抵当権の被担保債権の一部弁済・免責的債務引受ていとうけんのひたんぽさいけんのいちぶべんさい・めんせきてきさいむひきうけ
被担保債権の一部が弁済されたときの債権額の変更と、債務者が入れ替わる免責的債務引受による債務者の変更を扱う抵当権の変更の登記です。一部弁済と一部代位弁済の違い、債務引受で抵当権を移すための要件が肢の軸です。
抵当権の被担保債権の一部弁済・免責的債務引受は、被担保債権の内容が動いたときにする抵当権の変更の登記のうち、債権額が減る場面と債務者が入れ替わる場面をまとめたものです。債務者が自分で一部を弁済すれば債権額が減るだけなので、債権額を減額する変更の登記をします。第三者が一部を弁済して代位すれば、減額ではなく抵当権の一部移転です。免責的債務引受では債務者が交替し、抵当権を引受人の債務に移すかどうかは債権者の意思表示で決まります。肢では、原因の名称、権利者と義務者、承諾の要否、根抵当権との違いが問われます。
民法 第472条の4(免責的債務引受による担保の移転)
債権者は、第四百七十二条第一項の規定により債務者が免れる債務の担保として設定された担保権を引受人が負担する債務に移すことができる。ただし、引受人以外の者がこれを設定した場合には、その承諾を得なければならない。
前項の規定による担保権の移転は、あらかじめ又は同時に引受人に対してする意思表示によってしなければならない。
前二項の規定は、第四百七十二条第一項の規定により債務者が免れる債務の保証をした者があるときについて準用する。
前項の場合において、同項において準用する第一項の承諾は、書面でしなければ、その効力を生じない。
前項の承諾がその内容を記録した電磁的記録によってされたときは、その承諾は、書面によってされたものとみなして、同項の規定を適用する。

一部弁済は債権額を減らす変更の登記で設定者が権利者です
債務者が被担保債権の一部を弁済すると、抵当権は残った債権だけを担保します。登記は「年月日一部弁済」を原因とする抵当権の変更の登記で、変更後の事項として減額後の債権額を記載します。債権額が減ることで負担が軽くなる設定者が登記権利者、抵当権者が登記義務者です。添付情報は登記原因証明情報と抵当権者の登記識別情報で、抵当権者は所有権の登記名義人ではないので印鑑証明書は要りません。転抵当権者など抵当権を目的とする権利者がいれば、その承諾があるときに付記登記でされます。
一部代位弁済は変更ではなく一部移転です
保証人や物上保証人が債務の一部を弁済すると、弁済者は債権者の同意を得て、弁済した価額に応じて債権者とともに抵当権を行使できます。債権額は減らずに債権者が二人になるので、登記は「年月日一部代位弁済」を原因とする抵当権の一部移転です。一部弁済と一部代位弁済は名前が似ていますが、前者は変更、後者は移転で、登記権利者も設定者と弁済者で異なります。肢では原因の文言だけを入れ替えて突いてくるので、誰が払ったかで区別します。
免責的債務引受で抵当権を移すには意思表示と設定者の承諾が要ります
免責的債務引受があると旧債務者は債務を免れ、引受人が同じ内容の債務を負います。債権者は旧債務者の債務のために設定された抵当権を引受人の債務に移すことができますが、あらかじめまたは同時に引受人に対して意思表示をしなければなりません。設定者が引受人以外の者であるときは、その承諾も要ります。登記は「年月日免責的債務引受」を原因とする抵当権の債務者の変更で、抵当権者が登記権利者、設定者が登記義務者です。担保権の債務者に関する変更なので、根抵当権を除き設定者の印鑑証明書は要りません。
併存的債務引受は連帯債務者を追加する変更です
引受人が旧債務者と連帯して同じ内容の債務を負担する併存的債務引受では、旧債務者は債務を免れず、債務者が一人増えます。登記は債務者を追加する抵当権の変更の登記で、原因を「年月日併存的債務引受」とすることができます。「Cを連帯債務者に追加する抵当権の変更の登記を申請するときは、その登記の原因を「併存的債務引受」とすることができる」という肢は正しい肢です。変更後の事項には連帯債務者として旧債務者と引受人を並べます。
確定前の根抵当権は引受人の債務に移せません
元本の確定前に免責的債務引受があっても、根抵当権者は根抵当権を引受人の債務に移すことができません。確定前の根抵当権は個々の債権に随伴せず、債権の範囲と債務者で担保する債権を決める枠だからです。引受人の債務を担保させたいなら、債務者の変更や債権の範囲の変更をします。元本が確定した後は普通抵当権と同じ扱いになり、意思表示と承諾で移すことができます。
不動産登記法 第66条(権利の変更の登記又は更正の登記)
権利の変更の登記又は更正の登記は、登記上の利害関係を有する第三者(権利の変更の登記又は更正の登記につき利害関係を有する抵当証券の所持人又は裏書人を含む。以下この条において同じ。)の承諾がある場合及び当該第三者がない場合に限り、付記登記によってすることができる。
試験ではこう問われる
- 債務者による一部弁済で申請する登記は何か(債権額を減額する抵当権の変更)
- 第三者の一部代位弁済で申請する登記は何か(抵当権の一部移転)
- 免責的債務引受で抵当権を引受人の債務に移す要件は何か(債権者の意思表示。設定者が別人なら承諾)
- 併存的債務引受の登記の原因はどう書けるか(併存的債務引受で連帯債務者を追加)
- 確定前の根抵当権を免責的債務引受で引受人の債務に移せるか(移せない)
この用語が問われた肢
Aを抵当権者、Bを債務者とする抵当権の設定の登記がされている場合において、CとAとの間で、CがBと連帯してBがAに対して負担する債務と同一の内容の債務を負担する契約がされたことによるCを連帯債務者に追加する抵当権の変更の登記を申請するときは、その登記の原因を「併存的債務引受」とすることができる。
Aが所有権の登記名義人である甲土地について、Bを質権者とし、Aを債務者とする質権の設定の登記がされている場合において、CがAの債務を免責的に引き受けたことにより当該質権の債務者の変更の登記を申請するときは、Aの印鑑に関する証明書を添付することを要しない。
解説と関連先例は肢別演習で読めます。
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