司法書士試験AIブートラボ 司法書士試験AIブートラボ

組織再編の債権者異議手続そしきさいへんのさいけんしゃいぎてつづき

会社法・商法 第12章 組織再編・事業譲渡 過去問で3肢

組織再編の債権者異議手続とは、合併・会社分割・株式交換・株式移転・組織変更によって債務者や責任財産が変わるおそれのある債権者に、会社が官報公告と各別の催告で1か月以上の期間を与えて異議を述べる機会を保障し、異議を述べた債権者には弁済・担保の提供・財産の信託をする手続です(会社法789条・799条・810条・779条)。異議を述べられる債権者の範囲は、組織再編の種類と当事会社の立場で決まっています。

会社にお金を貸している人にとって、その会社が合併したり事業を切り出したりすると、返してくれる相手や当てにしていた財産が変わります。株主は総会で賛否を言えますが、債権者には発言の場がありません。そこで会社法は、組織再編の前に債権者に知らせ、1か月以上の間に異議を述べる機会を与え、異議が出れば弁済や担保でその債権者を満足させることにしました。株式交換のように会社の財産が動かない組織再編では、債権者は困らないので手続は原則として要りません。誰が異議を述べられるかは、本当に不利になるかで決まっています。

銀行の応接室の場面。先生が銀行の融資担当役(札「債権者 銀行」)で机に座り、手に官報「吸収合併の公告 異議は1か月以内に(789条2項)」を持っている。向かいに男性(札「消滅会社 経理部長」)が封筒「各別の催告」を差し出している。壁の板書に

合併と組織変更ではすべての債権者が異議を述べられ、分割会社では分割後に分割会社へ請求できなくなる債権者と対価を株主に分配する場合の債権者に限られます

吸収合併では消滅会社の債権者(789条1項1号)と存続会社の債権者(799条1項1号)の全員が、新設合併では消滅会社の債権者の全員が(810条1項1号)、異議を述べることができます。債務者が交替し、他社の債務と責任財産が混ざるからです。組織変更をする株式会社の債権者も異議を述べることができます(779条1項)。株式会社が持分会社になれば資本金や分配規制による保護が失われるからです。会社分割では、承継会社・設立会社の債権者は全員が異議を述べられますが(799条1項2号)、分割会社の債権者は、分割後に分割会社に対して債務の履行を請求することができない債権者、すなわち債務が承継会社に移って分割会社から離れる債権者に限られます(789条1項2号・810条1項2号)。分割会社に残る債権者は、分割会社が対価を受け取るので責任財産が減らないと考えられるからです。ただし、分割会社が受け取った対価の株式を効力発生日に全部取得条項付種類株式の取得対価や剰余金の配当として株主に分配する場合(758条8号)は、分割会社の財産が株主に流出するので、分割会社の債権者全員が異議を述べられます。簡易分割の場合でも債権者異議手続は省略できません。株主総会の決議が要らなくなるだけで、債権者の立場は変わらないからです。事業譲渡には債権者異議手続がないので、

株式交換では完全子会社の債権者は原則として異議を述べられず、新株予約権付社債が承継される場合の社債権者は述べられ、完全親会社の債権者は対価が親会社の株式以外のときに述べられます

株式交換では、完全子会社の株主が入れ替わるだけで完全子会社の財産は動かないので、完全子会社の債権者は原則として異議を述べることができません。例外として、完全子会社の新株予約権付社債に付された新株予約権が株式交換契約新株予約権である場合、その新株予約権付社債についての社債権者は異議を述べることができます(789条1項3号)。社債に係る債務が完全親会社に承継され、債務者が交替するからです。この場合、対価として完全親会社の新株予約権が交付されるかどうかにかかわらず異議を述べられるので、完全親会社の側は、対価として自社の株式を交付する限り、完全子会社の株式という資産を得て株式を出すだけなので責任財産は減らず、債権者異議手続は要りません。対価が完全親会社の株式(これに準ずるものを含む)以外のもの、たとえば金銭のみである場合には、完全親会社の財産が流出するので、完全親会社の債権者は異議を述べることができます(799条1項3号)。株式移転でも、完全子会社の新株予約権付社債の社債権者だけが異議を述べられます(810条1項3号)。

異議を述べることができる債権者

  • 吸収合併: 消滅会社・存続会社の全債権者(789条1項1号・799条1項1号)。新設合併: 消滅会社の全債権者(810条1項1号)
  • 吸収分割・新設分割の分割会社: 分割後に分割会社へ請求できなくなる債権者(789条1項2号・810条1項2号)。対価を株主に分配するときは全債権者。簡易分割でも同じ
  • 吸収分割の承継会社: 全債権者(799条1項2号)
  • 株式交換・株式移転の完全子会社: 原則なし。新株予約権付社債が承継される場合の社債権者のみ(789条1項3号・810条1項3号)
  • 株式交換の完全親会社: 対価が親会社の株式以外(金銭のみなど)のとき(799条1項3号)
  • 組織変更をする株式会社: 全債権者(779条1項)
  • 事業譲渡: 債権者異議手続なし
教室の場面。先生が黒板の前に立ち、黒板に3列の表。見出しは「組織再編」「異議を述べられる債権者」「理由」。行は上から「合併|全当事会社の全債権者|債務者が交替し財産が混ざる」「会社分割・分割会社|分割後に分割会社へ請求できなくなる債権者だけ

官報公告と知れている債権者への各別の催告で1か月以上の期間を与え、異議期間は承認決議の前から始めてよく、日刊新聞紙や電子公告でも公告すれば各別の催告を省けます

債権者が異議を述べることができる場合、会社は、組織再編をする旨、相手方の商号・住所、計算書類に関する事項、債権者が一定の期間内に異議を述べることができる旨を官報に公告し、かつ、知れている債権者には各別にこれを催告しなければならず、この期間は1か月を下ることができません(789条2項・799条2項・810条2項)。条文が定めているのは期間の長さの下限だけで、始期については何も定めていないので、株主総会の承認決議の前に公告・催告をして期間を進めておくこともできます。公告を官報のほか、定款の定めに従い日刊新聞紙又は電子公告によってもするときは、各別の催告を省くことができます(789条3項・799条3項・810条3項)。「吸収合併において,吸収合併消滅株式会社が吸収合併の公告を,官報のほか,定款の定めに従い電子公告によりするときは,知れている債権者に対する各別の催告は,することを要しない」という記述とただし会社分割では、不法行為によって生じた分割会社の債務の債権者に対する各別の催告は省けません(789条3項かっこ書)。不法行為の被害者は官報を見て異議を述べることを期待できないからです。各別の催告を受けなかった分割会社の債権者は、分割契約で請求できないとされていても、分割会社・承継会社の双方に一定の限度で履行を請求できます(759条2項・3項)。

期間内に異議を述べなかった債権者は承認したものとみなされ、異議を述べた債権者には弁済・担保の提供・信託をしますが、害するおそれがなければ要りません

債権者が期間内に異議を述べなかったときは、その債権者は組織再編について承認をしたものとみなされます(789条4項・799条4項・810条4項)。承認したとみなされた債権者は、組織再編の無効の訴えを提起することができません(828条2項は「承認をしなかった債権者」に限っています)。期間内に異議を述べた債権者に対しては、会社は、弁済するか、相当の担保を提供するか、その債権者に弁済を受けさせることを目的として信託会社等に相当の財産を信託しなければなりません(789条5項・799条5項・810条5項)。ただし、組織再編をしてもその債権者を害するおそれがないときは、これらをする必要がありません(各項ただし書)。承継会社の資力が十分で債権の回収に支障がない場合などがこれに当たります。「会社は,原則として,一定の期間内に異議を述べた債権者に対し,弁済し,又は相当の担保を提供しなければならない」という規律は債権者を守るものであって、合併比率の不公正で不利益を受ける株主を守るものではないので、合併比率の不公正は合併無効の原因にならないとする見解の論拠としてはふさわしくないものに当たります。債権者異議手続が終了していないときは、効力発生日が来ても組織再編の効力は生じません(750条6項・759条10項・769条6項)。

会社法 第789条第1項

次の各号に掲げる場合には、当該各号に定める債権者は、消滅株式会社等に対し、吸収合併等について異議を述べることができる。
一 吸収合併をする場合 吸収合併消滅株式会社の債権者
二 吸収分割をする場合 吸収分割後吸収分割株式会社に対して債務の履行(当該債務の保証人として吸収分割承継会社と連帯して負担する保証債務の履行を含む。)を請求することができない吸収分割株式会社の債権者(第七百五十八条第八号又は第七百六十条第七号に掲げる事項についての定めがある場合にあっては、吸収分割株式会社の債権者)
三 株式交換契約新株予約権が新株予約権付社債に付された新株予約権である場合 当該新株予約権付社債についての社債権者

会社法 第789条第3項

前項の規定にかかわらず、消滅株式会社等が同項の規定による公告を、官報のほか、第九百三十九条第一項の規定による定款の定めに従い、同項第二号又は第三号に掲げる公告方法によりするときは、前項の規定による各別の催告(吸収分割をする場合における不法行為によって生じた吸収分割株式会社の債務の債権者に対するものを除く。)は、することを要しない。

会社法 第789条第5項

債権者が第二項第四号の期間内に異議を述べたときは、消滅株式会社等は、当該債権者に対し、弁済し、若しくは相当の担保を提供し、又は当該債権者に弁済を受けさせることを目的として信託会社等に相当の財産を信託しなければならない。ただし、当該吸収合併等をしても当該債権者を害するおそれがないときは、この限りでない。

試験ではこう問われる

  1. 合併は全当事会社の債権者が異議を述べられる(789条1項1号・799条1項1号・810条1項1号)。組織変更も同じ(779条1項)
  2. 分割会社の債権者で異議を述べられるのは、分割後に分割会社へ請求できなくなる債権者(789条1項2号)。対価を株主に分配するときは全債権者。簡易分割でも省略できない
  3. 株式交換の完全子会社の債権者は原則として異議を述べられない。新株予約権付社債が承継される場合の社債権者は述べられる(789条1項3号)
  4. 株式交換の完全親会社の債権者は、対価が親会社の株式以外(金銭のみなど)のときに異議を述べられる(799条1項3号)
  5. 異議期間は1か月以上。始期の定めはなく承認決議の前から始めてよい(789条2項)
  6. 官報のほか日刊新聞紙・電子公告でも公告すれば各別の催告を省ける(789条3項)。会社分割の不法行為債権者には省けない
  7. 異議を述べた債権者には弁済・担保の提供・信託をするが、害するおそれがなければ不要(789条5項ただし書)
  8. 債権者異議手続は債権者を守る規律で、合併比率の不公正から株主を守るものではない。事業譲渡には債権者異議手続がない

司法書士試験AIブートラボ

司法書士試験の対策を、
スマホひとつで。

過去問の肢別演習、記述式と雛形ドリル、先例と条文、用語集。司法書士試験の勉強に使う教材をひとつのアプリにまとめました。

関連する用語

組織再編・事業譲渡

合併(当事会社・合併対価・権利義務の承継)

合併とは、2以上の会社が契約によって1つの会社に合体することで、一方の会社が存続して他方の権利義務の全部を承継する...
会社法総論

会社の公告(公告方法・電子公告)

会社の公告とは、会社が株主や債権者をはじめ不特定多数の人に向けて一定の事項を知らせる手続で、公告方法は官報に掲載す...
組織再編・事業譲渡

会社分割(吸収分割・新設分割)

会社分割とは、株式会社又は合同会社がその事業に関して有する権利義務の全部又は一部を、分割後に他の会社に承継させる吸...
計算

資本金の額の減少(決議・債権者異議・無効の訴え)

資本金の額の減少とは、株式会社が株主総会の決議で、減少する資本金の額・準備金とする額・効力発生日を定めて資本金の額...
組織再編・事業譲渡

株式交換と株式移転

株式交換とは、株式会社がその発行済株式の全部を他の株式会社又は合同会社に取得させることで(会社法2条31号)、株式...
組織再編・事業譲渡

事業譲渡(株主総会決議・債務の承継・合併や分割との違い)

事業譲渡とは、会社が一定の事業目的のために組織化され有機的一体として機能する財産を、取引行為としての契約によって他...