簡裁訴訟代理等関係業務かんさいそしょうだいりとうかんけいぎょうむ
簡裁訴訟代理等関係業務とは、簡易裁判所での訴訟などの代理(3条1項6号)、140万円以下の民事紛争の相談・裁判外の和解の代理(7号)、筆界特定の手続の相談・代理(8号)をいい、研修を修了して法務大臣の認定を受けた司法書士会の会員だけが行えます(3条2項)。試験では、司法書士法人がこの業務を行うには社員に認定司法書士がいることが要る点と、懲戒でこの業務だけを停止できる点が問われています。
簡裁訴訟代理等関係業務は、3条1項6号から8号までの業務をまとめた呼び名です(3条2項)。6号は簡易裁判所での民事訴訟・和解・支払督促・証拠保全・民事保全・民事調停・少額訴訟債権執行の代理、7号は簡易裁判所の民事訴訟の対象となる紛争についての相談と仲裁事件の手続・裁判外の和解の代理、8号は筆界特定の手続についての相談と代理です。価額の上限は、どれも裁判所法33条1項1号に定める額、つまり140万円です。

司法書士法 第3条第2項前項第六号から第八号までに規定する業務(以下「簡裁訴訟代理等関係業務」という。)は、次のいずれにも該当する司法書士に限り、行うことができる。
一 簡裁訴訟代理等関係業務について法務省令で定める法人が実施する研修であつて法務大臣が指定するものの課程を修了した者であること。
二 前号に規定する者の申請に基づき法務大臣が簡裁訴訟代理等関係業務を行うのに必要な能力を有すると認定した者であること。
三 司法書士会の会員であること。
この業務は、研修を修了し、法務大臣の認定を受けた司法書士会の会員だけが行えます
3条2項は、法務大臣が指定する研修の課程を修了したこと、法務大臣が簡裁訴訟代理等関係業務を行うのに必要な能力を有すると認定したこと、司法書士会の会員であることの三つを求めています。この三つを満たす司法書士は、一般に認定司法書士と呼ばれます。6号の代理でも、上訴の提起(自ら代理人として関与している事件の判決などに対するものを除く)、再審、少額訴訟債権執行を除く強制執行は代理できません(3条1項6号ただし書)。また、簡裁訴訟代理等関係業務の依頼は、21条の依頼に応ずる義務の対象から外されています。
司法書士法 第3条第1項第6号簡易裁判所における次に掲げる手続について代理すること。ただし、上訴の提起(自ら代理人として手続に関与している事件の判決、決定又は命令に係るものを除く。)、再審及び強制執行に関する事項(ホに掲げる手続を除く。)については、代理することができない。
認定司法書士は簡易裁判所で訴訟代理人になれますが、強制執行の訴訟行為はできません
民事訴訟法54条1項は、法令により裁判上の行為をすることができる代理人のほかは弁護士でなければ訴訟代理人となれないと定めています。3条6項は、認定司法書士がこの規定にかかわらず、3条1項6号イからハまで又はホの手続で訴訟代理人又は代理人となれると定めています。他方、訴訟代理人は通常、委任を受けた事件について強制執行に関する訴訟行為もできます(民事訴訟法55条1項)が、司法書士法3条7項は、6号イ・ロの手続で訴訟代理人になった認定司法書士は強制執行に関する訴訟行為ができないとしています。例外は、少額訴訟の訴訟代理人になった認定司法書士が、少額訴訟債権執行(6号ホ)の手続でする訴訟行為です。
司法書士法 第3条第7項第二項に規定する司法書士であつて第一項第六号イ及びロに掲げる手続において訴訟代理人になつたものは、民事訴訟法第五十五条第一項の規定にかかわらず、委任を受けた事件について、強制執行に関する訴訟行為をすることができない。ただし、第二項に規定する司法書士であつて第一項第六号イに掲げる手続のうち少額訴訟の手続において訴訟代理人になつたものが同号ホに掲げる手続についてする訴訟行為については、この限りでない。
民事訴訟法 第55条第1項訴訟代理人は、委任を受けた事件について、反訴、参加、強制執行、仮差押え及び仮処分に関する訴訟行為をし、かつ、弁済を受領することができる。
認定には、法務大臣が指定する研修の修了と、法務大臣が実施する考査が要ります
3条2項1号の研修は、法務省令で定める法人が実施し、法務大臣が指定するものです。施行規則8条は、研修を事実認定の手法、立証活動、弁論及び尋問技術、訴訟代理人としての倫理などについての講義と演習で行い、総時間数を100時間以上とすると定めています。研修を修了した者について、法務大臣は能力を習得したかを判定する考査を実施し(施行規則11条1項)、認定を受けようとする者は考査を受けなければなりません(施行規則12条1項)。認定を受けた者には認定証書が交付され、氏名が官報で公告されます(施行規則13条)。
裁判外の和解を代理できる範囲は、個別の債権ごとの価額で決まります
複数の貸金業者を相手とする債務整理で、認定司法書士がどこまで裁判外の和解を代理できるかが争われた事件で、最高裁は、7号は簡易裁判所の民事訴訟手続の代理を認めたことに付随するものであり、代理できる範囲は個別の債権ごとの価額を基準として定めるべきだと判断しました(最判平成28年6月27日)。債権の総額や、弁済計画の変更で債務者が受ける経済的利益の額で決めるのではありません。そのため、貸付金の元本や過払金の額が140万円を超える個別の債権について和解を代理すると、認定司法書士の権限を超えます。この事件では、権限を超えて和解を代理し受け取った報酬について、不法行為による損害賠償責任が認められました。

最判平成28年6月27日(平成26年(受)第1813号・第1814号)複数の債権を対象とする債務整理の場合であっても,通常,債権ごとに争いの内容や解決の方法が異なるし,最終的には個別の債権の給付を求める訴訟手続が想定されるといえることなどに照らせば,裁判外の和解について認定司法書士が代理することができる範囲は,個別の債権ごとの価額を基準として定められるべきものといえる。
司法書士法人がこの業務を行うには、社員のうちに認定司法書士がいることが要ります
29条2項は、簡裁訴訟代理等関係業務を行える司法書士法人を、社員のうちに3条2項の司法書士がある法人に限っています。使用人に認定司法書士がいるだけでは足りません。「司法書士法人は、その社員に簡裁訴訟代理等関係業務を行うのに必要な能力を有する旨の法務大臣の認定を受けた司法書士がいない場合であっても、その使用人に当該認定を受けた司法書士がいるときは、簡裁訴訟代理等関係業務を行うことができる」という肢(R8 午後 問8 エ)は誤りです。また、法務大臣は法人に対する懲戒として業務の一部の停止を命じることができる(48条1項2号)ので、「法務大臣は、簡裁訴訟代理等関係業務を行うことができる司法書士法人に対する懲戒処分をする場合には、当該司法書士法人の取り扱う業務のうちの簡裁訴訟代理等関係業務のみを対象としてその業務を停止する処分をすることができる」という肢(R8 午後 問8 ウ)は正しい記述です。
試験ではこう問われる
- 法務大臣は、簡裁訴訟代理等関係業務を行える司法書士法人に対し、その業務だけを対象に業務停止の処分ができる(48条1項2号。R8 午後 問8 ウ ○)
- 社員に認定司法書士がいない司法書士法人は、使用人に認定司法書士がいても簡裁訴訟代理等関係業務を行えない(29条2項。R8 午後 問8 エ ×)
- 認定司法書士である使用人がいても、社員に認定司法書士がいない法人の使用人として簡裁訴訟代理等関係業務を行うことはできない(29条2項・30条1項。R3 午後 問8 イ ×)
- 簡裁訴訟代理等関係業務の依頼は、21条の依頼に応ずる義務の対象から除かれ、承諾しないときは速やかにその旨を通知する(21条、規則27条2項)
- 6号イ・ロの手続で訴訟代理人になった認定司法書士は強制執行に関する訴訟行為ができないが、少額訴訟の代理人が少額訴訟債権執行でする訴訟行為は除かれる(3条7項)
- 裁判外の和解を代理できる範囲は、個別の債権ごとの価額が140万円を超えないかで決まる(3条1項7号、最判平成28年6月27日)
この用語が問われた肢
法務大臣は、簡裁訴訟代理等関係業務を行うことができる司法書士法人に対する懲戒処分をする場合には、当該司法書士法人の取り扱う業務のうちの簡裁訴訟代理等関係業務のみを対象としてその業務を停止する処分をすることができる。
司法書士法人は、その社員に簡裁訴訟代理等関係業務を行うのに必要な能力を有する旨の法務大臣の認定を受けた司法書士がいない場合であっても、その使用人に当該認定を受けた司法書士がいるときは、簡裁訴訟代理等関係業務を行うことができる。
簡裁訴訟代理等関係業務を行うのに必要な能力を有する旨の法務大臣の認定を受けた司法書士である社員がいない司法書士法人であっても,当該認定を受けた司法書士である使用人がいれば,当該司法書士である使用人が簡裁訴訟代理等関係業務を行うことができる。
解説と関連先例は肢別演習で読めます。

