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所在等不明相続人の持分の取得しょざいとうふめいそうぞくにんのもちぶんのしゅとく

不動産登記 第5章 相続・遺贈の登記

共同相続人の一人の所在が分からず遺産分割が進まないとき、相続開始から10年を経過していれば、裁判所の決定でその人の持分を取得したり譲渡したりできる制度です。10年という期間と、遺産分割との関係が肢で突かれます。

所在等不明相続人の持分の取得は、令和5年4月1日施行の民法改正で設けられた、所在等不明共有者の持分の取得と持分の譲渡の制度を、遺産共有の場面に当てはめたものです。共有者の一人の所在が分からないと共有物の処分ができないので、他の共有者が裁判所の決定でその持分を取得し、または第三者に譲渡できるようにしました。相続で共有になった不動産では、相続開始から10年を経過していることが条件になります。同じ改正で、相続開始から10年を過ぎた遺産分割は原則として法定相続分で行うことになり、両者は同じ改正で入った仕組みですが、期間の数え方は別です。

民法 第262条第1項

不動産が数人の共有に属する場合において、共有者が他の共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないときは、裁判所は、共有者の請求により、その共有者に、当該他の共有者(以下この条において「所在等不明共有者」という。)の持分を取得させる旨の裁判をすることができる。この場合において、請求をした共有者が二人以上あるときは、請求をした各共有者に、所在等不明共有者の持分を、請求をした各共有者の持分の割合で按あん分してそれぞれ取得させる。

共有者3人のうち1人が霧の中のシルエットで、残る2人が裁判所の前で持分の扇形を受け取っている
所在等不明相続人の持分は相続開始から10年を経て裁判所の決定で取得できます
10年経過決定で単独申請10年後は法定相続分

遺産共有では相続開始から10年を経ないと使えません

所在等不明共有者の持分の取得は、通常の共有ならいつでも裁判所に請求できますが、相続で共有になった不動産では相続開始から10年を経過していることが要件です。10年以内なら遺産分割の手続で解決すべきだ、という整理です。所在等不明相続人以外の相続人が遺産分割の請求をしていて異議を述べると、裁判所は決定をしません。裁判所は請求があると、所在等不明相続人に対して異議があれば届け出るよう3か月以上の期間を定めて公告し、その期間を過ぎてから決定します。取得を希望する共有者は、裁判所が定める時価相当額を供託してから決定を受けます。10年という数字と、遺産共有だけにかかる条件である点が肢の材料になります。

取得した持分は、取得者が義務者を代理して裁判書で登記します

裁判所の決定が確定すると、請求した共有者は所在等不明相続人の持分を取得し、その人には持分の時価相当額を支払う義務を負います。登記は、取得者を登記権利者、所在等不明相続人を登記義務者とする共同申請の形をとり、取得者が登記義務者を代理して申請します。確定した裁判の裁判書の謄本が登記原因証明情報と代理権限証明情報を兼ね、所在等不明相続人の登記識別情報や印鑑証明書は要りません。登記原因は「年月日民法第262条の2の裁判」で、日付は裁判の確定日です。

持分の譲渡権限の付与なら、第三者への譲渡ができます

持分を自分で取得するのではなく、共有物全部を第三者に売りたいときは、所在等不明相続人の持分を譲渡する権限を裁判所に付与してもらいます。権限の付与は、他の共有者全員が自分の持分も同じ相手に譲渡することを条件とし、裁判は確定によって効力を生じます。確定から2か月以内に持分の譲渡の効力が生じなければ裁判は失効し、この期間は裁判所が伸ばせます。遺産共有ではこちらも相続開始から10年の経過が要件で、譲渡による移転登記は権限を付与された共有者が所在等不明相続人を代理する形で申請します。

10年経過後の遺産分割は法定相続分で行います

相続開始から10年を経過した後の遺産分割では、特別受益や寄与分による具体的相続分の主張はできず、原則として法定相続分または指定相続分で分けます。相続人全員が合意すれば具体的相続分で分けることはできます。相続人の一人の所在が分からないまま長期間放置された遺産を、他の相続人が動かせるようにするための仕組みです。10年経過前に家庭裁判所に遺産分割の請求をしていた場合と、期間満了前6か月以内に請求できないやむを得ない事由があり、その事由が消えてから6か月以内に請求した場合は例外です。令和5年4月1日より前に開始した相続では、相続開始から10年の経過と令和10年3月31日の経過のいずれか遅い時まで猶予されます。持分取得の10年要件とは別の期間なので、混同しないようにします。

民法 第262条第1項

不動産が数人の共有に属する場合において、共有者が他の共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないときは、裁判所は、共有者の請求により、その共有者に、当該他の共有者(以下この条において「所在等不明共有者」という。)以外の共有者の全員が特定の者に対してその有する持分の全部を譲渡することを停止条件として所在等不明共有者の持分を当該特定の者に譲渡する権限を付与する旨の裁判をすることができる。

試験ではこう問われる

  1. 遺産共有の不動産で所在等不明相続人の持分取得の決定を受けるには、相続開始から何年の経過が要るか(10年)
  2. 裁判に基づく持分移転登記の申請人は誰か(取得者が義務者を代理する共同申請の形)
  3. 持分譲渡の権限付与の裁判はいつ効力を生じ、いつ失効するか(確定時に効力、2か月以内に譲渡がなければ失効)
  4. 相続開始から10年経過後の遺産分割は何を基準に分けるか(原則は法定相続分または指定相続分。全員の合意で具体的相続分も可)
不動産登記を肢別で解く

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