司法書士試験AIブートラボ 司法書士試験AIブートラボ

債務名義・執行文と請求異議の訴えさいむめいぎしっこうぶんとせいきゅういぎのうったえ

民事訴訟法 第13章 民事執行・民事保全の基礎 過去問で1肢

債務名義とは、強制執行によって実現される請求権の存在と範囲を表示し、強制執行の根拠となる文書で、確定判決・仮執行宣言付判決・仮執行宣言付支払督促・和解調書などがこれに当たります(民事執行法22条)。執行文は債務名義に執行力があることを裁判所書記官などが公証するもので、請求異議の訴えは債務名義に表示された請求権の存在や内容を争って強制執行の不許を求める訴えです(同法26条・35条)。

裁判で勝っても、相手が払わなければ、最後は国の力で財産を差し押さえて取り立てるしかありません。そのとき執行機関は、もう一度権利があるかを調べ直すのではなく、判決や和解調書のような、権利を確かめた文書を見て手続を進めます。これが債務名義です。判決の後に相手が亡くなったり物を売ったりしたときは、相続人や買主にも執行できるという証明(執行文)を付けてもらいます。逆に、判決の後に払い終えたのに執行されそうなときは、請求異議の訴えで止めます。

地方裁判所の書記官室の受付の場面。男性(札「債権者」)が「判決正本」と表紙に書かれた書面と「相続を証する戸籍」を差し出している。先生が裁判所書記官役(札「裁判所書記官」)として判決正本の末尾に「承継執行文」の判子を押している。カウンターの横

強制執行は債務名義によって行い、確定判決・仮執行宣言付判決・仮執行宣言付支払督促・和解調書などが債務名義になります

強制執行は、確定判決、仮執行の宣言を付した判決、仮執行の宣言を付した支払督促、執行証書、確定判決と同一の効力を有するものなど、法律が定めた債務名義によって行います(民事執行法22条)。執行証書は金銭その他の代替物・有価証券の一定数量の給付を目的とする請求に限られるので、不動産の明渡しを目的とする公正証書について「はい。債務名義に該当します」という肢(R2 午後 問7 ア)は誤りです。執行機関は債務名義に表示された請求権をそのまま実現し、請求権の有無を自ら判断しません。権利の判定と実現を分けて、執行を速くするためです。訴訟上の和解や請求の認諾について作成しファイルに記録した電子調書は確定判決と同一の効力を有するので(民事訴訟法267条1項)、債務名義になります(民事執行法22条7号)。強制執行は、執行文の付された債務名義の正本に基づいて実施します。執行文は、事件の記録のある裁判所の裁判所書記官が、債権者が債務者に対しその債務名義により強制執行をすることができる場合に付与します(民事執行法26条1項・2項)。執行証書の執行文はその原本を保存する公証人が付与するので、「執行証書が書面をもって作成されている場合には、当該執行証書についての執行文は、申立てにより、当該執行証書の原本を保存する公証人が付与する」という肢(R8 午後 問7 ア)は正しいです。書面の債務名義なら、執行文は「その旨を債務名義の正本の末尾に付記する方法により行う」という肢(R4 午後 問7 ウ)のとおり正本の末尾に付記します(同条2項3号)。少額訴訟の判決や支払督促によるときは執行文が要らず(同法25条ただし書)、「仮執行の宣言を付した少額訴訟の判決により、これに表示された当事者に対し、又はその者のために強制執行をするには、執行文の付与を受けることを要しない」という肢(R4 午後 問7 イ)は正しいです。引換給付の判決では、反対給付の証明は執行文付与の要件ではなく強制執行の開始の要件なので(同法31条1項)、「債務者の給付が反対給付と引換えにすべきものである場合においては、執行文は、債権者が反対給付又はその提供のあったことを証明したときに限り、付与することができる」という肢(R4 午後 問7 オ)は誤りです。

  • 確定判決民事執行法22条1号
  • 仮執行の宣言を付した判決同条2号
  • 仮執行の宣言を付した支払督促同条4号
  • 執行証書(強制執行に服する旨の陳述がある公正証書)同条5号
  • 和解調書・認諾調書など確定判決と同一の効力を有するもの同条7号

債務名義の執行力は口頭弁論終結後の承継人などにも及び、承継人に対しては承継執行文の付与を受けて執行します

強制執行は、債務名義に表示された当事者のほか、他人のために当事者となった場合のその他人(訴訟担当の被担当者)、これらの者の口頭弁論終結後の承継人、これらの者のために請求の目的物を所持する者に対しても、することができます(民事執行法23条)。既判力の主観的範囲(民事訴訟法115条1項)と同じ範囲です。債務名義に表示された当事者以外の者に対する執行文は、その者に対して執行できることが裁判所書記官に明白であるか、債権者がそれを証する文書を提出したときに限り付与されます(民事執行法27条2項。承継執行文)。文書を出せないときは執行文付与の訴え(同法33条)を、債務者の側はその付与を争う執行文付与に対する異議の訴え(同法34条)を使います。「その事実審の口頭弁論終結後にAがCに対してその土地を譲渡したときは、Cは、承継執行文の付与を受けることにより、その確定判決を債務名義として強制執行を申し立てることができる」という肢(R4 午後 問7 エ)は、債権者側の承継の例として正しいです。もっとも、承継人でも、実体法上自ら取得した固有の地位は前の判決で奪われません。判例は、通謀虚偽表示による登記名義人に対する登記手続を命じる判決が確定した後、その土地を善意で取得した第三者について、虚偽表示の無効を善意の第三者に対抗できない以上、第三者は登記義務を承継するものではなく、承継執行文の付与を受けて執行することは許されないとしました(最判昭和48年6月21日)。承継人の範囲は、口頭弁論終結後の承継人の語で扱います。法人でない社団を債務者とする債務名義でも、代表者の個人名義の総有不動産に対し、総有を確認する確定判決などを添えて執行を申し立てられるとされ(最判平成22年6月29日)、代表者の個人名義の不動産に強制執行をする余地があります。

請求異議の訴えでは、確定判決については口頭弁論終結後に生じた事由に限って主張できます

債務名義に係る請求権の存在又は内容について異議のある債務者は、その債務名義による強制執行の不許を求めるために、請求異議の訴えを提起することができます(民事執行法35条1項)。確定判決についての異議の事由は、口頭弁論の終結後に生じたものに限られます(同条2項)。それより前の事由は既判力で遮断されているからです。口頭弁論終結後の弁済はこれに当たり、3月16日に口頭弁論が終結し5月9日に確定した判決について、5月1日の弁済は請求異議の事由として主張できます。確定前の仮執行宣言付判決は請求異議の対象から除かれているので(同条1項括弧書)、「仮執行の宣言を付した判決に係る請求権の存在又は内容について異議のある債務者は,その判決が確定する前後を問わず,その判決による強制執行の不許を求めるために,請求異議の訴えを提起することができる」という肢(R3 午後 問7 オ)は誤りです。和解調書や支払督促のように確定判決でない債務名義には35条2項の制限は無く、成立前の事由も主張できます。裁判以外の債務名義の成立について異議のある債務者も、請求異議の訴えを起こせます(同条1項後段)。

教室の黒板の図解。黒板に左から右へ時間の矢印。中ほどに縦線「口頭弁論終結(基準時)」。縦線の左に「弁済・取消原因・時効完成」、右に「弁済(終結後)・相殺の意思表示(終結後)・建物買取請求(終結後)」の札。右側の札に丸印、左側の札のうち「取消

基準時前に行使できた形成権を基準時後に行使した場合に請求異議の事由にできるかは、形成権の種類によって分かれます

口頭弁論終結前から相殺適状にあった反対債権で終結後に相殺した場合、判例は、相殺は意思表示によって効力を生じ、訴求債権そのものに付着する瑕疵ではないから、その効果を請求異議の事由として主張できるとしました(最判昭和40年4月2日)。建物収去土地明渡請求の認容判決が確定した後の建物買取請求権の行使も、判例は、請求権の発生原因に内在する瑕疵に基づく権利とは別個の制度目的と原因に基づく権利なので既判力で遮断されず、請求異議の事由にできるとしました(最判平成7年12月15日)。「当該賃借人は、判決確定後に当該建物について建物買取請求権を行使したことを異議の事由として主張することができない」という肢(R8 午後 問4 エ)は誤りです。これに対して、詐欺による取消権や、基準時前に完成していた消滅時効の援用は遮断されます。形成権ごとの判断の理由は、基準時前の形成権と遮断効の語で扱います。

給付訴訟で不執行の合意が認められても訴えの利益は失われず、判決主文で強制執行をすることができないことを明示します

判例は、給付訴訟の訴訟物は給付請求権の存在と範囲であり、請求権について強制執行をしない旨の合意があっても訴えの利益は否定されないとしたうえで、不執行の合意が主張されたときは訴訟物に準ずるものとして審判の対象になり、合意が認められれば、執行段階の紛争を防ぐため、強制執行をすることができないことを判決主文で明らかにすべきであるとしました(最判平成5年11月11日)。反対に、すでに債務名義を持っていても給付の訴えの利益は失われないので、「債権者がその債権について執行証書を所持している場合において、同一の債権に係る給付の訴えには、訴えの利益が認められない」という肢(R4 午後 問3 エ)は誤りです。給付の訴えの利益は、給付の訴えの利益の語で扱います。

民事執行法23条

執行証書以外の債務名義による強制執行は、次に掲げる者に対し、又はその者のためにすることができる。一 債務名義に表示された当事者 二 債務名義に表示された当事者が他人のために当事者となつた場合のその他人 三 前二号に掲げる者の債務名義成立後の承継人(前条第一号、第二号又は第六号に掲げる債務名義にあつては口頭弁論終結後の承継人(略))(略)3 第一項に規定する債務名義による強制執行は、同項各号に掲げる者のために請求の目的物を所持する者に対しても、することができる。

民事執行法35条

債務名義(略)に係る請求権の存在又は内容について異議のある債務者は、その債務名義による強制執行の不許を求めるために、請求異議の訴えを提起することができる。裁判以外の債務名義の成立について異議のある債務者も、同様とする。2 確定判決についての異議の事由は、口頭弁論の終結後に生じたものに限る。

試験ではこう問われる

  1. 執行証書は金銭などの一定額・一定数量の給付の請求に限られ、不動産の明渡しには使えない(民事執行法22条5号。R2 午後 問7 ア ×)
  2. 執行証書の執行文はその原本を保存する公証人が付与する(同法26条1項。R8 午後 問7 ア ○)
  3. 仮執行宣言付きの少額訴訟の判決による強制執行には執行文が要らない(同法25条ただし書。R4 午後 問7 イ ○)
  4. 引換給付の判決では、反対給付の証明は執行文付与ではなく執行開始の要件である(同法31条1項。R4 午後 問7 オ ×)
  5. 口頭弁論終結後に土地を譲り受けた債権者側の承継人は、承継執行文で強制執行できる(同法23条・27条2項。R4 午後 問7 エ ○)
  6. 確定前の仮執行宣言付判決には請求異議を起こせず、確定判決については口頭弁論終結後に生じた事由に限る(同法35条。R3 午後 問7 オ ×)
  7. 判決確定後の建物買取請求権の行使や相殺は請求異議の事由になる(最判平成7年12月15日・最判昭和40年4月2日。R8 午後 問4 エ ×)

司法書士試験AIブートラボ

司法書士試験の対策を、
スマホひとつで。

過去問の肢別演習、記述式と雛形ドリル、先例と条文、用語集。司法書士試験の勉強に使う教材をひとつのアプリにまとめました。

関連する用語

既判力と判決効

判決の効力の全体像(既判力・執行力・形成力・参加的効力・反射効)

判決の効力とは、確定した判決などが当事者や第三者に及ぼす法的な力の総称で、後訴を拘束する既判力(114条)、強制執...
民事執行・民事保全の基礎

民事保全の基本構造(仮差押え・仮処分・疎明・当事者恒定)

民事保全とは、本案の判決を待っていては権利の実現ができなくなるおそれがあるときに、仮の救済を与える手続で、金銭債権...
既判力と判決効

既判力の基準時(時的限界)

既判力の基準時とは、確定判決がどの時点の権利関係を確定したかを示す時点で、事実審の口頭弁論の終結時をいいます。基準...
既判力と判決効

基準時前の形成権と遮断効

遮断効とは、確定判決の既判力により、基準時より前に存在した事由を後訴で主張して確定した判断を争えなくなる効力です。...
判決

仮執行宣言

仮執行宣言とは、まだ確定していない財産権上の請求に関する判決に、確定前でも強制執行ができる効力を与える裁判所の宣言...
再審・簡易手続

支払督促

支払督促とは、金銭その他の代替物又は有価証券の一定の数量の給付を目的とする請求について、債権者の申立てにより、簡易...