仮執行宣言かりしっこうせんげん
仮執行宣言とは、まだ確定していない財産権上の請求に関する判決に、確定前でも強制執行ができる効力を与える裁判所の宣言です。裁判所は、必要があると認めるときは、申立てにより又は職権で、担保を立てさせて又は立てさせないで付けることができます(259条1項)。
第一審で勝っても、相手が控訴すれば判決は確定せず、確定を待つ間に相手の財産がなくなってしまうおそれがあります。勝訴判決が確定するまで権利の実現を待たせ続けるのは、勝った側に酷です。そこで、お金の支払や物の引渡しのような財産権上の請求の判決には、確定前でも強制執行ができる仮執行宣言を付けられるようにしました。引き延ばしのためだけの控訴を思いとどまらせる効果もあります。その代わり、判決が後で変われば原状回復と損害賠償で調整します。

財産権上の請求の判決には、必要があると認めるとき、申立てがなくても職権で仮執行宣言を付けることができます
財産権上の請求に関する判決について、裁判所は、必要があると認めるときは、申立てにより又は職権で、担保を立てて、又は立てないで仮執行をすることができることを宣言できます(259条1項)。仮執行宣言は訴訟物そのものの判断ではなく、判決の効力を確定前に前倒しする付随的な裁判なので、申し立てられていない事項について判決できないという処分権主義(246条)の外にあり、原告の申立てがなくても職権で付けられます。手形・小切手による金銭の支払の請求とその附帯の法定利率による損害賠償の請求の判決には、職権で、原則として担保を立てさせずに仮執行宣言を付けなければなりません(同条2項)。仮執行宣言は判決の主文に掲げ(同条4項)、離婚のような身分関係の判決には付けられません。仮執行宣言付判決は債務名義になります(民事執行法22条2号)。「例えば,仮執行の宣言を付した判決は債務名義に該当します」という肢(R2 午後 問7 イ)は正しいです。担保を立てることを条件とする仮執行宣言付判決による強制執行は、債権者が担保を立てたことを証する文書を提出したときに限り、開始することができます(同法30条2項)。「担保を立てて仮執行をすることができる旨の宣言を付した判決による強制執行は、債権者が担保を立てたことを証する文書を提出したときに限り、開始することができる」という肢(R8 午後 問7 エ)は正しいです。
- 要件財産権上の請求に関する判決で、必要があると認めるときです(259条1項)
- 申立て申立てにより又は職権で付けられます。手形・小切手の金銭請求では職権で付けなければなりません(同条2項)
- 担保立てさせても立てさせなくてもよく、手形・小切手の金銭請求では原則として無担保です
- 仮執行免脱宣言申立てにより又は職権で、担保を立てて仮執行を免れられることを宣言できます(同条3項)
- 控訴審での付与第一審判決のうち不服の申立てがない部分に、申立てにより決定で付けられます(294条)
被告の側を守るため、担保を立てて仮執行を免れることができる旨の宣言も、申立てにより又は職権でできます
仮執行で財産を失うと回復が難しい被告のために、裁判所は、申立てにより又は職権で、担保を立てて仮執行を免れることができることを宣言できます(259条3項。仮執行免脱宣言)。この宣言も判決の主文に掲げます(同条4項)。仮執行宣言や免脱宣言の申立てに裁判をしなかったときや、職権で付けるべき仮執行宣言を付けなかったときは、申立てにより又は職権で補充の決定をします(同条5項)。控訴審では、第一審判決について不服の申立てがない部分に限り、申立てにより、決定で、仮執行宣言をすることができます(294条)。不服のない部分は控訴審で変更される見込みがないからです。
仮執行宣言は本案判決を変更する判決の言渡しで当然に失効し、その場合は被告の申立てで原状回復と損害賠償を命じます
仮執行の宣言は、その宣言又は本案判決を変更する判決の言渡しにより、変更の限度においてその効力を失います(260条1項)。仮執行宣言を取り消す裁判を別にする必要はありません。本案判決を変更する場合、裁判所は、被告の申立てにより、その判決で、仮執行の宣言に基づいて被告が給付したものの返還と、仮執行により又はこれを免れるために被告が受けた損害の賠償を原告に命じなければなりません(同条2項)。仮執行は確定を待たずに執行を許す代わりに、原告が結果責任を負う仕組みです。控訴審で訴えが取り下げられたときも、訴訟は初めから係属していなかったものとみなされる(262条1項)ので、第一審判決とともに仮執行宣言も効力を失います。
仮執行宣言に基づく弁済は確定的な弁済ではないので、控訴審はそれをしん酌せずに請求の当否を判断します
仮執行宣言付判決に基づいて強制執行がされ、原告が弁済を受けても、控訴審はその給付の事実を考慮せずに請求の当否を判断すべきだとするのが判例です(最判昭和36年2月9日。同旨の大判昭和13年12月20日)。仮執行は判決の内容を仮に実現するにすぎず、本案判決や仮執行宣言が取り消されれば効力を失うことが前提なので、その結果の給付は請求権を消滅させる実体法上の弁済ではないからです。これをしん酌して請求を棄却すると、仮執行で取り立てた原告が逆に敗訴し、260条2項の原状回復を命じなければならないというおかしな結果になります。控訴審は、仮執行による弁済の事実を考慮して請求権が消滅したと判断してはなりません。

民事訴訟法 第259条第1項財産権上の請求に関する判決については、裁判所は、必要があると認めるときは、申立てにより又は職権で、担保を立てて、又は立てないで仮執行をすることができることを宣言することができる。
民事訴訟法 第260条第1項仮執行の宣言は、その宣言又は本案判決を変更する判決の言渡しにより、変更の限度においてその効力を失う。
民事訴訟法 第294条(第一審判決についての仮執行の宣言)
控訴裁判所は、第一審判決について不服の申立てがない部分に限り、申立てにより、決定で、仮執行の宣言をすることができる。
試験ではこう問われる
- 仮執行宣言付判決は、確定判決以外の債務名義である(民事執行法22条2号。R2 午後 問7 イ ○)
- 担保を立てることを条件とする仮執行宣言付判決による強制執行は、担保を立てたことを証する文書を出したときに限り開始できる(民事執行法30条2項。R8 午後 問7 エ ○)
- 確定前の仮執行宣言付判決に対しては請求異議の訴えを起こせない(民事執行法35条1項。R3 午後 問7 オ ×)
- 仮執行宣言を付した少額訴訟の判決による強制執行には、執行文の付与が要らない(民事執行法25条ただし書。R4 午後 問7 イ ○)
- 財産権上の請求に関する判決には、必要があると認めるとき、申立てにより又は職権で仮執行宣言を付けられ、仮執行免脱宣言も同じである(259条1項・3項)
- 仮執行宣言は本案判決を変更する判決の言渡しで、取消しの裁判なしに変更の限度で失効し、被告の申立てにより原状回復と損害賠償を命じる(260条)
- 控訴審は不服申立てのない部分に限り申立てにより決定で仮執行宣言を付けられ、仮執行による弁済はしん酌しない(294条、最判昭和36年2月9日)

