会社の公告(公告方法・電子公告)かいしゃのこうこく
会社の公告とは、会社が株主や債権者をはじめ不特定多数の人に向けて一定の事項を知らせる手続で、公告方法は官報に掲載する方法・時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙に掲載する方法・電子公告の3つの中から定款で定め、定めがなければ官報になります(会社法939条)。
会社が合併したり資本金を減らしたりすると、お金を貸している債権者に影響が出ます。株主に募集株式のことを知らせたり、決算の内容を世の中に示したりする場面もあります。相手が誰か分からない人も含めて広く知らせる手段が公告です。どこに載せるかは会社が定款で決めますが、何も決めていない会社もあるので、そのときは官報に載せると法律が決めています。公告の仕方によって、債権者一人ひとりへの催告を省けるかどうかや、貸借対照表を全文載せるのか要旨でよいのかが変わります。

公告方法は官報・日刊新聞紙・電子公告の3つから定款で定め、定めがなければ官報になります
会社は、公告方法として、官報に掲載する方法、時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙に掲載する方法、電子公告のいずれかを定款で定めることができます(939条1項)。定款で定めることが「できる」のであって義務ではなく、定めがない会社の公告方法は官報に掲載する方法になります(同条4項)。定款の絶対的記載事項は27条が掲げる目的・商号・本店の所在地・設立に際して出資される財産の価額又はその最低額・発起人の氏名又は名称及び住所だけなので、公告方法は含まれません。もっとも、公証人の認証を受けた定款は、株式会社の成立前は30条2項が認める場合を除いて変更できないので、認証後に発起人が定款を変更して公告方法を定めることはできません。「公証人の認証を受けた定款に公告方法の定めがない場合には、発起人は、株式会社の成立の時までに、その全員の同意によって、公証人の認証を受けることなく、当該定款を変更して公告方法を定めることができる」という肢(R7 問27 エ)は誤りです。定款に定めがあればその定めが、定めがなければ官報を公告方法とする旨が登記されます(911条3項27号・29号)。939条1項の主語は「会社」なので、持分会社も株式会社と同じ3つの方法に限られます。
- 官報に掲載する方法定款に定めがない会社はこの方法(939条4項)。貸借対照表の公告は要旨で足りる(440条2項)
- 時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙に掲載する方法定款で定める。貸借対照表の公告は要旨で足りる(440条2項)
- 電子公告定款で定める。予備の公告方法として官報か日刊新聞紙を定められる(939条3項後段)。貸借対照表は全文を公告し、定時株主総会の終結の日後5年を経過する日まで継続する(440条1項・940条1項2号)

電子公告を定めるときは、事故などで電子公告ができない場合の予備の方法として官報か日刊新聞紙を定めることができます
電子公告とは、電磁的方法により不特定多数の者が公告すべき内容である情報の提供を受けることができる状態に置く措置をとる方法です(2条34号)。電子公告を公告方法とするときは、定款で電子公告を公告方法とする旨を定めれば足り、この場合には、事故その他やむを得ない事由によって電子公告による公告をすることができない場合の公告方法として、官報に掲載する方法又は日刊新聞紙に掲載する方法のいずれかを定めることができます(939条3項)。ウェブサイトのアドレスは定款で定める必要がなく、「会社は,公告方法を電子公告とする場合には,定款で,電子公告を公告方法とする旨の定めのほか,電子公告に用いるウェブサイトのアドレスも定めなければならない」という肢(R3 問34 ア)は誤りです。予備の公告方法を定められるのは電子公告を公告方法とする場合に限られるので、「定款で公告方法を時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙に掲載する方法とする旨を定める会社は,事故その他やむを得ない事由によってこの方法による公告をすることができない場合の公告方法として,官報に掲載する方法又は電子公告のいずれかを定めることができる」という肢(R3 問34 エ)は誤りです。電子公告は紙と違って一定期間載せ続ける必要があり、特定の日の一定期間前にしなければならない公告はその特定の日まで、異議を述べられる期間を定める公告はその期間を経過する日まで、それ以外の公告は開始後1か月を経過する日まで継続します(940条1項)。
官報のほか定款所定の日刊新聞紙か電子公告でも公告すれば、知れている債権者への各別の催告を省けます
吸収合併をする消滅株式会社は、債権者が異議を述べることができる場合には、合併をする旨などを官報に公告し、かつ、知れている債権者には各別に催告しなければなりません(789条2項)。ただし、官報のほか、939条1項の定款の定めに従って日刊新聞紙か電子公告でも公告するときは、各別の催告をすることを要しません(789条3項)。二重に公告すれば債権者が知る機会は確保されるからです。公告方法が官報だけの会社は、官報に二度載せても、定款に定めのない日刊新聞紙に載せても、定款の定めに従った公告ではないので催告は省けません。「公告方法として官報に掲載する方法を定款で定めている吸収合併消滅株式会社は、吸収合併について異議を述べることができる債権者がいる場合において、官報及び時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙にそれぞれ合併に関する公告を行ったときは、知れている債権者に対して各別に催告することを要しない」という肢(R5 問34 イ)は誤りです。同じ仕組みは、資本金の額の減少や他の組織再編の債権者異議手続にも置かれています。

貸借対照表の公告は、官報か日刊新聞紙の会社は要旨で足りますが、電子公告の会社は全文を公告します
株式会社は、定時株主総会の終結後遅滞なく、貸借対照表(大会社では貸借対照表と損益計算書)を公告しなければなりません(440条1項)。公告するのはこれらに限られ、「株式会社は、定時株主総会の終結後遅滞なく、計算書類及び事業報告を公告しなければならない」という肢(R4 問32 オ)は誤りです。公告方法が官報か日刊新聞紙である株式会社は、貸借対照表の要旨を公告すれば足ります(同条2項)。電子公告の会社は2項に挙げられていないので、全文を公告します。官報か日刊新聞紙を公告方法とする株式会社は、公告の代わりに、定時株主総会の終結後遅滞なく、貸借対照表の内容である情報を、定時株主総会の終結の日後5年を経過する日までの間、継続して電磁的方法により不特定多数の者が提供を受けることができる状態に置く措置をとることができ、その場合には公告を要しません(同条3項)。この義務は株式会社だけのものです。持分会社は計算書類を作成して10年間保存する義務はありますが(617条)、公告する義務はありません。「合同会社は、各事業年度に係る貸借対照表の作成後遅滞なく、当該貸借対照表を公告しなければならない」という肢(R6 問33 ア)は誤りです。
公開会社は募集事項の株主への通知を公告で代えられますが、株主割当てのときは通知が要ります
公開会社が取締役会の決議で募集事項を定めたときは、払込期日(期間を定めたときはその初日)の2週間前までに株主に募集事項を通知しなければならず、この通知は公告をもって代えることができます(201条3項・4項)。株主に差止めの機会を与えるための知らせなので、公告で足ります。ただし、株主に株式の割当てを受ける権利を与える場合には201条は適用されず(202条5項)、会社は各株主に募集事項や割り当てる株式の数などを通知しなければなりません(同条4項)。公告の内容が虚偽であったときの責任も問われます。取締役と執行役は、虚偽の公告をしたときは、注意を怠らなかったことを証明したときを除き、これによって第三者に生じた損害を賠償する責任を負います(429条2項1号ニ)。429条1項の責任と違って悪意・重過失の証明は要らず、無過失の証明責任が取締役側に転換されています。
会社法 第939条第1項会社は、公告方法として、次に掲げる方法のいずれかを定款で定めることができる。
一 官報に掲載する方法
二 時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙に掲載する方法
三 電子公告
会社法 第939条第3項会社又は外国会社が第一項第三号に掲げる方法を公告方法とする旨を定める場合には、電子公告を公告方法とする旨を定めれば足りる。この場合においては、事故その他やむを得ない事由によって電子公告による公告をすることができない場合の公告方法として、同項第一号又は第二号に掲げる方法のいずれかを定めることができる。
会社法 第939条第4項第一項又は第二項の規定による定めがない会社又は外国会社の公告方法は、第一項第一号の方法とする。
会社法 第440条第2項前項の規定にかかわらず、その公告方法が第九百三十九条第一項第一号又は第二号に掲げる方法である株式会社は、前項に規定する貸借対照表の要旨を公告することで足りる。
会社法 第789条第3項前項の規定にかかわらず、消滅株式会社等が同項の規定による公告を、官報のほか、第九百三十九条第一項の規定による定款の定めに従い、同項第二号又は第三号に掲げる公告方法によりするときは、前項の規定による各別の催告(吸収分割をする場合における不法行為によって生じた吸収分割株式会社の債務の債権者に対するものを除く。)は、することを要しない。
試験ではこう問われる
- 公告方法は定款の絶対的記載事項ではなく、定めがなければ官報になるが、公証人の認証後に定款を変更して公告方法を定めることはできない(939条1項・4項、30条2項。R7 問27 エ ×)
- 電子公告を公告方法とするときは、その旨を定款で定めれば足り、ウェブサイトのアドレスまで定款で定める必要はない(939条3項前段。R3 問34 ア ×)
- 予備の公告方法を定められるのは電子公告を公告方法とする場合だけで、日刊新聞紙を公告方法とする会社は定められない(939条3項後段。R3 問34 エ ×)
- 日刊新聞紙を公告方法とする場合に「A新聞又はB新聞」と定めることはできない(R3 問34 オ ○)
- 資本金の額の減少の債権者異議手続では、電子公告を公告方法とする会社も官報に公告しなければならない(449条2項。R3 問34 ウ ○)
- 官報のほか定款所定の日刊新聞紙か電子公告でも公告すれば各別の催告を省けるが、公告方法が官報の会社が日刊新聞紙にも載せても省けない(789条3項。R5 問34 イ ×)
- 株式会社が公告するのは貸借対照表(大会社は損益計算書も)で、持分会社には貸借対照表の公告義務がない(440条1項・617条。R4 問32 オ ×、R6 問33 ア ×)

