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商号の選定と商号単一の原則(不正目的の商号使用の差止め)しょうごうのせんていとしょうごうたんいつのげんそく

会社法・商法 第14章 商法総則 過去問で12肢

商号の選定とは、商人が営業上自己を表すために用いる名称である商号を定めることで、個人商人は氏や氏名に限らずどのような名称でも商号にすることができます(商法11条1項。商号選定自由の原則)。商号単一の原則とは、1個の営業については1個の商号しか用いることができないという原則のことで、数種の独立した営業を行うときは営業ごとに別の商号を使うことができます。不正の目的で他の商人と誤認されるおそれのある名称・商号を使用する者に対しては、営業上の利益を侵害され又は侵害されるおそれがある商人は、侵害の停止・予防を請求することができます(商法12条)。

山田さんが開いたパン屋の看板に「山田ベーカリー」と書いても「森の小径」と書いても構いません。個人商人は自分の名前と関係ない屋号を自由に選べます。ただし、同じ店に二つの屋号を付けて使い分けることはできません。お客も取引先も、どの屋号がどの営業主を指すのか分からなくなるからです。一方、パン屋と喫茶店を別々に営むなら、それぞれに別の屋号を付けてよく、両方を登記することもできます。他人がわざと紛らわしい屋号を名乗って客を奪おうとするときは、自分の屋号を登記していなくても、やめさせることができます。

商店街の場面。先生がパン屋の店主役(札「個人商人 山田」)で店先に立ち、店の看板「森の小径」。隣の建物は同じ店主の喫茶店で看板「山田珈琲」、2つの店を結ぶ線に札「数種の独立した営業=別の商号でよい」。パン屋の軒先に外された2枚目の看板が立て

個人商人の商号は氏や名を含まなくてよく、自由に選定することができます

商人(会社を除く)は、その氏、氏名その他の名称をもって商号とすることができます(11条1項)。「その他の名称」とあるとおり、自己の氏名に限らず、営業の実体や自分の名前と無関係な名称でも商号にできます(商号選定自由の原則)。「商人の商号は,その商人の氏又は名を含まなければならない」という記述と、商号の登記は商人の任意です(同条2項)。選定の自由には限界があります。会社でない者は、その名称又は商号中に会社であると誤認されるおそれのある文字を用いることができず(会社法7条)、「会社でない者は,その商号中に「合名会社」という文字を用いることはできない」という肢は正しいです。会社は、その名称を商号とし、種類に従って株式会社・合名会社・合資会社・合同会社の文字を商号中に用いなければならず、他の種類の会社と誤認される文字は使えません(会社法6条)。

1個の営業には商号は1個に限られますが、数種の独立した営業や数個の営業所には別の商号を使うことができ、複数の商号を登記することもできます

同一の営業について複数の商号を用いることを認めると、営業主体の同一性が分からなくなり相手方や公衆が誤認するので、1個の営業については1個の商号しか用いることができないと解されています(商号単一の原則)。これに対し、商人が数種の独立した営業を行うときは、営業ごとに異なる商号を使うことができ、判例は、数種の独立した営業をし又は数個の営業所を有する場合には、その各営業又は営業所につき別異の商号を有することを妨げないとしています(大決大正13年6月13日)。「商人が数種の独立した営業を行うときは,その商人は,その各営業につき異なる商号を使用することができる」という記述と、したがって、登記できる商号の数を1個に限る規定も無く、商人は複数の商号を登記することができます。会社は1個の法人として1個の商号しか持てません。

法廷の場面。先生が裁判官役(札「裁判所」)で法壇に座る。原告席にエプロン姿の男性(札「商人 商号「森の小径」 登記なし」)、被告席に男性(札「不正の目的で「森の小道」を使用」)。法壇の前の板書「商法12条2項 侵害の停止・予防の請求 要件=

不正の目的で誤認されるおそれのある名称を使う者に対する侵害の停止・予防の請求は、商号を登記していなくてもできます

何人も、不正の目的をもって、他の商人であると誤認されるおそれのある名称又は商号を使用してはなりません(12条1項。違反には過料。13条)。これに違反する名称・商号の使用によって営業上の利益を侵害され、又は侵害されるおそれがある商人は、その者に対して侵害の停止又は予防を請求することができます(12条2項)。会社については会社法8条が同じ規律を置いています。この請求権は、商号を登記していることを要件としていません。商号の登記の有無にかかわらず、現に営業上の利益を害される商人を守る規定だからです。「商人は,自己と誤認されるおそれのある名称を不正の目的をもって使用する者がある場合において,その名称の使用によって営業上の利益が侵害されたときであっても,商号の登記をしていない限り,その侵害の停止を請求することができない」という記述は誤りで、かつては、他人が登記した商号は同じ市町村内で同一の営業のために登記できないという規律がありましたが、現在は削除されており、商業登記法上の制限は、他人の既に登記した商号と同一の商号を、営業所の所在場所も同一にして登記することができないというものにとどまります(商業登記法27条)。商号は財産的価値を持つので相続の対象になり、商号の登記について相続による変更の登記が予定されています(商業登記法30条3項)。「商号は,相続の目的となる」という肢は正しいです。

商号の選定の規律

  • 選定自由(11条1項): 氏・氏名その他の名称。氏や名を含まなくてよい。登記は任意(11条2項)
  • 制限: 会社でない者は会社と誤認される文字を使えない(会社法7条)。会社は種類の文字を用い、他の種類と誤認される文字は使えない(会社法6条)
  • 商号単一の原則: 1個の営業に1個の商号。数種の独立した営業・数個の営業所には別異の商号を使える(大決大13.6.13)。複数の商号の登記も可
  • 不正目的の商号使用(12条・会社法8条): 何人も禁止。営業上の利益を侵害され又はおそれがある商人は停止・予防を請求できる。商号の登記は要件でない
  • 登記の制限(商業登記法27条): 同一商号かつ同一の営業所所在場所の登記は不可。同一市町村内・同一営業という旧規律は無い
  • 相続: 商号は相続の目的となる(商業登記法30条3項)。譲渡は営業とともにする場合・営業を廃止する場合に限る(15条)
商法 第11条第1項

商人(会社及び外国会社を除く。以下この編において同じ。)は、その氏、氏名その他の名称をもってその商号とすることができる。

商法 第12条第2項

前項の規定に違反する名称又は商号の使用によって営業上の利益を侵害され、又は侵害されるおそれがある商人は、その営業上の利益を侵害する者又は侵害するおそれがある者に対し、その侵害の停止又は予防を請求することができる。

試験ではこう問われる

  1. 個人商人の商号は氏や名を含まなくてよい(11条1項)
  2. 1個の営業に商号は1個。数種の独立した営業・数個の営業所には別の商号を使え(大決大13.6.13)、複数の商号を登記できる
  3. 会社でない者は商号に「合名会社」など会社と誤認される文字を使えない(会社法7条)
  4. 不正目的の商号使用に対する停止・予防の請求(12条2項)は商号を登記していなくてもできる
  5. 同じ市町村内で同一の営業のために同じ商号を登記できないという規律は現行法に無い(商業登記法27条は同一商号・同一営業所所在場所に限る)
  6. 商号は相続の目的となる

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