相続開始日と登記原因の日付そうぞくかいしびととうきげんいんのひづけ
相続は死亡によって開始し、相続を原因とする登記の日付は被相続人の死亡日です。遺産分割や特別縁故者不存在確定など、死亡日以外の日付になる場面との使い分けが肢で突かれます。
相続開始日は被相続人が死亡した日で、相続を原因とする登記ではこの日が登記原因の日付になります。遺産分割は相続開始の時にさかのぼって効力を生じるので、被相続人の名義から直接申請する限り、協議がいつ成立しても日付は死亡日のままです。一方、法定相続分の登記を経てから遺産分割で持分を動かすときや、相続人不存在の手続で共有持分が他の共有者に帰属するときは、原因も日付も別のものになります。肢は「どの原因で、いつの日付か」を組み合わせて作られます。
民法 第882条(相続開始の原因)
相続は、死亡によって開始する。

被相続人から直接の登記は原因「相続」で、日付は死亡日です
遺産分割協議で相続人の一人が不動産を取得しても、被相続人の名義から直接その人へ登記する限り、原因は「年月日相続」で日付は死亡日です。数次相続で二次相続の相続人が協議に加わっても同じで、「Bは、甲不動産について「平成25年4月1日相続」を登記原因とするAからBへの所有権の移転の登記を申請することはできない」という肢は誤りです。相続開始後に相続分を譲渡した相続人がいても、原因日付は死亡日で変わりません。
法定相続登記後の遺産分割は原因「遺産分割」、日付は協議成立日です
先に法定相続分どおりの相続登記がされていると、遺産分割で法定相続分を超えて取得した相続人への登記は、他の相続人からの持分移転か、令和5年3月28日民二第538号通達が認めた取得者単独の所有権更正登記になります。どちらも原因は「年月日遺産分割」で、日付は協議が成立した日、調停なら成立日、審判なら確定日です。「Bは、遺産分割を登記原因として単独でC及びDからBへの持分の移転の登記の申請をすることができる」という肢は、調停調書に登記手続の条項があるので正しい肢です。配偶者居住権を遺産分割で取得したときの設定登記も同じで、「被相続人の死亡の日を登記原因の日付としなければならない」という肢は誤りです。
特別縁故者不存在確定の日付は、申立期間の満了日の翌日です
相続人不存在の手続で、被相続人の共有持分が他の共有者に帰属する登記の原因は「特別縁故者不存在確定」で、日付は特別縁故者の分与の申立期間が満了した日の翌日です。申立てがあって却下されたときは、却下の審判が確定した日の翌日になります。「相続人の捜索の公告の日から6か月後の日を登記原因の日付として申請することができる」という肢も、「却下する審判が確定した日を登記原因の日付として」という肢も誤りです。
認知の裁判が協議の後に確定しても、協議はやり直しません
遺産分割協議の成立後に、被相続人の嫡出でない子について認知の裁判が確定した場合、その子は価額の支払を請求できるだけで、協議は無効になりません。協議に基づく相続登記に、認知された子の同意を証する情報は要りません。「当該協議に係る遺産分割協議書の作成の日付が当該認知の裁判の確定の日より前であっても、Fの同意を証する情報を提供しなければならない」という肢は誤りです。協議書の日付と認知の確定日の前後を比べさせるのが、この肢の作りです。
相続以外の承継は、死亡日ではなく承継の原因が生じた日です
権利能力のない社団の代表者が死亡し、新しい代表者が就任して代表者名義を移すときは、相続ではなく「委任の終了」を原因とし、日付は新代表者の就任日です。「Bが死亡した日となります」という肢は誤りです。死亡という事実が同じでも、その人の相続人に権利が移るのか、団体の代表者が交代するだけなのかで、原因と日付が変わります。
不動産登記法 第63条第2項相続又は法人の合併による権利の移転の登記は、登記権利者が単独で申請することができる。
試験ではこう問われる
- 遺産分割協議が死亡から数年後に成立したとき、被相続人から直接の相続登記の日付はいつか(死亡日)
- 法定相続登記後の遺産分割による持分移転の原因と日付は何か(遺産分割、協議成立日)
- 特別縁故者不存在確定の原因日付はいつか(申立期間満了日の翌日)
- 協議後に認知の裁判が確定した子の同意が登記に要るか(要らない)
- 権利能力のない社団の代表者交代の登記の日付はいつか(新代表者の就任日)
この用語が問われた肢
Aの相続人がB、C及びDであり、Aの遺産の分割がされず、かつ、甲不動産について相続を原因とする所有権の移転の登記がされないまま、Dが死亡し、その相続人がEのみである場合には、B、C及びEの遺産分割協議により、甲不動産をBが単独で取得したとしても、Bは、甲不動産について「平成 25 年 4 月 1 日相続」を登記原因とするAからBへの所有権の移転の登記を申請することはできない。
甲不動産について法定相続分による所有権の移転の登記がされた後に,Aの遺産分割に関する調停が成立し,その調停調書に,C及びDがBに対して甲不動産の持分各4 分の 1 につき遺産分割を原因とする持分移転登記手続をする旨の記載がある場合には,Bは,遺産分割を登記原因として単独でC及びDからBへの持分の移転の登記の申請をすることができる。
登記原因を遺産分割として配偶者居住権の設定の登記を申請する場合には,被相続人の死亡の日を登記原因の日付としなければならない。
解説と関連先例は肢別演習で読めます。
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