扶養(877条〜881条)ふよう
扶養とは、自力で生活できない親族の生活を他の親族が支えることで、直系血族と兄弟姉妹は当然に互いに扶養の義務を負い、3親等内の親族は特別の事情があるときに家庭裁判所の審判で扶養の義務を負わされます(877条)。
年老いた親や働けない兄弟の暮らしを、家族の誰がどこまで支えるのかを決めるのが扶養のルールです。親子・祖父母と孫のような直系血族と兄弟姉妹は、法律上当然に互いを支える義務を負います。おじ・おばや配偶者の家族のような少し遠い親族は、当然には義務を負わず、特別の事情があるときに家庭裁判所が義務を負わせます。誰が先に支え、いくら出すかは、まず当事者が話し合い、まとまらなければ家庭裁判所が決めます。

直系血族と兄弟姉妹は当然に扶養義務を負い、3親等内の親族は特別の事情があるときに家庭裁判所の審判で義務を負います
直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務があります(877条1項)。この義務は身分関係から生じ、親権の有無とは関係がありません。子を認知した父は親権者でなくても子の直系血族として扶養義務を負い、離婚の際に親権者と定められなかった親も同じです。家庭裁判所は、特別の事情があるときは、3親等内の親族間においても扶養の義務を負わせることができます(877条2項)。3親等内の親族には3親等内の姻族も含まれるので(725条)、甥と叔母(3親等の血族)、夫と妻の妹や弟(2親等の姻族)、夫婦の一方と他方の前婚の子(1親等の姻族)の間にも審判で扶養義務を負わせることができます。父母の兄弟姉妹の子(いとこ)は4親等の血族なので、「家庭裁判所は、特別の事情がある場合には、扶養を受けるべき者の父母の兄弟姉妹の子に扶養の義務を負わせることができる。」という肢(R6 問21 ウ)は誤りです。配偶者の兄弟姉妹の配偶者は姻族ではなく親族に当たらないので、扶養義務を負いません。
- 当然に扶養義務を負う(877条1項)直系血族(親子・祖父母と孫)、兄弟姉妹。親権の有無を問わない
- 審判で扶養義務を負う(877条2項)特別の事情があるときの3親等内の親族(甥と叔母、配偶者の兄弟姉妹、配偶者の連れ子など)
- 扶養義務を負わない配偶者の兄弟姉妹の配偶者のように親族でない者
扶養の順序・程度・方法は当事者の協議で決め、協議が調わなければ家庭裁判所が定め、事情が変われば変更できます
扶養をする義務のある者が数人ある場合の扶養をすべき者の順序は、当事者間に協議が調わないとき又は協議をすることができないときは家庭裁判所が定めます(878条)。扶養義務者の間だけで順序の協議が調っても扶養権利者はそれに縛られないので、「ある扶養権利者に対して扶養義務者が数人ある場合において、扶養義務者の間で扶養をすべき者の順序について協議が調ったときは、当該扶養権利者は、その協議により定められた順序に従って扶養の請求をしなければならない。」という肢(R6 問21 エ)は誤りです。民法は親等の近い者を先順位とする順序を定めていないので、子が孫より先順位になるわけではありません。扶養の程度又は方法も同じく協議により、調わなければ扶養権利者の需要、扶養義務者の資力その他一切の事情を考慮して家庭裁判所が定めます(879条)。協議又は審判の後に事情の変更を生じたときは、家庭裁判所はその変更又は取消しをすることができ(880条)、「扶養権利者と扶養義務者との間で扶養の程度又は方法について協議が調った後に、事情の変更があったときは、家庭裁判所は、その協議の変更又は取消しをすることができる。」という肢(R6 問21 イ)は正しいです。880条は家庭裁判所が変更できることを定めたもので、当事者の協議による変更を否定するものではないので、審判の後も当事者の協議で変更や取消しができます。
扶養を受ける権利は処分できず、過去の扶養料の分担も家庭裁判所が審判で定めます
扶養を受ける権利は、処分することができません(881条)。扶養請求権は権利者本人の生活を支えるための権利なので、他人に移せば制度の目的が失われるからです。扶養を受ける権利は譲渡も放棄もできないので、「扶養権利者は、扶養義務者との間で扶養料の具体的な額について協議をする前に扶養を受ける権利を放棄することができる。」という肢(R6 問21 オ)は誤りです。扶養請求権は一身専属権で、相続の対象にもなりません(896条ただし書)。判例は、扶養義務者の一人だけが扶養権利者を扶養してきた場合に過去の扶養料を他の扶養義務者に求償するときも、各自の分担額は、協議が調わない限り、家庭裁判所が各自の資力その他一切の事情を考慮して審判で決定すべきで、通常裁判所が判決手続で判定すべきではないとしています(最判昭和42年2月17日)。「扶養権利者を扶養した扶養義務者が他の扶養義務者に対して求償する場合における各自の分担額について、扶養義務者の間で協議が調わなかったときは、家庭裁判所が当該分担額を審判で定める。」という肢(R6 問21 ア)は正しいです。

民法 第877条第1項直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある。
民法 第877条第2項家庭裁判所は、特別の事情があるときは、前項に規定する場合のほか、三親等内の親族間においても扶養の義務を負わせることができる。
民法 第881条(扶養請求権の処分の禁止)
扶養を受ける権利は、処分することができない。
試験ではこう問われる
- 直系血族と兄弟姉妹は扶養義務を負い、認知した父や離婚で親権者とならなかった親も負う(877条1項)
- 3親等内の親族には特別の事情があるとき審判で扶養義務を負わせられるが、いとこ(4親等)には負わせられない(877条2項。R6 問21 ウ ×)
- 扶養義務者の間だけで決めた順序に従って扶養権利者が請求しなければならないわけではない(878条。R6 問21 エ ×)
- 協議が調った後に事情の変更があれば、家庭裁判所はその協議を変更・取消しできる(880条。R6 問21 イ ○)
- 扶養を受ける権利は処分できず、協議の前に放棄することもできない(881条。R6 問21 オ ×)
- 過去の扶養料の求償の分担額は、協議が調わなければ家庭裁判所が審判で定める(最判昭和42年2月17日。R6 問21 ア ○)

