後見・保佐・補助の開始の審判(7条〜19条・任意後見との関係)こうけんほさほじょのかいしのしんぱん
後見・保佐・補助の開始の審判とは、精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者・著しく不十分である者・不十分である者について、家庭裁判所が一定の者の請求により、それぞれ成年後見人・保佐人・補助人を付ける審判のことです(7条・11条・15条)。
認知症が進んだ親の預金を管理し、悪質な契約から守るには、家庭裁判所に申し立てて保護者を付けてもらう必要があります。民法は、判断能力の衰え方に応じて、後見・保佐・補助の三つの類型を用意しています。能力を欠く常況なら後見、著しく不十分なら保佐、不十分なら補助です。軽い類型ほど本人に残る能力が大きいので、本人の意思を尊重する仕組みが強くなります。本人が元気なうちに自分で保護者を選んでおく任意後見契約もあり、こちらが原則として優先します。

三つの審判は事理を弁識する能力の程度で分かれ、重い方の原因がある者に軽い方の審判をすることはできません
後見開始の審判は精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者(7条)、保佐開始の審判は著しく不十分である者(11条)、補助開始の審判は不十分である者(15条1項)が対象です。能力が著しく不十分な者は保佐の対象で、「家庭裁判所は、精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分である者について、後見開始の審判をすることができる」という肢(R8 問4 ウ)は誤りです。11条ただし書は7条の原因がある者を、15条1項ただし書は7条又は11条本文の原因がある者を除いているので、能力を欠く常況にある者には保佐開始の審判をすることができず、保佐開始の原因がある者には補助開始の審判をすることができません。「家庭裁判所は,精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者について,保佐開始の審判をすることはできない」という肢(R3 問4 エ)は正しく、配偶者が申し立てた場合でも同じです。後見開始の審判を受けた者は成年被後見人となり成年後見人が付され(8条)、家庭裁判所は後見開始の審判をするときは職権で成年後見人を選任します(843条1項)。「家庭裁判所は、後見開始の審判をする場合であっても、本人の生活の状況等を考慮し、成年後見人を付さないことができる」という肢(R8 問4 イ)は誤りです。7条は対象者を成年者に限っていないので、未成年者でも能力を欠く常況にあれば後見開始の審判をすることができ、未成年後見人が選任されている未成年者についても成年後見人を付することができます。
- 後見開始(7条)事理を弁識する能力を欠く常況。本人の同意は不要。成年後見人を職権で選任(843条1項)
- 保佐開始(11条)能力が著しく不十分。7条の原因がある者は除く。本人の同意は不要。保佐人への代理権付与には本人の同意が要ります(876条の4第2項)
- 補助開始(15条)能力が不十分。7条・11条の原因がある者は除く。本人以外の請求なら本人の同意が要ります(15条2項)。同意権付与か代理権付与の審判とともにします(同条3項)
請求権者には本人・配偶者・四親等内の親族・検察官などが含まれ、本人以外の請求で本人の同意が要るのは補助開始の審判だけです
三つの審判は、いずれも本人、配偶者、四親等内の親族、後見人・保佐人・補助人とその監督人、検察官の請求によってすることができます(7条・11条・15条1項)。「家庭裁判所は、本人の請求によって後見開始の審判をすることができない」という肢(R8 問4 ア)は誤りで、「家庭裁判所は,本人の請求によっても後見開始の審判をすることができる」という肢(R3 問4 ア)は正しいです。能力が不十分な者も自ら補助開始の審判を請求でき、検察官や四親等の親族も請求できます。利害関係人というだけでは請求できません。本人以外の者の請求により補助開始の審判をするには本人の同意がなければなりません(15条2項)。補助は能力の衰えが最も軽く、本人の自己決定を特に尊重すべきだからです。「本人以外の者の請求により補助開始の審判をするには、本人の同意がなければならない」という肢(R6 問20 ア)は正しく、家庭裁判所が相当と認める場合でもこの同意は省けません。保佐開始と後見開始には同じ規定がないので、「保佐開始の審判をするには、本人以外の者が請求する場合であっても、本人の同意を得ることを要しない」という肢(R5 問4 エ)は正しいです。
補助開始の審判は同意権か代理権の付与とともにしなければならず、どちらも付与しない補助人を選任することはできません
補助開始の審判は、補助人の同意を要する旨の審判(17条1項)又は補助人に代理権を付与する旨の審判(876条の9第1項)とともにしなければなりません(15条3項)。同意権と代理権のどちらか、又は両方を付けるということで、「補助開始の審判は、被補助人が特定の法律行為をするには補助人の同意を得なければならない旨の審判又は被補助人のために特定の法律行為について補助人に代理権を付与する旨の審判とともにしなければならない」という肢(R6 問20 イ)は正しいです。同意権も代理権も付与されない補助人を選任することはできず、補助人が代理権を付与する審判なしに代理権を持つことはありません。補助人の同意を要する行為は13条1項の行為の一部に限られ(17条1項ただし書)、本人以外の者の請求でこの審判をするにも本人の同意が要ります(同条2項)。「家庭裁判所は、本人の同意がない場合には、本人以外の者の請求により、本人が特定の法律行為をするには補助人の同意を得なければならない旨の審判をすることができない」という肢(R8 問4 エ)は正しいです。代理権を付与しても被補助人の行為能力は奪われず、被補助人は自らその行為をすることができます(制限行為能力者の行為の効力の語で扱います)。

原因が消滅したときは請求により審判を取り消さなければならず、別の類型の審判をするときは前の審判を取り消します
後見・保佐・補助の原因が消滅したときは、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、検察官などの請求により、それぞれの審判を取り消さなければなりません(10条・14条1項・18条1項)。請求が要件なので職権では取り消せず、取消しは裁量ではなく義務です。「家庭裁判所は,成年被後見人について精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にあるとはいえなくなったときは,職権で,後見開始の審判を取り消さなければならない」という肢(R3 問4 ウ)は誤りです。請求権者は限定されているので、被保佐人と契約しようとする者が利害関係人として保佐開始の審判の取消しを請求することはできません。後見開始の審判をする場合に本人が被保佐人又は被補助人であるときは、家庭裁判所はその保佐開始又は補助開始の審判を取り消さなければなりません(19条1項。保佐・補助の開始のときも同じ。同条2項)。「家庭裁判所は、後見開始の審判をする場合において、本人が保佐開始の審判を受けた者であるときは、当該保佐開始の審判を取り消さなければならない」という肢(R8 問4 オ)は正しいです。行為能力の制限は審判を受けた後の行為に生じるので、成年後見人が、審判前の契約の当時に既に後見開始の事由があったことを証明して取り消すことはできません(意思無能力による無効を主張することは別です)。
任意後見契約が登記されているときは、後見開始の審判は本人の利益のため特に必要がある場合に限られ、任意後見監督人の選任時には法定後見の審判を取り消します
任意後見契約は、本人が判断能力の衰えに備えて、受任者に生活・療養看護・財産管理の事務を委託し代理権を付与する委任契約で、公正証書でしなければならず(任意後見契約に関する法律3条)、家庭裁判所が任意後見監督人を選任した時から効力を生じます。本人が自分で選んだ保護を優先させるため、任意後見契約が登記されている場合には、家庭裁判所は本人の利益のため特に必要があると認めるときに限り後見開始の審判をすることができます(同法10条1項)。反対に、任意後見監督人を選任する場合に本人が成年被後見人であるときは、家庭裁判所は後見開始の審判を取り消さなければなりません(同法4条2項)。任意後見人には同意権も取消権もないので、本人が任意後見人の同意を得ずに不動産を売っても、そのことを理由に取り消すことはできません。
民法 第7条(後見開始の審判)
精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人、補助監督人又は検察官の請求により、後見開始の審判をすることができる。
民法 第15条(補助開始の審判)
精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分である者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、後見人、後見監督人、保佐人、保佐監督人又は検察官の請求により、補助開始の審判をすることができる。ただし、第七条又は第十一条本文に規定する原因がある者については、この限りでない。
本人以外の者の請求により補助開始の審判をするには、本人の同意がなければならない。
補助開始の審判は、第十七条第一項の審判又は第八百七十六条の九第一項の審判とともにしなければならない。
民法 第19条第1項後見開始の審判をする場合において、本人が被保佐人又は被補助人であるときは、家庭裁判所は、その本人に係る保佐開始又は補助開始の審判を取り消さなければならない。
試験ではこう問われる
- 本人も後見開始の審判を請求できる(7条。R8 問4 ア × / R3 問4 ア ○)
- 能力が著しく不十分な者には後見開始の審判をすることができず、能力を欠く常況にある者には保佐開始の審判をすることができない(7条・11条ただし書。R8 問4 ウ × / R3 問4 エ ○)
- 後見開始の審判をするときは、成年後見人を付さないことはできない(8条・843条1項。R8 問4 イ ×)
- 本人以外の者の請求で本人の同意が要るのは補助開始の審判で、保佐開始の審判には要らない(15条2項。R6 問20 ア ○ / R5 問4 エ ○)
- 補助開始の審判は同意権か代理権を付与する審判とともにし、同意権の付与にも本人以外の請求なら本人の同意が要る(15条3項・17条2項。R6 問20 イ ○ / R8 問4 エ ○)
- 原因が消滅したときは請求により取り消さなければならず、職権では取り消せない(10条。R3 問4 ウ ×)
- 後見開始の審判をするときは、保佐開始の審判を取り消さなければならない(19条1項。R8 問4 オ ○)
- 被保佐人が保佐人から不動産を買うときは、保佐監督人の同意を証する情報を提供して所有権の移転の登記を申請できる(876条の3第2項・851条4号。R6 午後 問19 ウ ○)
- 成年後見人が居住の用に供しない建物を売却したときは、家庭裁判所の許可を証する情報は要らない(859条の3。R4 午後 問20 ウ ○)

