設立時取締役(選任・解任・設立手続の調査)せつりつじとりしまりやく
設立時取締役とは、株式会社の設立に際して取締役となる者です(会社法38条1項)。発起設立では出資の履行が完了した後に発起人の議決権の過半数で選任し、募集設立では創立総会の決議で選任します。選任後遅滞なく設立の手続が法令・定款に違反していないかを調査し、取締役会設置会社では設立時代表取締役を選定します。
会社ができたその日から取締役がいないと困るので、会社が成立する前に、成立したら取締役になる人を決めておきます。この人が設立時取締役です。発起人が出資を終えた後に、発起人の多数決で選びます。発起人自身がなってもよいし、発起人でない人を選んでもかまいません。設立時取締役の大事な仕事は、発起人が進めてきた設立の手続が法律や定款のとおりかを点検することです。発起人の仲間内で見過ごされた不正や、現物出資の値段のつけ方のおかしさを、成立前に見つける役目です。

設立時取締役は発起人でなくてもなれますが、法人はなれません
会社法は設立時取締役を発起人の中から選ばなければならないとはしていません。設立時取締役になれないのは、成立後の会社の取締役になることができない者です(39条4項)。法人は取締役になれないので(331条1項1号)、設立時取締役にもなれません。これに対して、発起人の資格には制限がないので法人も発起人になれます。「法人は、設立時取締役となることができない」という肢(R7 問27 イ)は正しいです。
発起設立では、出資の履行が完了した後に発起人の議決権の過半数で選任し、定款で定めた者は履行の完了時に選任されたものとみなされます
発起設立では、発起人は、出資の履行が完了した後、遅滞なく、設立時取締役を選任しなければなりません(38条1項)。選任は発起人の議決権の過半数で決定し、発起人は出資の履行をした設立時発行株式1株につき1個の議決権を持ちます(40条1項・2項)。出資の履行の前には、誰がどれだけの議決権を持つかが定まらないからです。「発起人は、出資の履行が完了する前に、設立時取締役を選任しなければならない」という肢(R7 問27 オ)は誤りで、「設立時取締役を定款で定めていないときは、その選任は、発起人の議決権の過半数をもって決定する」という肢(R4 問27 ア)は正しいです。定款で設立時取締役として定められた者は、出資の履行が完了した時に設立時取締役に選任されたものとみなされます(38条4項)。定款の認証を受けた時ではありません。募集設立では、設立時取締役の選任は創立総会の決議によります(88条1項)。

発起人は、定款で定めてみなし選任された者も含めて、会社の成立の時までは設立時取締役を解任できます
発起人は、株式会社の成立の時までの間、その選任した設立時役員等を解任することができます。38条4項によって選任されたものとみなされた者も含みます(42条)。解任は発起人の議決権の過半数で決定します(43条1項。設立時監査役などは3分の2以上)。
設立時取締役は、選任後遅滞なく設立の手続を調査し、違反があれば発起人に通知し、設立時代表取締役を選定します
設立時取締役(監査役設置会社では設立時監査役も)は、その選任後遅滞なく、検査役の調査を経ない現物出資財産等の価額の相当性、専門家の証明の相当性、出資の履行が完了していること、そのほか設立の手続が法令又は定款に違反していないことを調査しなければなりません(46条1項)。調査の結果、法令・定款に違反し、又は不当な事項があると認めるときは、発起人にその旨を通知します(同条2項)。募集設立では、調査の結果を創立総会に報告します(93条)。違反がないと認めた場合も報告は要るので、「設立時取締役は、その選任後遅滞なく自ら行った調査により株式会社の設立の手続が法令又は定款に違反していないものと認めた場合であっても、その調査結果を創立総会に報告しなければならない」という肢(R8 問27 エ)は正しいです。検査役の調査が必要な現物出資財産は、設立時取締役の価額相当性の調査の対象ではありません。設立しようとする会社が取締役会設置会社(指名委員会等設置会社を除く)であるときは、設立時取締役が、その中から設立時代表取締役を選定しなければならず、選定と解職は設立時取締役の過半数で決定します(47条1項・3項)。発起人が選定するのではなく、募集設立でも同じです。「株式会社の設立が募集設立であり、設立しようとする会社が指名委員会等設置会社でない取締役会設置会社である場合には、発起人の議決権の過半数をもって設立時代表取締役を選定したことを証する書面を添付して、設立の登記を申請することはできない」という肢(R7 午後 問29 ウ)は正しいです。
- 資格発起人でなくてもよい。法人は不可(39条4項・331条1項1号)
- 発起設立の選任出資の履行の完了後、発起人の議決権の過半数(38条1項・40条1項)。定款で定めた者は履行完了時にみなし選任(38条4項)
- 募集設立の選任創立総会の決議(88条1項)
- 解任成立の時まで発起人の議決権の過半数で解任できる。みなし選任の者も含む(42条・43条1項)
- 職務設立手続の調査と発起人への通知(46条)、設立時代表取締役の選定(47条)
会社法 第38条第1項発起人は、出資の履行が完了した後、遅滞なく、設立時取締役(株式会社の設立に際して取締役となる者をいう。以下同じ。)を選任しなければならない。
会社法 第38条第4項定款で設立時取締役(設立しようとする株式会社が監査等委員会設置会社である場合にあっては、設立時監査等委員である設立時取締役又はそれ以外の設立時取締役。以下この項において同じ。)、設立時会計参与、設立時監査役又は設立時会計監査人として定められた者は、出資の履行が完了した時に、それぞれ設立時取締役、設立時会計参与、設立時監査役又は設立時会計監査人に選任されたものとみなす。
会社法 第42条(設立時役員等の解任)
発起人は、株式会社の成立の時までの間、その選任した設立時役員等(第三十八条第四項の規定により設立時役員等に選任されたものとみなされたものを含む。)を解任することができる。
試験ではこう問われる
- 設立時取締役は発起人でなくてもなれるが、法人はなれない(39条4項・331条1項1号。R7 問27 イ ○)
- 発起設立では出資の履行が完了した後に遅滞なく選任するのであって、完了前に選任しなければならないのではない(38条1項。R7 問27 オ ×)
- 定款で定めていないときは発起人の議決権の過半数で選任し、設立の登記に発起人全員の同意を証する書面を添付する必要はない(40条1項。R4 問27 ア ○、R8 午後 問29 エ ×)
- 定款で定めた者は出資の履行が完了した時に選任されたものとみなされ、成立の時までは発起人の議決権の過半数で解任できる(38条4項・42条・43条1項)
- 募集設立では創立総会の決議で選任し、設立時取締役は違反がないと認めた場合も調査の結果を創立総会に報告する(88条1項・93条。R8 問27 エ ○)
- 取締役会設置会社の設立時代表取締役は設立時取締役の過半数で選定し、募集設立でも発起人の議決権の過半数では選定できない(47条1項・3項。R7 午後 問29 ウ ○)
- 募集設立で調査報告の添付を要するときは、創立総会を欠席した設立時取締役の分も含めた調査報告を添付する(93条1項。R6 午後 問29 ウ ×)

