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代理人の行為能力(102条)だいりにんのこういのうりょく

民法 第3章 代理 過去問で8肢

代理人の行為能力とは、代理人になるために行為能力が要るかという問題です。制限行為能力者も代理人になることができ、代理人としてした行為は行為能力の制限によっては取り消すことができませんが、制限行為能力者が他の制限行為能力者の法定代理人としてした行為は取り消すことができます(102条)。

17歳のアルバイトに店の仕入れを任せることはよくあります。代理人がした契約の効果は本人に生じ、代理人自身は代金を払う義務も負わないので、未成年者を保護するために取消しを認める必要がありません。あえて未成年者を選んだのは本人でもあります。そこで民法は、制限行為能力者も代理人になれるとし、代理人の行為能力の制限を理由に取り消すことはできないとしました。ただし、制限行為能力者が別の制限行為能力者の法定代理人になる場面では、守るべき本人のために例外を置いています。

商店の仕入れ先の倉庫の場面。高校生くらいの男子(札「代理人(17歳)」)が発注書を手に、問屋の男性(札「相手方」)と話している。少し離れて先生が店主役(札「本人」)で立っている。先生の吹き出し「契約の効果は私に生じるし、彼を選んだのも私だか

制限行為能力者も代理人になることができ、代理人としてした行為は行為能力の制限によっては取り消すことができません

102条本文は、制限行為能力者が代理人としてした行為は、行為能力の制限によっては取り消すことができないと定めています。代理行為の効果は本人に直接生じ(99条1項)、代理人自身は権利を失ったり義務を負ったりしないので、行為能力の制度で代理人を守る必要がないからです。また任意代理では、本人が自分で制限行為能力者を選んだ以上、その結果を引き受けるべきだといえます。この規定は、制限行為能力者が代理人になれることを前提にしています。「未成年者が委任による代理人としてした法律行為については、行為能力の制限を理由として取り消すことができる」という肢(R4 問4 イ)は誤りです。

制限行為能力者が他の制限行為能力者の法定代理人としてした行為は、取り消すことができます

102条ただし書は、制限行為能力者が他の制限行為能力者の法定代理人としてした行為については、本文の規律が及ばないと定めています。法定代理では本人が代理人を選んだわけではなく、守られるべき本人も制限行為能力者なので、代理人の能力不足の不利益を本人に負わせるのは酷だからです。この場合の取消権者には、代理された他の制限行為能力者も含まれます(120条1項)。また、被保佐人が13条1項各号の行為を制限行為能力者の法定代理人としてするには保佐人の同意が要ります(13条1項10号)。このただし書は平成29年改正で新設されました。

家庭裁判所の窓口の場面。窓口の内側に先生が書記官役(札「家庭裁判所」)で座り、窓口の外に、杖をついた年配の男性(札「成年被後見人A(Bの法定代理人)」)と幼い子(札「未成年者B」)。カウンターの上の書類に「Bの法定代理人Aがした売買」とある

代理人が後見開始の審判を受ければ代理権は消滅しますが、保佐開始の審判を受けても消滅しません

111条1項2号は、代理人の死亡又は代理人が破産手続開始の決定若しくは後見開始の審判を受けたことを代理権の消滅事由とし、任意代理にも法定代理にも当てはまります。後見開始の審判は、代理人が事理を弁識する能力を欠く常況にあると判断されたことを意味するので、他人のために法律行為をする基礎が失われるからです。これに対し、保佐開始や補助開始の審判は消滅事由に挙げられていません。「代理権は、代理人が後見開始の審判を受けたことによって消滅する」という肢(R7 問6 オ)は正しく、「代理人が保佐開始の審判を受けた場合には、代理権は消滅する」という肢(R4 問5 ウ)は誤りです。成年後見人の法定代理権も同じで、後見人の欠格事由(847条)にも被保佐人は挙げられていないので、成年後見人が保佐開始の審判を受けても法定代理権は消滅しません。後見の任務に適しない事由があれば、家庭裁判所が解任することになります(846条)。

板書の図解。黒板に「代理人に起きたこと」の表があり、左の列に「死亡」「破産手続開始の決定」「後見開始の審判」「保佐開始の審判」、右の列に「消滅」「消滅」「消滅」「消滅しない」と書かれている。先生が教師役(札「先生」)で「保佐開始の審判」の行
  • 代理人の死亡代理権は消滅します(111条1項2号)
  • 代理人の破産手続開始の決定代理権は消滅します(111条1項2号)
  • 代理人の後見開始の審判代理権は消滅します(111条1項2号)
  • 代理人の保佐開始・補助開始の審判消滅事由ではなく、代理権は消滅しません
  • 本人の死亡代理権は消滅します(111条1項1号)。本人側の事由は代理権の範囲と消滅の語で扱います
民法 第102条

(代理人の行為能力)
制限行為能力者が代理人としてした行為は、行為能力の制限によっては取り消すことができない。ただし、制限行為能力者が他の制限行為能力者の法定代理人としてした行為については、この限りでない。

民法 第111条第1項

代理権は、次に掲げる事由によって消滅する。
一 本人の死亡
二 代理人の死亡又は代理人が破産手続開始の決定若しくは後見開始の審判を受けたこと。

民法 第120条第1項

行為能力の制限によって取り消すことができる行為は、制限行為能力者(他の制限行為能力者の法定代理人としてした行為にあっては、当該他の制限行為能力者を含む。)又はその代理人、承継人若しくは同意をすることができる者に限り、取り消すことができる。

試験ではこう問われる

  1. 未成年者が委任による代理人としてした行為は、行為能力の制限を理由に取り消すことができない(102条本文。R4 問4 イ ×)
  2. 代理権は、代理人が後見開始の審判を受けたことによって消滅する(111条1項2号。R7 問6 オ ○)
  3. 代理人が保佐開始の審判を受けても、代理権は消滅しない(111条1項2号。R4 問5 ウ ×)
  4. 制限行為能力者が他の制限行為能力者の法定代理人としてした行為は、取り消すことができる(102条ただし書)
  5. その取消権者には、代理された他の制限行為能力者も含まれる(120条1項)
  6. 成年後見人が保佐開始の審判を受けても、法定代理権は消滅しない(847条に被保佐人は挙げられていない)

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