和解(695条・696条)わかい
和解とは、当事者が互いに譲歩をしてその間に存する争いをやめることを約する契約です(695条)。争いの目的とした事項は、後に真実が判明しても和解の確定効により覆りません(696条)。
代金の額でもめたとき、お互いに少しずつ譲って「これで終わりにしよう」と約束するのが和解です。後から「実は相手の言い分が正しかった」とわかっても、争っていた点は蒸し返せません。蒸し返せるなら、争いを終わらせた意味がなくなるからです。ただし、争っていなかった前提が間違っていた場合や、予想もしなかった後遺症が出た場合までは、和解で片づけたとはいえません。

和解は互いに譲歩して争いをやめる契約で、譲歩の方法として係争物と関係のない物を給付することもできます
和解は、当事者が互いに譲歩をしてその間に存する争いをやめることを約することによって、その効力を生じます(695条)。争いの存在、互譲、争いをやめる合意が要件で、譲歩の内容に制限はありません。判例は、譲歩の方法として係争物に関係のない物の給付を約することも和解の本質に反しないとしています(最判昭和27年2月8日)。和解の内容が公序良俗に反すれば無効です。賭博に負けた者が振り出させた小切手の金額についての和解も、実質は賭博による金銭給付を得させるものなので無効です(最判昭和46年4月9日)。
争いの目的とした事項は後で真実が判明しても覆りませんが、争いの前提とした事項の錯誤は取消しの理由になります
当事者の一方が和解によって争いの目的である権利を有すると認められた場合に、後に権利を有していなかった確証が得られても、その権利は和解によってその者に移転し又は消滅したものとされます(696条)。これを和解の確定効といい、争いの目的とした事項について錯誤を主張することはできません。他方、争いの目的ではなく、その前提や基礎とされていた事項に錯誤があったときは、錯誤の規定が適用されます(大判大正6年9月18日)。債権の支払額だけを争い、債権の売買が有効かどうかは争っていなかった事例で、後に売買が無効と判明したときは、和解の錯誤を主張できます。現行法では錯誤の効果は無効ではなく取消しなので(95条1項)、和解の錯誤による取消しを主張できます。代物弁済として引き渡す苺ジャムの品質を前提に和解した事例で、判例は、目的物が粗悪品だったときは和解の要素に錯誤があるとし、売主の担保責任の規定の適用は排除されるとしました(最判昭和33年6月14日)。この錯誤の主張は和解の確定効に反しません。同じ判例は裁判上の和解にも錯誤の主張を認めています。

全損害を把握し難い状況での早急な少額の示談は、予想できなかった後遺症の損害まで放棄したものではありません
示談で一定額を受け取りそれ以上の請求を放棄すれば、原則として後から損害が増えても請求できません。しかし判例は、全損害を正確に把握し難い状況のもとで、早急に少額の賠償金で満足する旨の示談がされた場合は、被害者が放棄したのは示談当時予想していた損害についての請求権だけで、その当時予想できなかった後遺症の損害の賠償は請求できるとしました(最判昭和43年3月15日)。また、賃料を1か月分でも怠れば賃貸借は当然解除となる旨の和解条項があっても、判例は、信頼関係が破壊されたとはいえない特別の事情がある場合まで当然解除の効力を認める合意ではないとしています(最判昭和51年12月17日)。賃借人は、信頼関係が破壊されていないことを主張して解除の効力を争えます。信頼関係破壊の法理そのものは無断譲渡・転貸の語に書きました。
- 争いの目的とした事項確定効で覆りません(696条)
- 争いの前提・基礎とした事項の錯誤錯誤の規定が適用されます。現行法では取消し
- 代物弁済の目的物の品質の錯誤錯誤を主張でき、担保責任の規定は排除されます
- 裁判上の和解錯誤を主張できます
- 予想できなかった後遺症早急な少額の示談では放棄していません
- 当然解除の和解条項信頼関係を破壊しない特別の事情があれば当然解除になりません
民法 第695条(和解)
和解は、当事者が互いに譲歩をしてその間に存する争いをやめることを約することによって、その効力を生ずる。
民法 第696条(和解の効力)
当事者の一方が和解によって争いの目的である権利を有するものと認められ、又は相手方がこれを有しないものと認められた場合において、その当事者の一方が従来その権利を有していなかった旨の確証又は相手方がこれを有していた旨の確証が得られたときは、その権利は、和解によってその当事者の一方に移転し、又は消滅したものとする。
試験ではこう問われる
- 和解は互いに譲歩して争いをやめる契約で、係争物と関係のない物を給付する和解もできる(695条、最判昭和27年2月8日)
- 争いの目的とした事項は、後で真実が判明しても和解の確定効で覆らない(696条)
- 争いの前提・基礎とした事項に錯誤があれば錯誤を主張でき、裁判上の和解でも同じである(95条、最判昭和33年6月14日)
- 早急な少額の示談をしても、予想できなかった後遺症の損害は請求できる(最判昭和43年3月15日)
- 必要書類を交付する旨だけの和解調書では、登記権利者は単独で登記を申請できない(不動産登記法63条1項。R8 午後 問15 ウ ○)
- 和解調書に新旧の住所が併記されていても、登記義務者の住所の変更の登記は省略できない(R6 午後 問18 エ ×)

