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費用償還の一覧(必要費・有益費の横断)ひようしょうかんのいちらん

民法 第13章 契約各論 過去問で1肢

費用償還の一覧とは、他人の物や事務について支出した必要費・有益費を誰がどの範囲で償還するかを、占有者・賃借人・使用借主・留置権者・第三取得者・受任者・事務管理者などの立場ごとに並べた整理です。必要費は原則として償還されますが、物を使い果実を得る立場の者は通常の必要費を負担し、有益費は価格の増加が現存する限り償還する側の選択で支出額か増価額を償還します。

他人の物にお金をかけたとき、誰がその費用を負担するかは、民法のあちこちに散らばって定められています。物を保つために必ず要る必要費は、原則として持ち主が負担し、使ったり果実を得たりしている側は、日常的な通常の必要費だけ自分で負担します。物の価値を高める有益費は、価値が残っている限りで、持ち主が支出額か増加額の安い方を選んで返します。立場ごとの違いを並べて覚えます。

板書の図解。黒板に大きな表があり、行に「占有者」「賃借人」「使用借主」「留置権者・質権者」「第三取得者」、列に「必要費」「有益費」。賃借人の必要費の欄に「直ちに償還」、使用借主の必要費の欄に「通常の必要費は自己負担」、有益費の列全体に「償還

必要費は原則として所有者側が償還しますが、物を使い果実を取る立場の者は通常の必要費を自分で負担します

占有者は、占有物を返還するときに必要費を回復者から償還させることができますが、果実を取得したときは、通常の必要費は占有者の負担になります(196条1項)。悪意の占有者も必要費の償還は請求できます。「A所有の甲建物をBが悪意で占有している間に、甲建物が台風で一部損壊したため、損壊部分の修繕費をBが支出した場合において、BがAに甲建物を返還するときは、Bは、Aに甲建物の修繕費用の償還をさせることができない」という肢(R8 問8 イ)は誤りです。占有者と回復者の関係の語に詳しく書きました。賃借人は、賃貸人の負担に属する必要費を支出したときは、直ちに償還を請求できます(608条1項)。「賃借人は,賃借物について賃貸人の負担に属する必要費を支出したときは,賃貸人に対して,直ちにその償還を請求することができる」という肢(R3 問19 エ)は正しいです。使用貸借の借主は、借用物の通常の必要費を負担します(595条1項)。ただで借りて使っているからです。「借主が目的物の通常の必要費を支出したときは、貸主にその償還を請求することができる」という肢(R4 問18 イ)は誤りです。配偶者居住権者も居住建物の通常の必要費を負担します(1034条1項)。留置権者は留置物について必要費を支出したときは所有者に償還させることができ(299条1項)、質権者にも準用されます(350条)。ただし、不動産質権者は管理の費用を支払い、その他不動産に関する負担を負うので(357条)、「不動産質権者は,目的物について必要費を支出した場合には,所有者にその償還を請求することができる」という肢(R2 問12 ウ)は誤りです。抵当不動産の第三取得者は、必要費・有益費を196条の区別に従い、抵当不動産の代価から他の債権者より先に償還を受けられます(391条)。「抵当不動産の第三取得者が抵当不動産について必要費を支出した場合において、抵当権の実行により抵当不動産が競売されたときは、当該第三取得者は、競売による抵当不動産の売却代金から抵当権者に優先してその支出した額の償還を受けることができない」という肢(R6 問14 オ)は誤りです。196条の区別に従うので、果実を取得した第三取得者は通常の必要費の優先償還を受けられません。

有益費は価格の増加が現存する限り、償還する側が支出額か増価額かを選び、賃借人の有益費は賃貸借の終了の時に償還されます

占有者の有益費は、価格の増加が現存する場合に限り、回復者の選択に従い、支出した金額又は増価額を償還させます(196条2項本文)。賃貸人は賃貸借の終了の時に196条2項に従って償還し(608条2項)、使用貸借の貸主・配偶者居住権の目的建物の所有者も同じ扱いです(595条2項・1034条2項・583条2項)。選ぶのは償還する側で、支出した側ではありません。地上権には独自の償還規定がなく、地上権者は占有者として196条2項によります。留置権者の有益費も同じで(299条2項)、「【問】Aが、留置権に基づいて甲建物を留置している間に、甲建物について有益費を支出し、これによる価格の増加が現存するときは、Aは、Bに、有益費を償還させることができますか。はい。Aは、Bの選択に従い、その支出した金額又は増価額を償還させることができます。」という学生の解答(R5 問12 イ)は正しいです。価格の増加が現存することが要件なので、「借主が目的物の改良のための費用を支出したときは、それによる目的物の価格の増加が現存していなくても、貸主は、その支出した金額の償還をしなければならない」という肢(R4 問18 ウ)は誤りです。賃借人の有益費は必要費と違って終了の時に償還されます。有益費については、裁判所が償還する側の請求により相当の期限を許与できますが、占有者の場合は悪意の占有者に限られます(196条2項ただし書)。善意の占有者に対しては、期限の許与はされません。

賃貸アパートの一室の場面。男性(札「賃借人」)が左手に給湯器の修理の領収書(札「必要費」)、右手にシステムキッチンの設置の領収書(札「有益費」)を持ち、女性(札「賃貸人」)に見せている。先生が解説役(札「先生」)で横に立ち、吹き出し「必要費

他人のために事務を処理する者は費用の償還と代弁済を求められ、本人の意思に反する事務管理は現に利益を受けている限度に限られます

受任者は、必要と認められる費用を支出したときは、支出の日以後の利息とともに償還を請求でき(650条1項)、必要な債務を負担したときは代弁済と担保を求められます(同条2項)。償還は委任の終了を待ちません。「受任者は、委任事務を処理するのに必要と認められる費用を支出したときは、委任者に対し、その費用の償還を請求することができるが、支出の日以後におけるその利息の償還を請求することはできない」という肢(R5 問19 イ)は誤りです。受寄者にも650条1項・2項が準用されます(665条)。事務管理者は、本人のために有益な費用を支出したときは償還を請求でき(702条1項)、有益な債務を負担したときは650条2項が準用されます(702条2項)。「管理者は、本人のために有益な債務を負担したときは、本人に対して、自己に代わってその債務を弁済することを請求することができる」という肢(R4 問19 イ)は正しいです。ただし、本人の意思に反して事務管理をしたときは、本人が現に利益を受けている限度に限られます(同条3項)。詳しくは委任者の義務・寄託・事務管理の効果の語にあります。

費用の負担は、契約の費用は双方が半分ずつ、弁済の費用は債務者、受領遅滞で増えた費用は債権者、相続財産の費用は相続財産が負担します

売買契約に関する費用は当事者双方が等しい割合で負担し(558条)、有償契約に準用されます(559条)。「売買契約に関する費用は、買主がその全額を負担する」という肢(R8 問18 ウ)は誤りです。弁済の費用は、別段の意思表示がなければ債務者が負担しますが、債権者が住所の移転などで増加させた分は債権者が負担します(485条)。売主が買主の住所に目的物を持参する約定で、運送費用の負担を定めていなかったときは、運送費用は弁済の費用として売主が負担します(R7 問17 イ ○)。債権者が履行を受けることを拒み又は受けることができないことで履行の費用が増加したときは、その増加額は債権者の負担です(413条2項)。相続財産に関する費用は、相続人の過失によるものを除き、相続財産の中から支弁します(885条)。

  • 占有者(196条)必要費は償還。果実を取得すれば通常の必要費は自己負担。有益費は回復者の選択。期限の許与は悪意の占有者のみ
  • 賃借人(608条)必要費は直ちに。有益費は終了の時に、賃貸人の選択で
  • 使用借主(595条)通常の必要費は自己負担。それ以外は583条2項・196条
  • 配偶者居住権者(1034条)通常の必要費は自己負担。それ以外は583条2項・196条
  • 留置権者・質権者(299条・350条)必要費は償還。有益費は所有者の選択で、期限の許与あり
  • 抵当不動産の第三取得者(391条)196条の区別に従い代価から優先償還
  • 受任者・受寄者(650条・665条)費用と利息の償還、代弁済・担保
  • 事務管理者(702条)有益な費用の償還と代弁済。本人の意思に反すれば現に利益を受けている限度
民法 第196条第1項

占有者が占有物を返還する場合には、その物の保存のために支出した金額その他の必要費を回復者から償還させることができる。ただし、占有者が果実を取得したときは、通常の必要費は、占有者の負担に帰する。

民法 第196条第2項

占有者が占有物の改良のために支出した金額その他の有益費については、その価格の増加が現存する場合に限り、回復者の選択に従い、その支出した金額又は増価額を償還させることができる。ただし、悪意の占有者に対しては、裁判所は、回復者の請求により、その償還について相当の期限を許与することができる。

民法 第608条第1項

賃借人は、賃借物について賃貸人の負担に属する必要費を支出したときは、賃貸人に対し、直ちにその償還を請求することができる。

民法 第595条第1項

借主は、借用物の通常の必要費を負担する。

試験ではこう問われる

  1. 悪意の占有者も必要費の償還を請求でき、果実を取得したときは通常の必要費を負担する(196条1項。R8 問8 イ ×)
  2. 賃借人は必要費を直ちに償還請求でき、有益費は賃貸借の終了の時に償還される(608条。R3 問19 エ ○)
  3. 使用借主は通常の必要費を負担し、有益費は価格の増加が現存する限りで償還される(595条・583条2項。R4 問18 イ ×・ウ ×)
  4. 留置権者は必要費・有益費の償還を求められるが、不動産質権者は管理の費用を自ら負担する(299条・357条。R5 問12 イ ○、R2 問12 ウ ×)
  5. 抵当不動産の第三取得者は、196条の区別に従い、売却代金から抵当権者に優先して償還を受けられる(391条。R6 問14 オ ×)
  6. 受任者は費用と支出の日以後の利息の償還を請求でき、事務管理者は有益な債務の代弁済を求められる(650条・702条2項。R5 問19 イ ×、R4 問19 イ ○)
  7. 売買契約に関する費用は双方が等しい割合で負担し、弁済の費用は債務者が負担する(558条・485条。R8 問18 ウ ×、R7 問17 イ ○)

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