないからです。この規定は成年後見と未成年後見で区別がなく、成年後見人の父も成年後見監督人になれません。未成年被後見人が成年に達した後、後見の計算の終了前に未成年後見人又はその相続人との間でした契約は、その者が取り消すことができます(872条1項)。被後見人が後見の計算の終了前に後見人又はその配偶者若しくは直系卑属の利益となるべき遺言をしたときは、その遺言は無効です(966条1項。直系血族・配偶者・兄弟姉妹が後見人である場合を除く。同条2項)。法人である後見人の利益となるべき遺言も無効です。
民法 第840条第1項前条の規定により未成年後見人となるべき者がないときは、家庭裁判所は、未成年被後見人又はその親族その他の利害関係人の請求によって、未成年後見人を選任する。未成年後見人が欠けたときも、同様とする。
民法 第843条第1項家庭裁判所は、後見開始の審判をするときは、職権で、成年後見人を選任する。
民法 第844条(後見人の辞任)
後見人は、正当な事由があるときは、家庭裁判所の許可を得て、その任務を辞することができる。
民法 第850条(後見監督人の欠格事由)
後見人の配偶者、直系血族及び兄弟姉妹は、後見監督人となることができない。
民法 第859条の3(成年被後見人の居住用不動産の処分についての許可)
成年後見人は、成年被後見人に代わって、その居住の用に供する建物又はその敷地について、売却、賃貸、賃貸借の解除又は抵当権の設定その他これらに準ずる処分をするには、家庭裁判所の許可を得なければならない。
試験ではこう問われる
- 未成年後見人の選任は請求によるもので職権ではできず、親権を喪失した父母は選任を請求しなければならない(840条1項・841条。R5 問21 イ ×、R5 問21 オ ×)
- 遺言で指定された未成年後見人は審判を経ずに就任し、管理権のない親権者は指定できない(839条。R8 問21 ウ ×、R5 問21 ア ○)
- 成年後見人は後見開始の審判の際に職権で選任し、付さないことはできない(843条1項。R3 問4 イ ×、R8 問4 イ ×)
- 未成年後見人も追加選任でき、法人は後見人にも成年後見監督人にもなれ、破産者は後見人になれない(840条・847条・852条。R8 問21 イ ×、R8 問21 ア ○、R8 問21 エ ×、R4 問21 イ ○)
- 数人の未成年後見人が単独で行使できるのは財産に関する権限だけで、居所の変更には未成年後見監督人の同意が要る(857条の2・857条。R5 問21 ウ ×、R8 問21 オ ○)
- 成年後見人の辞任には家庭裁判所の許可が要るが、預金口座の解約には要らない(844条・859条の3。R2 問21 ウ ○、R2 問21 エ ○)
- 後見監督人の同意のない借財は取り消すことができ、利益相反行為は後見監督人が代表するので特別代理人は要らない(864条・865条・851条4号。R4 問21 エ ○、R4 問21 オ ×)

