民法改正(所有者不明土地)と登記しょゆうしゃふめいとちととうき
所有者が分からない土地を減らすために令和3年に民法と不動産登記法が改正され、令和5年4月1日から順に施行されました。どの制度がいつから動き、登記にどう現れるかが問われます。
民法改正(所有者不明土地)は、令和3年4月に成立した民法と不動産登記法の改正の総称で、登記簿を見ても所有者に連絡がつかない土地を減らすことが狙いです。民法側では令和5年4月1日に、所有者不明土地管理制度、所在等不明共有者の持分の取得と譲渡、共有物の管理の見直し、相続財産の清算人への名称変更などが施行されました。不動産登記法側では令和6年4月1日に相続登記の申請義務化と相続人申告登記、法人識別事項と国内連絡先事項の登記事項化が施行されました。令和8年4月1日には住所等の変更の登記の申請義務化が施行されています。肢で突かれるのは、施行日と制度の組合せ、裁判所の関与の要否です。
民法 第264条第1項裁判所は、所有者を知ることができず、又はその所在を知ることができない土地(土地が数人の共有に属する場合にあっては、共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができない土地の共有持分)について、必要があると認めるときは、利害関係人の請求により、その請求に係る土地又は共有持分を対象として、所有者不明土地管理人(第四項に規定する所有者不明土地管理人をいう。以下同じ。)による管理を命ずる処分(以下「所有者不明土地管理命令」という。)をすることができる。

所有者不明土地管理人は裁判所の命令で選任されます
所有者を知ることができず、または所在を知ることができない土地について、裁判所は利害関係人の請求により所有者不明土地管理人による管理を命ずることができます。管理人は裁判所の許可を得てその土地を売却でき、登記は管理人が所有者に代わって申請します。建物についても所有者不明建物管理命令があり、管理が不適切な土地には管理不全土地管理命令が用意されています。従来は不在者財産管理人や相続財産管理人を選任して財産全部を管理させるしかなく、土地一筆だけを対象にできる点が新しい制度です。
所在等不明共有者の持分は裁判で取得や譲渡ができます
共有者が他の共有者を知ることができず、または所在を知ることができないときは、裁判所の裁判でその持分を請求した共有者に取得させることができます。請求した共有者が二人以上いれば、各自の持分の割合で按分した取得です。所在等不明共有者以外の共有者全員が特定の者に持分の全部を譲渡することを条件に、所在等不明共有者の持分をその者に譲渡する権限を与える裁判も別の制度です。どちらも共有者の合意ではなく裁判所の裁判が要り、持分は供託した対価と引換えに動きます。取得の登記は確定した裁判書の謄本を登記原因証明情報として取得した共有者が申請し、譲渡の登記は権限を得た共有者が所在等不明共有者を代理して譲受人と共同で申請します。
相続財産の管理人は令和5年4月1日から清算人に変わりました
相続人のあることが明らかでない場合に家庭裁判所が選任する者は、令和5年4月1日から相続財産の清算人と呼びます。相続人の捜索の公告と債権者への公告を同時に進められるようになり、手続の期間が短くなりました。相続財産の保存のために選任される者は引き続き相続財産の管理人で、二つの名称は役割で分かれています。登記の申請人としては、相続財産法人の名義にする氏名の変更の登記や、特別縁故者への分与の登記で清算人が現れます。
登記の義務化は令和6年と令和8年の二段階です
所有権の登記名義人について相続が開始したときは、相続で所有権を取得したことを知った日から3年以内に相続登記を申請する義務が、令和6年4月1日から課されています。相続人申告登記はその義務を簡単に果たす方法で、同じ日に始まりました。所有権の登記名義人の氏名や住所に変更があったときは、変更の日から2年以内に変更の登記を申請する義務が令和8年4月1日から課されています。施行日より前の相続や住所の変更にも適用され、施行日と取得や変更を知った日のいずれか遅い日から期間を数えます。
法人の番号と海外居住者の連絡先が登記事項になりました
令和6年4月1日から、所有権の登記名義人が法人であるときは会社法人等番号などの法人識別事項が登記事項になりました。登記名義人が国内に住所を持たないときの国内の連絡先も、同じ日から所有権の登記の登記事項です。法人の同一性と海外に住む所有者への連絡手段を登記記録そのものに持たせる趣旨です。同じ改正で、法務局が住民基本台帳のネットワークと照会して所有権の登記名義人の住所の変更を職権で登記する仕組みも令和8年4月1日に始まりました。自然人については本人の申出があるときに限る定めです。
不動産登記法 第76条の5(所有権の登記名義人の氏名等の変更の登記の申請)
所有権の登記名義人の氏名若しくは名称又は住所について変更があったときは、当該所有権の登記名義人は、その変更があった日から二年以内に、氏名若しくは名称又は住所についての変更の登記を申請しなければならない。
試験ではこう問われる
- 所有者不明土地管理人は誰が選ぶか(裁判所が利害関係人の請求で命令。土地一筆を対象にできる)
- 所在等不明共有者の持分の取得は共有者の合意でできるか(できない。裁判所の裁判が要る)
- 相続財産の管理人と清算人はどう違うか(令和5年4月1日から清算は清算人。保存は管理人)
- 相続登記と住所変更の登記の義務化はいつからか(令和6年4月1日と令和8年4月1日。期間は3年と2年。施行前の分は施行日から)
- 法人の会社法人等番号と国内連絡先はいつから登記事項か(令和6年4月1日)
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