債権差押命令(審尋・効力の発生・債権証書・差押えの競合)さいけんさしおさえめいれい
債権差押命令とは、金銭債権などに対する強制執行(債権執行)を開始する執行裁判所の命令で、債務者に債権の取立てその他の処分を禁止し、第三債務者に債務者への弁済を禁止します(143条、145条1項)。債務者と第三債務者を審尋しないで発し(145条2項)、差押えの効力は差押命令が第三債務者に送達された時に生じます(同条5項)。
債権差押命令は、債務者が第三者に対して持つ金銭債権(預金債権や給料債権など)を差し押さえるために、執行裁判所が発する命令です。金銭債権に対する強制執行は、執行裁判所の差押命令により開始します(143条)。平成28年には、この点を問う肢が出題され、正しいとされています。

民事執行法 第143条第1項金銭の支払又は船舶若しくは動産の引渡しを目的とする債権(動産執行の目的となる有価証券が発行されている債権を除く。以下この節において「債権」という。)に対する強制執行(第百六十七条の二第二項に規定する少額訴訟債権執行を除く。以下この節において「債権執行」という。)は、執行裁判所の差押命令により開始する。
差押命令は、債務者に処分を、第三債務者に弁済を禁じ、審尋しないで発します
執行裁判所は、差押命令において、債務者に対し債権の取立てその他の処分を禁止し、かつ、第三債務者に対し債務者への弁済を禁止しなければなりません(145条1項)。差押命令は、債務者及び第三債務者を審尋しないで発します(同条2項)。事前に知らせると、債務者が債権を取り立てたり譲渡したりするおそれがあるからです。平成28年には、差押命令は第三債務者を審尋して発しなければならないとした肢が出題され、誤りとされています。差押命令は債務者及び第三債務者に送達しなければならず(同条3項)、差押命令の申立てについての裁判に対しては執行抗告をすることができます(同条6項)。
民事執行法 第145条第2項差押命令は、債務者及び第三債務者を審尋しないで発する。
差押えの効力は、差押命令が第三債務者に送達された時に生じます
差押えの効力は、差押命令が第三債務者に送達された時に生じます(145条5項)。第三債務者が弁済を禁じられたことを知らなければ、差押えの実効性がないからです。債務者への送達の時ではありません。「債権に対する強制執行による差押えの効力は、差押命令が第三債務者に送達された時に生ずる」という肢(R7 午後 問7 イ)は正しい記述です。これに対し、差押債権者が取り立てることができるようになる期間は、債務者に対して差押命令が送達された日から数えます(155条1項)。不動産の強制競売では、差押えの効力は開始決定の債務者への送達又は差押えの登記のうち早い時に生じます(46条1項)。
民事執行法 第145条第5項差押えの効力は、差押命令が第三債務者に送達された時に生ずる。
債権執行の管轄は、債務者の普通裁判籍の所在地の地方裁判所です
債権執行については、債務者の普通裁判籍の所在地を管轄する地方裁判所が、この普通裁判籍がないときは差し押さえるべき債権の所在地を管轄する地方裁判所が、執行裁判所として管轄します(144条1項)。「債権に対する強制執行については、債権者の普通裁判籍の所在地を管轄する地方裁判所が、執行裁判所として管轄する」という肢(R7 午後 問7 ア)は誤りです。執行裁判所は、差し押さえるべき債権の全部について差押命令を発することができますが(146条1項)、差し押さえた債権の価額が差押債権者の債権及び執行費用の額を超えるときは、他の債権を差し押さえてはなりません(同条2項)。
債権証書は、債務者が差押債権者に引き渡さなければなりません
差押えに係る債権について証書があるときは、債務者は、差押債権者に対し、その証書を引き渡さなければなりません(148条1項)。差押債権者が取立てをするのに証書が役立つからです。「差押えに係る貸金債権について借用証書があるときは、債務者は、差押債権者に対し、その借用証書を引き渡さなければならない」という肢(R7 午後 問7 ウ)は正しい記述です。債務者が任意に引き渡さないときは、差押債権者は、差押命令に基づいて、動産の引渡しの強制執行の方法により証書の引渡しを受けることができます(同条2項)。

民事執行法 第148条第1項差押えに係る債権について証書があるときは、債務者は、差押債権者に対し、その証書を引き渡さなければならない。
一部差押えの残余を超えて差押命令が発せられると、各差押えの効力は債権の全部に及びます
債権の一部が差し押さえられ、又は仮差押えの執行を受けた場合において、その残余の部分を超えて差押命令が発せられたときは、各差押え又は仮差押えの執行の効力は、その債権の全部に及びます(149条前段)。債権の全部が差し押さえられた後に、その一部について差押命令が発せられたときも同じです(同条後段)。按分した部分だけに効力が及ぶのではなく、債権全体が各差押えの対象になります。平成28年には、各差押えの効力が及ぶ範囲は債権の全額を各差押債権者の請求債権の額に応じて按分した額に相当する部分になるとした肢が出題され、誤りとされています。第三債務者は、取立訴訟の訴状の送達を受ける時までに残余を超える差押命令の送達を受けたときは、債権の全額に相当する金銭を供託しなければなりません(156条2項)。
民事執行法 第149条第1項債権の一部が差し押さえられ、又は仮差押えの執行を受けた場合において、その残余の部分を超えて差押命令が発せられたときは、各差押え又は仮差押えの執行の効力は、その債権の全部に及ぶ。債権の全部が差し押さえられ、又は仮差押えの執行を受けた場合において、その債権の一部について差押命令が発せられたときのその差押えの効力も、同様とする。
試験ではこう問われる
- 差押えの効力は、差押命令が第三債務者に送達された時に生ずる(145条5項。R7 午後 問7 イ ○)
- 債権執行は、債務者の普通裁判籍の所在地を管轄する地方裁判所が管轄する(144条1項。R7 午後 問7 ア ×)
- 差押えに係る債権に証書があるときは、債務者は差押債権者に引き渡さなければならない(148条1項。R7 午後 問7 ウ ○)
- 差押命令は、債務者及び第三債務者を審尋しないで発する(145条2項。H28 午後 問7 イ ×・出題当時)
- 一部差押えの残余を超えて差押命令が発せられると、各差押えの効力は債権の全部に及ぶ(149条。H28 午後 問7 ウ ×・出題当時)
この用語が問われた肢
債権に対する強制執行については、債権者の普通裁判籍の所在地を管轄する地方裁判所が、執行裁判所として管轄する。
債権に対する強制執行による差押えの効力は、差押命令が第三債務者に送達された時に生ずる。
差押えに係る貸金債権について借用証書があるときは、債務者は、差押債権者に対し、その借用証書を引き渡さなければならない。
解説と関連先例は肢別演習で読めます。

