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訴訟上の和解の要件と方式(89条・264条・265条・275条)そしょうじょうのわかいのようけんとほうしき

民事訴訟法 第6章 訴訟行為・攻撃防御 過去問で15肢

訴訟上の和解とは、訴訟の係属中に当事者が期日において互いに譲歩して争いをやめる合意のことです。裁判所は訴訟の程度を問わず和解を試みることができ(89条1項)、和解条項案の書面受諾(264条)や当事者の共同の申立てによる和解条項の定め(265条)でも成立します。

裁判が長引くより、互いに譲り合って早く決着をつけたいと考える当事者は少なくありません。訴訟の途中で当事者が互いに譲歩して争いをやめる合意をすれば、判決を待たずに訴訟は終わります。これが訴訟上の和解です。裁判所は訴訟がどの段階にあっても和解を勧めることができ、和解の中身も訴訟物に限られません。当事者が自主的に決めるものなので、判決よりも柔軟な解決ができる一方、代理人の権限や成立の方式には決まりがあります。

和解室の場面。丸いテーブルを囲み、先生が裁判官役(札「裁判所」)、原告(札「原告」)、被告(札「被告」)、もう一人の男性(札「保証人(第三者)」)が座っている。テーブルの上の和解条項案に「1 被告は分割で支払う」「2 第三者は被告の債務を保

裁判所は訴訟がどの程度にあるかを問わず和解を試みることができ、第1回口頭弁論期日の前でも、口頭弁論の終結後でも、上告審でもできます

裁判所は、訴訟がいかなる程度にあるかを問わず、和解を試み、又は受命裁判官若しくは受託裁判官に和解を試みさせることができます(89条1項)。訴えの提起後であれば、第1回口頭弁論期日の前でもできます。口頭弁論の終結後でも、弁論を再開しないまま和解を試みられるので、「裁判所は、口頭弁論を終結した後判決の言渡しまでの間に和解を試みるときは、口頭弁論を再開しなければならない」という肢(R6 午後 問4 エ)は誤りです。第一審判決の言渡し後でも確定前なら、第一審裁判所で和解ができます。上告審でも和解ができ、和解のために原審に差し戻す必要はありません。受命裁判官にも受託裁判官にも試みさせられます。

和解の対象は訴訟物に限られず、第三者も参加の手続なしに加わることができます

和解は当事者が互いに譲歩して紛争を解決する合意なので、訴訟物以外の権利や法律関係も含めることができます。当事者以外の第三者も、補助参加などの訴訟参加の手続を経ずに和解に加わることができ(大判昭和13年8月9日)、和解条項で第三者が債務を負えば、和解調書はその第三者に対する債務名義にもなります。第三者が被告の債務を保証する和解もできます。被告が請求原因を全部認めていても、明渡しの期限を猶予する和解はできます。請求を全部認めつつ訴訟費用を各自の負担とする和解もでき、和解で費用の負担を定めなかったときは各自が負担します(68条)。「この場合の訴訟費用は、当事者の各自が負担することになります」という肢(R5 午後 問3 エ。対話形式の問の解答)は正しいです。

  • 時期訴訟がいかなる程度にあるかを問いません(89条1項)。第1回期日前・口頭弁論終結後・判決言渡し後確定前・上告審でもできます
  • 主体受訴裁判所のほか、受命裁判官・受託裁判官に試みさせられます
  • 対象訴訟物以外の権利も含められ、第三者も参加の手続なしに加われます
  • 代理訴訟代理人は特別の委任(55条2項)、法定代理人・被保佐人・被補助人は特別の授権(32条2項)が必要です
  • 費用定めがなければ各自負担です(68条)
  • できない場合筆界確定の訴えで筆界を定める和解

訴訟要件を欠く訴えや重複した訴えでも和解はできますが、筆界を定める和解はできません

訴訟上の和解は当事者の自主的な紛争解決なので、本案判決のように訴訟要件の具備は求められません。訴えの利益を欠く訴訟でも、重複する訴えの後訴でも和解できます。共有物分割の訴えのような形式的形成訴訟でも、当事者が処分できる共有関係なので和解ができます。離婚も当事者が処分できる身分関係なので、和解ができます。これに対し、筆界は公的な境界で当事者が処分できないので、筆界確定の訴えで筆界を定める和解はできません。

左右2コマ。左のコマは遠方の自宅で原告(札「原告(出頭困難)」)が書面「和解条項案を受諾します」に署名している場面。右のコマは和解室で被告(札「被告」)が「受諾します」と述べ、先生(札「裁判所」)の吹き出し「原告は書面で受諾し、被告がこの期

和解は期日で双方が合意するほか、和解条項案の書面による受諾や、当事者の共同の申立てによる裁判所の和解条項の定めでも成立します

和解は期日で当事者双方が合意して成立するのが基本ですが、それ以外の方法も用意されています。当事者の一方が出頭することが困難なときは、その当事者があらかじめ提示された和解条項案を受諾する書面を出し、他方が期日に出頭して受諾すれば和解が調ったものとみなされます(264条1項)。当事者双方が出頭することが困難なときは、和解が成立すべき日時を定めて提示された和解条項案を双方が書面で受諾し、その日時が経過すれば、その日時に和解が調ったものとみなされます(同条2項。令和4年改正で新設)。改正前は一方の書面受諾しか認められず、現在の264条2項も、双方の出頭困難・日時を定めた条項案・日時の経過で和解が調ったものとみなされる仕組みで、期日に欠席した双方について裁判所がみなす制度ではありません。さらに、当事者の共同の申立てがあれば、裁判所は事件の解決のために適当な和解条項を定めることができ、その告知が双方にされたときに和解が調ったものとみなされます(265条)。「裁判所が当事者の共同の申立てにより事件の解決のために適当な和解条項を定めるときは、その和解条項の定めは、口頭弁論、弁論準備手続又は和解の期日における告知その他相当と認める方法による告知によってする」という肢(R6 午後 問4 オ)は正しいです。職権ではできません。電話会議やウェブ会議で行う弁論準備手続や和解の期日でも、和解ができます。

訴訟代理人には特別の委任、被保佐人には特別の授権が要り、訴え提起前の和解は簡易裁判所に申し立てます

和解は訴訟物を処分する行為なので、訴訟代理人は特別の委任を受けなければならず(55条2項2号)、被保佐人や法定代理人には特別の授権が必要です(32条2項1号)。相手方の提起した訴えに応訴する場合でも同じです。「被告が訴訟係属中に保佐開始の審判を受けた場合において,訴訟上の和解をするときは,保佐人の特別の授権を要する」という肢(R3 午後 問1 ウ)は正しいです。補助参加人は当事者ではないので、補助参加人が欠席した期日でも被参加人は和解できます。訴えを提起する前でも、当事者は請求の趣旨・原因と争いの実情を示して、相手方の普通裁判籍の所在地を管轄する簡易裁判所に和解を申し立てられます(275条1項・訴え提起前の和解)。地方裁判所ではありません。簡易裁判所では、金銭の支払を求める訴えで被告が争わず防御方法も出さないとき、相当と認めれば和解に代わる決定ができ、告知から2週間以内の異議で失効します(275条の2)。

民事訴訟法 第89条第1項

裁判所は、訴訟がいかなる程度にあるかを問わず、和解を試み、又は受命裁判官若しくは受託裁判官に和解を試みさせることができる。

民事訴訟法 第264条第2項

当事者双方が出頭することが困難であると認められる場合において、当事者双方があらかじめ裁判所又は受命裁判官若しくは受託裁判官から和解が成立すべき日時を定めて提示された和解条項案を受諾する旨の書面を提出し、その日時が経過したときは、その日時に、当事者間に和解が調ったものとみなす。

民事訴訟法 第265条第1項

裁判所又は受命裁判官若しくは受託裁判官は、当事者の共同の申立てがあるときは、事件の解決のために適当な和解条項を定めることができる。

試験ではこう問われる

  1. 裁判所は訴訟の程度を問わず和解を試みられ(89条1項)、口頭弁論の終結後も再開せずに試みられる(R6 午後 問4 エ ×)。受命裁判官にも受託裁判官にも試みさせられる
  2. 訴訟物以外の権利も対象にでき、第三者は参加の手続なしに加わることができる
  3. 和解で訴訟費用の負担を定めなかったときは各自が負担する(68条、R5 午後 問3 エ ○)
  4. 訴えの利益を欠く訴えや重複した訴えでも和解でき、共有物分割や離婚も和解できるが、筆界を定める和解はできない
  5. 書面受諾による和解(264条)のほか、当事者の共同の申立てによる和解条項の定め(265条)でも和解が成立し、その定めは期日における告知その他相当と認める方法による告知でする(R6 午後 問4 オ ○)。職権ではできない
  6. 訴訟代理人は特別の委任、被保佐人は特別の授権が必要である(55条2項・32条2項、R3 午後 問1 ウ ○)
  7. 訴え提起前の和解は相手方の普通裁判籍所在地の簡易裁判所に申し立てる(275条1項)。簡易裁判所の和解に代わる決定には異議を申し立てられる(275条の2)

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