執行抗告しっこうこうこく
執行抗告とは、民事執行の手続に関する裁判に対する上訴で、特別の定めがある場合に限りすることができます(10条1項)。裁判の告知を受けた日から1週間の不変期間内に、抗告状を原裁判所に提出してします(同条2項)。
執行抗告は、執行裁判所の裁判のうち、法律が「執行抗告をすることができる」と定めたものだけを対象とする不服申立てです。10条1項は、民事執行の手続に関する裁判に対しては、特別の定めがある場合に限り、執行抗告をすることができると定めています。抗告によって手続が引き延ばされることを防ぐため、対象を条文で絞っています。

民事執行法 第10条第1項民事執行の手続に関する裁判に対しては、特別の定めがある場合に限り、執行抗告をすることができる。
期間は告知から1週間で、抗告状は原裁判所に提出します
執行抗告は、裁判の告知を受けた日から1週間の不変期間内に、抗告状を原裁判所に提出してしなければなりません(10条2項)。抗告状に執行抗告の理由の記載がないときは、抗告状を提出した日から1週間以内に理由書を原裁判所に提出しなければならず(同条3項)、提出しないときは原裁判所が執行抗告を却下します(同条5項1号)。執行抗告をしただけでは執行は停止せず、抗告裁判所又は原裁判所が執行の停止などを命ずることができるにとどまります(同条6項)。

民事執行法 第10条第2項執行抗告は、裁判の告知を受けた日から一週間の不変期間内に、抗告状を原裁判所に提出してしなければならない。
執行抗告ができる裁判は、条文ごとに定められています
強制競売の申立てを却下する裁判(45条3項)、債権の差押命令の申立てについての裁判(145条6項)、転付命令の申立てについての決定(159条4項)、代替執行・間接強制の申立てについての裁判(171条5項、172条5項)、売却の許可又は不許可の決定(74条1項)などが、執行抗告の対象として定められています。「不動産の強制競売の申立てを却下する裁判に対しては、執行抗告をすることができる」という肢(R5 午後 問7 エ)は正しい記述です。間接強制決定に対して執行抗告をすることができるとした平成29年の肢も、172条5項により正しいとされています。強制競売の開始決定そのものについては執行抗告の定めがないので、開始決定への不服は執行異議(11条1項)で申し立てます。
民事執行法 第45条第3項強制競売の申立てを却下する裁判に対しては、執行抗告をすることができる。
執行抗告ができない執行処分には、執行異議で不服を申し立てます
執行裁判所の執行処分で執行抗告をすることができないものと、執行官の執行処分及びその遅怠に対しては、執行裁判所に執行異議を申し立てます(11条1項)。執行抗告は上級の裁判所が判断し、執行異議は執行裁判所自身が判断します。不服を申し立てる期間を1週間の不変期間と定めているのは執行抗告です(10条2項)。
民事執行法 第11条第1項執行裁判所の執行処分で執行抗告をすることができないものに対しては、執行裁判所に執行異議を申し立てることができる。執行官の執行処分及びその遅怠に対しても、同様とする。
売却の許可又は不許可の決定には、自己の権利が害されることを主張するときに限り執行抗告ができます
売却の許可又は不許可の決定に対しては、その決定により自己の権利が害されることを主張するときに限り、執行抗告をすることができます(74条1項)。売却許可決定に対する執行抗告は、71条各号の売却不許可事由があること又は売却許可決定の手続に重大な誤りがあることを理由としなければなりません(同条2項)。期間入札で自分が最高の価額で買受けの申出をしたのに、執行官の誤りで入札が無効とされ、他の者が最高価買受申出人と定められた入札人は、売却許可決定によって自己の権利が害される者に当たります。平成25年の肢は、この入札人が売却許可決定に対して執行抗告をすることができるとしており、正しいとされています。
民事執行法 第74条第1項売却の許可又は不許可の決定に対しては、その決定により自己の権利が害されることを主張するときに限り、執行抗告をすることができる。
試験ではこう問われる
- 強制競売の申立てを却下する裁判に対しては執行抗告をすることができる(45条3項。R5 午後 問7 エ ○)
- 執行抗告は、特別の定めがある場合に限りすることができる(10条1項)
- 執行抗告の期間は、裁判の告知を受けた日から1週間の不変期間である(10条2項)
- 間接強制決定に対しては執行抗告をすることができる(172条5項。H29 午後 問7 エ ○・出題当時)
- 執行官の誤りで最高価買受申出人になれなかった入札人は、売却許可決定に対して執行抗告をすることができる(74条1項。H25 午後 問7 イ ○・出題当時)
この用語が問われた肢
不動産の強制競売の申立てを却下する裁判に対しては、執行抗告をすることができる。
解説と関連先例は肢別演習で読めます。

