法律行為と準法律行為(意思表示・観念の通知・意思の通知・単独行為)ほうりつこういとじゅんほうりつこうい
法律行為とは、意思表示を要素とし、表示された意思の内容どおりの法律効果が生じる行為のことで、契約・単独行為・合同行為があります。準法律行為は、意思の通知や観念の通知のように、表示があっても法律が定めた効果が生じるにとどまる行為をいいます。
「この土地を1000万円で売ります」と言えば、売るという意思のとおりに売買の効果が生まれます。これに対し、債権者が「お金は受け取りません」と告げても、受け取らない状態が法的に作られるわけではなく、債務者の提供が楽になるという法律の定めた効果が生じるだけです。民法は、意思のとおりに効果が生じる行為を法律行為と呼び、意思の内容と効果がずれる行為を準法律行為と呼んで分けています。どちらに当たるかで、どの規定が使えるかが変わるからです。

法律行為は意思表示を要素とし、表示した意思の内容どおりに効果が生じる行為で、単独行為・契約・合同行為に分かれます
法律行為は、意思表示を不可欠の要素とし、表示された意思の内容どおりの法律効果が生じる行為です。契約は申込みと承諾という向かい合う二つの意思表示の合致で成立し、単独行為は一方の当事者の意思表示だけで効果が生じ、合同行為は社団の設立のように同じ方向を向いた複数の意思表示で成立します。単独行為の代表は、取消し・追認・解除・相殺・債務の免除・遺言です。無権代理行為について本人が追認を拒絶すると、本人に効果が帰属しないことが確定します(113条)。表示した内容どおりの効果が本人の一方的な表示だけで生じるので、追認拒絶は単独行為です。債務の免除も、債権者が債務者に対して債務を免除する意思を表示したときに債権が消滅します(519条)。相殺は当事者の一方から相手方に対する意思表示によってし(506条1項)、対当額で債務が消滅する効果が表示のとおりに生じます。
- 契約申込みと承諾の合致で成立します(売買・賃貸借など)
- 単独行為一方の意思表示だけで効果が生じます(取消し・追認・追認拒絶・解除・相殺・免除・遺言)
- 合同行為同じ方向の複数の意思表示で成立します(社団の設立)
- 意思の通知(準法律行為)意思は表示しますが、効果は法律が定めます(受領の拒絶・制限行為能力者の相手方の催告)
- 観念の通知(準法律行為)事実を知らせるだけで、効果は法律が定めます(時効完成前の債務の承認・債権譲渡の通知)
準法律行為は、表示の内容ではなく法律が定めた効果が生じる行為で、意思の通知と観念の通知があります
準法律行為は、意思表示によらないで法律上の効果を生じさせる行為です。意思の通知は、一定の意思を表示するものの、その意思の内容が生じる法律効果に向けられていない行為です。債権者があらかじめ弁済の受領を拒むと、債務者は弁済の準備をしたことを通知して受領の催告をすれば足りるようになります(493条ただし書)が、これは受領しないという意思の内容とは別に、法律が結び付けた効果です。観念の通知は、ある事実を知らせる行為です。時効完成前の債務の承認は、債務があると認識していることを知らせるもので、時効を更新させる意思を表示するものではありませんが、承認があったときは時効がその時から新たに進行を始めます(152条1項)。準法律行為にも、性質に反しない限り法律行為の規定が類推適用され、代理人によることもできます。承認については、相手方の権利についての処分につき行為能力の制限を受けていないこと又は権限があることを要しないと定められています(152条2項)。

単独行為は一方の意思だけで法律関係を変えるので、条件・期限の付け方や効力の生じる時期が条文で決められています
単独行為は相手方の同意なしに法律関係を変えるため、相手方を不安定な立場に置かないよう、相殺の意思表示には条件又は期限を付けることができません(506条1項後段)。「訴訟外でする相殺の意思表示には,条件も期限も付することができません」という肢(R2 問6 エ)は正しいです。他方で、遺言には停止条件を付けることができ、その条件が遺言者の死亡後に成就したときは、遺言は条件が成就した時から効力を生じます(985条2項)。「遺言に停止条件が付されていた場合において,遺言者の死亡後に条件が成就したときは,条件が成就した時から,遺言の効力が生ずる」という肢(R2 問23 ウ)は正しいです。相殺については、時効によって消滅した債権がその消滅以前に相殺に適するようになっていた場合には、その債権者は相殺をすることができます(508条)。「時効によって消滅した債権がその消滅以前に相殺に適するようになっていた場合には、その債権者は、相殺をすることができる」という肢(R8 問16 イ)は正しいです。どの単独行為に条件を付けられるかは、条件の語で扱います。
取消し・追認・追認拒絶は、取消権者や本人が一度すれば効果が確定し、後から覆すことはできません
取り消すことができる行為は、120条に規定する者が追認したときは、以後、取り消すことができません(122条)。詐欺によって取り消すことができる行為の取消権者には、瑕疵ある意思表示をした者のほか、その代理人も含まれます(120条2項)。そのため法定代理人が追認すれば、本人が追認を知らなかったとしても取消しはできなくなります。無権代理の相手方は、本人が追認をしない間は契約を取り消すことができます(115条本文)。相手方が取り消せば、本人に効果が帰属しないことが確定するので、その後に本人が追認することはできません。本人の追認は相手方に対してしなければ相手方に対抗できないので(113条2項)、「Bが、Aに対して、本件売買契約を追認した場合であっても、Cが当該追認の事実を知らないときは、Cは本件売買契約を取り消すことができる」という肢(R5 問6 エ)は正しいです。取消し・追認の方法や追認の要件は、それぞれの語で扱います。
民法 第519条債権者が債務者に対して債務を免除する意思を表示したときは、その債権は、消滅する。
民法 第506条第1項相殺は、当事者の一方から相手方に対する意思表示によってする。この場合において、その意思表示には、条件又は期限を付することができない。
民法 第493条(弁済の提供の方法)
弁済の提供は、債務の本旨に従って現実にしなければならない。ただし、債権者があらかじめその受領を拒み、又は債務の履行について債権者の行為を要するときは、弁済の準備をしたことを通知してその受領の催告をすれば足りる。
民法 第152条第1項時効は、権利の承認があったときは、その時から新たにその進行を始める。
試験ではこう問われる
- 訴訟外でする相殺の意思表示には、条件も期限も付けられない(506条1項後段。R2 問6 エ ○)
- 時効によって消滅した債権でも、消滅以前に相殺に適するようになっていれば相殺できる(508条。R8 問16 イ ○)
- 時効消滅前に相殺に適するようになっていたといえるには、受働債権の弁済期が現実に到来していたことを要する(508条。R3 問17 ア ×)
- 停止条件付きの遺言は、条件が遺言者の死亡後に成就したときは、条件成就の時から効力を生じる(985条2項。R2 問23 ウ ○)
- 無権代理人に対してした追認を相手方が知らないときは、相手方は契約を取り消すことができる(113条2項・115条。R5 問6 エ ○)
- 追認拒絶・債務の免除・相殺は単独行為として法律行為に当たり、弁済の受領拒絶(意思の通知)と時効完成前の債務の承認(観念の通知)は準法律行為に当たる
- 法定代理人が追認すれば、本人が知らなくても以後取り消すことはできない(122条・120条2項)

