執行機関(執行裁判所・執行官・裁判所書記官)しっこうきかん
執行機関とは、民事執行を行う機関で、民事執行法は裁判所(執行裁判所)と執行官を定めています(2条)。不動産執行と債権執行は執行裁判所が、動産執行と不動産の明渡しの執行は執行官が行い、差押えの登記の嘱託や配当要求の終期の決定などは裁判所書記官の権限とされています。
執行機関は、民事執行を担う機関です。2条は、民事執行は申立てにより裁判所又は執行官が行うと定めています。裁判所が行う民事執行では、法律の規定により執行処分を行うべき裁判所が執行裁判所となり、執行官が行う執行処分については、その執行官の所属する地方裁判所が執行裁判所となります(3条)。

民事執行法 第2条第1項民事執行は、申立てにより、裁判所又は執行官が行う。
不動産と債権は執行裁判所が、動産と不動産の明渡しは執行官が扱います
不動産の強制競売は執行裁判所の開始決定によって始まり(45条1項)、金銭債権に対する強制執行は執行裁判所の差押命令により開始します(143条)。これに対し、動産執行は執行官の目的物に対する差押えにより開始し(122条1項)、不動産の引渡し又は明渡しの強制執行は、執行官が債務者の占有を解いて債権者に占有を取得させる方法で行います(168条1項)。物を直接つかむ執行は執行官が、権利関係を整理しながら進める執行は執行裁判所が担うという分担です。
民事執行法 第143条第1項金銭の支払又は船舶若しくは動産の引渡しを目的とする債権(動産執行の目的となる有価証券が発行されている債権を除く。以下この節において「債権」という。)に対する強制執行(第百六十七条の二第二項に規定する少額訴訟債権執行を除く。以下この節において「債権執行」という。)は、執行裁判所の差押命令により開始する。
裁判所書記官も、手続の要所で独自の権限を持ちます
強制競売の開始決定がされたときに差押えの登記を嘱託するのは裁判所書記官です(48条1項)。差押債権者の申立ては要りません。「不動産の強制競売の開始決定に係る差押えの登記の嘱託は、裁判所書記官が職権により行う」という肢(R5 午後 問7 オ)は正しい記述です。配当要求の終期を定めるのも(49条1項)、不動産の売却の方法を定めるのも(64条1項)、裁判所書記官です。少額訴訟に係る債務名義による金銭債権に対する強制執行は、執行裁判所が行うほか、申立てにより裁判所書記官が差押処分によって行うこともできます(167条の2第1項・2項)。これらの裁判所書記官の処分に対しては、執行裁判所に異議を申し立てることができると定められています(49条5項、64条6項など)。

民事執行法 第48条第1項強制競売の開始決定がされたときは、裁判所書記官は、直ちに、その開始決定に係る差押えの登記を嘱託しなければならない。
執行裁判所の裁判は口頭弁論を要せず、審尋も必要と認めるときにするのが原則です
執行裁判所のする裁判は、口頭弁論を経ないですることができます(4条)。審尋も、執行処分をするに際し必要があると認めるときに、利害関係を有する者その他参考人を審尋することができるとされています(5条)。強制競売の開始決定について債務者の審尋を義務づける規定はありません。「執行裁判所は、不動産の強制競売の開始決定をする場合には、債務者を審尋しなければならない」という肢(R5 午後 問7 ア)は誤りです。これに対し、代替執行・間接強制の決定(171条3項、172条3項)や譲渡命令等の決定(161条2項)のように、法律が審尋を義務づけている場面もあります。債権の差押命令は、反対に債務者と第三債務者を審尋しないで発すると定められています(145条2項)。
民事執行法 第5条第1項執行裁判所は、執行処分をするに際し、必要があると認めるときは、利害関係を有する者その他参考人を審尋することができる。
試験ではこう問われる
- 強制競売の開始決定をするのに債務者の審尋は要らない(4条・5条。R5 午後 問7 ア ×)
- 強制競売の開始決定に係る差押えの登記の嘱託は、裁判所書記官が申立てを待たずに行う(48条1項。R5 午後 問7 オ ○)
- 金銭債権に対する強制執行は、執行裁判所の差押命令により開始する(143条。H28 午後 問7 ア ○・出題当時)
- 動産執行は執行官の目的物に対する差押えにより開始する(122条1項)
- 代替執行・間接強制の決定では、債務者又は申立ての相手方を審尋しなければならない(171条3項・172条3項)
この用語が問われた肢
執行裁判所は、不動産の強制競売の開始決定をする場合には、債務者を審尋しなければならない。
不動産の強制競売の開始決定に係る差押えの登記の嘱託は、裁判所書記官が職権により行う。
解説と関連先例は肢別演習で読めます。

