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第三取得者の保護(代価弁済・抵当権消滅請求・費用償還・買受人)だいさんしゅとくしゃのほご

民法 第8章 担保物権 過去問で6肢

第三取得者とは、抵当権が設定された不動産の所有権などを抵当権設定者から取得した者のことです。民法は、その者が抵当権の負担から抜け出す方法として代価弁済(378条)と抵当権消滅請求(379条以下)を用意し、競売では買受人になることや、支出した費用を優先して償還されることを認めています(390条・391条)。

抵当権の付いた土地を買った人は、売主が借金を返さなければ、いつ競売で土地を失うかわかりません。そこで民法は、買った人が抵当権の負担から抜け出す道を用意しています。銀行の求めに応じて買った代金を銀行に払えば抵当権が消える代価弁済と、買った人の方から金額を示して抵当権を消してほしいと申し出る抵当権消滅請求です。競売になっても、自分で買い受けることや、土地のために使った費用を真っ先に返してもらうことができます。

抵当権設定の銀行の窓口。窓口に札「抵当権者」の銀行員。先生が土地の買主役(札「第三取得者」)で、封筒「土地の代価」を差し出している。銀行員の吹き出し「代価を払ってくだされば抵当権を消します」。先生の吹き出し「抵当権者から請求されて、それに応

代価弁済は、所有権又は地上権を買い受けた第三者が抵当権者の請求に応じて代価を弁済したときに、その第三者のために抵当権を消滅させます

378条は、抵当不動産について所有権又は地上権を買い受けた第三者が、抵当権者の請求に応じてその抵当権者にその代価を弁済したときは、抵当権は、その第三者のために消滅すると定めています。代価弁済は抵当権者の請求から始まり、第三者が応じることで効力を生じる仕組みなので、第三者に応じる義務はありません。「抵当不動産について所有権を買い受けた第三者が、抵当権者の請求に応じてその抵当権者にその代価を弁済したときは、抵当権は、その第三者のために消滅する」という肢(R6 問14 ア)は正しいです。地上権を買い受けた第三者も、代価弁済をすることができます。

抵当権消滅請求ができるのは抵当不動産の所有権を取得した第三取得者で、主たる債務者・保証人とその承継人や、確定的に所有権を取得していない譲渡担保権者はできません

379条は、抵当不動産の第三取得者は抵当権消滅請求をすることができると定めています。平成15年の改正で、地上権や永小作権を取得した者は請求権者から外れ、所有権を取得した者に限られました。地上権の設定を受けた者は、抵当権消滅請求をすることができません。抵当権の設定の登記の後に抵当地を賃借して建物を建てた者も、所有権を取得した第三取得者ではないので、抵当権消滅請求をすることはできません(R2 問13 イ ×)。380条は、主たる債務者、保証人及びこれらの者の承継人は、抵当権消滅請求をすることができないと定めています。もともと債務の全額を払う義務がある者に、評価額で抵当権を消させるのはおかしいからです。連帯保証人も保証人に含まれ、主たる債務者の承継人も抵当権消滅請求をすることができません。「抵当権の被担保債務の保証人が抵当不動産の所有権を取得した場合には、当該保証人は、抵当権消滅請求をすることができない」という肢(R6 問14 イ)は正しいです。判例は、譲渡担保権者は、担保権を実行して確定的に所有権を取得しない限り、抵当権消滅請求ができないとしました(最判平成7年11月10日)。停止条件付第三取得者が条件の成否未定の間はできない(381条)のと同じ考え方です。「共有不動産全体に抵当権が設定されている場合には、当該共有不動産の共有持分のみを取得した第三取得者は、自己の共有持分について単独で抵当権消滅請求をすることができる」という肢(R7 問15 ウ)は誤りです。

板書の図解。黒板に「抵当権消滅請求ができる人・できない人」と題し、左の列に「所有権を取得した第三取得者 ○」、右の列に「主たる債務者 ×」「保証人・連帯保証人 ×」「これらの承継人 ×」「実行前の譲渡担保権者 ×」と並ぶ。先生が教師役(札「

抵当権消滅請求は競売による差押えの効力が生じる前にしなければならず、登記をした債権者が2か月以内に競売を申し立てなければ承諾したものとみなされます

382条は、第三取得者は、抵当権の実行としての競売による差押えの効力が発生する前に、抵当権消滅請求をしなければならないと定めています。手続は、第三取得者が登記をした各債権者に、取得の原因や代価を記した書面、登記事項証明書、2か月以内に競売の申立てがなければ代価又は指定した金額を弁済し又は供託する旨の書面を送ります(383条)。書面の送付を受けた債権者が競売の申立てをするときは、その期間内に、債務者及び抵当不動産の譲渡人にその旨を通知しなければなりません(385条)。「抵当不動産の第三取得者から抵当権消滅請求の書面の送付を受けた抵当権者が抵当権を実行して競売の申立てをするときは、法定の期間内に、債務者及び当該抵当不動産の譲渡人にその旨を通知しなければならない」という肢(R6 問14 ウ)は正しいです。債権者が書面の送付を受けた後2か月以内に抵当権を実行して競売の申立てをしないときは、提供された金額を承諾したものとみなされ(384条1号)、登記をしたすべての債権者が承諾し、第三取得者がその金額を払い渡し又は供託したときに抵当権は消滅します(386条)。抵当権の登記がある不動産の買主が抵当権消滅請求の手続が終わるまで代金の支払を拒める点(577条)は、売買の付随規定の語で扱います。

  • 代価弁済(378条)所有権又は地上権を買い受けた第三者が、抵当権者の請求に応じて代価を弁済したときに抵当権が消滅します。応じる義務はありません
  • 抵当権消滅請求の主体(379条〜381条)抵当不動産の所有権を取得した第三取得者です。主たる債務者・保証人・承継人、停止条件の成否未定の間の者、実行前の譲渡担保権者はできません
  • 抵当権消滅請求の時期(382条)競売による差押えの効力が発生する前です
  • みなし承諾(384条)書面の送付から2か月以内に競売の申立てがないときなどです
  • 買受け(390条)第三取得者も競売で買受人になれます
  • 費用の償還(391条)必要費・有益費を196条の区別に従い、他の債権者より先に償還されます

第三取得者は競売で買受人になることができ、支出した必要費・有益費は196条の区別に従って最先順位の抵当権者にも優先して償還されます

390条は、抵当不動産の第三取得者は、その競売において買受人となることができると定めているので、「抵当不動産の第三取得者は、抵当権の実行としての競売において、買受人となることができない」という肢(R6 問14 エ)は誤りです。391条は、第三取得者が抵当不動産について必要費又は有益費を支出したときは、196条の区別に従い、抵当不動産の代価から、他の債権者より先にその償還を受けることができると定めています。支出で保たれ又は増えた価値は競売代金として債権者に渡るので、最優先で返すのが公平だからです。「他の債権者」には抵当権者も含まれるので、「抵当不動産の第三取得者が抵当不動産について必要費を支出した場合において、抵当権の実行により抵当不動産が競売されたときは、当該第三取得者は、競売による抵当不動産の売却代金から抵当権者に優先してその支出した額の償還を受けることができない」という肢(R6 問14 オ)は誤りです。ただし、196条1項ただし書により、果実を取得したときは通常の必要費は第三取得者自身の負担になるので、その分の優先償還は受けられません。

競売の配当の場面。机の上に札「売却代金」の札束。先生が第三取得者役(札「第三取得者」)で領収書「屋根の修理(必要費)」を掲げ、その後ろに男性が二人(札「第一順位の抵当権者」「第二順位の抵当権者」)並んでいる。先生の吹き出し「土地の価値を保つ
民法 第378条

(代価弁済)
抵当不動産について所有権又は地上権を買い受けた第三者が、抵当権者の請求に応じてその抵当権者にその代価を弁済したときは、抵当権は、その第三者のために消滅する。

民法 第380条

主たる債務者、保証人及びこれらの者の承継人は、抵当権消滅請求をすることができない。

民法 第382条

(抵当権消滅請求の時期)
抵当不動産の第三取得者は、抵当権の実行としての競売による差押えの効力が発生する前に、抵当権消滅請求をしなければならない。

民法 第391条

(抵当不動産の第三取得者による費用の償還請求)
抵当不動産の第三取得者は、抵当不動産について必要費又は有益費を支出したときは、第百九十六条の区別に従い、抵当不動産の代価から、他の債権者より先にその償還を受けることができる。

試験ではこう問われる

  1. 所有権を買い受けた第三者が抵当権者の請求に応じて代価を弁済したときは、抵当権はその第三者のために消滅する(378条。R6 問14 ア ○)
  2. 被担保債務の保証人が抵当不動産の所有権を取得しても、抵当権消滅請求はできない(380条。R6 問14 イ ○)
  3. 共有不動産全体に設定された抵当権について、共有持分のみを取得した第三取得者は単独で抵当権消滅請求をすることができない(R7 問15 ウ ×)
  4. 抵当権の登記後に抵当地を賃借して建物を建てた者は、抵当権消滅請求をすることができない(379条。R2 問13 イ ×)
  5. 消滅請求の書面を受けた抵当権者が競売を申し立てるときは、期間内に債務者と抵当不動産の譲渡人に通知しなければならない(385条。R6 問14 ウ ○)
  6. 第三取得者も、抵当権の実行としての競売で買受人になれる(390条。R6 問14 エ ×)
  7. 第三取得者が支出した必要費は、売却代金から抵当権者に優先して償還を受けられる(391条。R6 問14 オ ×)

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