相続放棄と相続登記そうぞくほうきとそうぞくとうき
家庭裁判所に申述して相続人でなかったことになる相続放棄があったとき、放棄者を除いた相続人で相続登記を申請する扱いです。放棄の証明に何が要るか、登記後に放棄があったときの登記の形が突かれます。
相続放棄は、相続人が家庭裁判所に申述して相続の効果を全面的に拒否する行為で、放棄した人は初めから相続人でなかったものとみなされます。相続登記では、放棄した人を除いた相続人が登記名義人になります。放棄の事実は戸籍には表れないので、家庭裁判所が交付する相続放棄申述受理証明書で示します。既に放棄者を含めて相続登記をしてしまった後に放棄があったときの登記の形も、令和5年の通達で整理されました。放棄と似た言葉の相続分の放棄や持分の放棄とは、効果も登記の形も違います。
民法 第939条第1項相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす。

放棄は家庭裁判所への申述で、熟慮期間は3か月です
相続放棄をするには、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に家庭裁判所に申述しなければなりません。申述が受理されると、その人は初めから相続人にならなかったものとみなされ、代襲相続も起こりません。放棄をした人は相続登記の申請人になれず、その人を登記名義人に含めた相続登記は実体に合わない登記になります。配偶者と妹という二つの資格を持つ相続人が配偶者としてだけ放棄したときは、その旨を明らかにした添付情報を提供して、妹として相続登記を申請できるとする肢は正しい肢です。
放棄の証明は受理証明書で、一覧図では代えられません
放棄者を除いた相続人で相続登記を申請するときは、登記原因証明情報の一部として相続放棄申述受理証明書を提供します。法定相続情報一覧図には放棄の事実が記載されないので、「被相続人Aの一覧図の写しを提供したときは、Bの相続放棄に係る相続放棄申述受理証明書の提供を省略することができる」という肢は誤りです。推定相続人の廃除は戸籍に記載されるので、廃除された人を除いた一覧図が作られ、その写しを提供すれば廃除の記載のある戸籍を別に出す必要はありません。放棄と廃除で扱いが分かれるのは、戸籍に載るかどうかの違いです。受理証明書は家庭裁判所が発行する書面で、放棄者本人だけでなく他の相続人も請求できます。
登記後の放棄は更正登記を単独で申請できます
法定相続分で相続登記をした後に相続人の一人が放棄した場面を考えます。令和5年3月28日民二第538号通達により、残る相続人が登記権利者として、放棄を原因とする所有権更正登記を単独で申請できます。登記原因は「年月日相続放棄」で、日付は放棄の申述が受理された日です。放棄者の登記識別情報や印鑑証明書は要らず、登録免許税は不動産1個につき1,000円です。従来認められてきた、放棄者を登記義務者とする持分移転登記も引き続きでき、「Bが作成した相続の放棄を証する書面を提供して、BからC及びDへの相続の放棄を登記原因とするBの持分の移転の登記を申請することができる」という肢は正しい肢です。
放棄で未成年者が唯一の相続人になれば法定代理人が申請します
所有権の登記名義人が死亡し、配偶者が放棄したために未成年の子が唯一の相続人になった場合、相続登記は法定代理人である配偶者が子に代わって申請します。放棄した配偶者は相続人ではなくなりますが、親権者としての地位は失わないからです。ただし、親権者であることを証する情報は戸籍の全部事項証明書などで示す必要があり、法定相続情報一覧図の写しでは代えられません。「BがCの法定代理人であることを証する情報としてAの法定相続情報一覧図の写しを提供して申請することはできない」という肢は正しい肢です。放棄した親が子のために申請する場面なので、利益相反にもならず、特別代理人の選任も要りません。
相続分の放棄や持分の放棄とは別の制度です
相続放棄は家庭裁判所への申述が要る要式行為ですが、相続分の放棄は他の共同相続人に対する意思表示で足り、放棄した人は相続人のままです。相続分の放棄があった場合の相続登記では、相続分がないことの証明書と印鑑証明書を提供します。共有持分の放棄は既に登記された持分を他の共有者に帰属させる物権的な行為で、放棄を原因とする持分移転登記を共同申請します。「放棄」という語が出ても、どの放棄かで申請人と添付情報が変わるので、肢の主語を確かめます。
民法 第938条第1項相続の放棄をしようとする者は、その旨を家庭裁判所に申述しなければならない。
試験ではこう問われる
- 相続放棄の事実を法定相続情報一覧図の写しで証明できるか(できない。受理証明書が要る)
- 資格を併有する相続人が一方の資格だけで放棄したときに相続登記ができるか(できる)
- 登記後の相続放棄による更正登記は誰が申請できるか(残る相続人が単独で)
- その更正登記の登記原因と日付(年月日相続放棄、申述受理日)
- 従来の相続放棄を原因とする持分移転登記は今もできるか(できる)
この用語が問われた肢
所有権の登記名義人であるAが死亡し,その配偶者Bが相続を放棄したため,未成年の子Cが唯一の相続人となった場合において,AからCへの相続による所有権の移転の登記をCの法定代理人としてBが申請するときに,BがCの法定代理人であることを証する情報としてAの法定相続情報一覧図の写しを提供して申請することはできない。
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