不動産執行の方法と強制競売の開始決定(差押えの効力)ふどうさんしっこうのほうほうときょうせいけいばいのかいしけってい
不動産執行は、強制競売又は強制管理の方法により行い、これらは併用することができます(43条1項)。強制競売は執行裁判所の開始決定で始まり、差押えの効力は開始決定が債務者に送達された時に生じますが、差押えの登記がその送達前にされたときは登記がされた時に生じます(46条1項)。
不動産執行には、不動産を売ってその代金から弁済を受ける強制競売と、不動産を売らずに賃料などの収益から弁済を受ける強制管理の2つの方法があります(43条1項)。

民事執行法 第43条第1項不動産(登記することができない土地の定着物を除く。以下この節において同じ。)に対する強制執行(以下「不動産執行」という。)は、強制競売又は強制管理の方法により行う。これらの方法は、併用することができる。
強制競売と強制管理は、併用することができます
43条1項後段は、強制競売と強制管理は併用することができると定めています。強制競売で売却を進めながら、売却までの間の賃料を強制管理で回収することができます。「不動産に対する強制執行の方法は,強制競売と強制管理とがあり,これらの方法は併用することができる」という肢(R3 午後 問7 イ)は正しい記述です。金銭債権についての強制執行では、不動産の共有持分、登記された地上権及び永小作権並びにこれらの権利の共有持分も不動産とみなされます(43条2項)。強制管理の開始決定では、不動産を差し押さえる旨を宣言し、債務者に収益の処分を禁止し、賃借人などの給付義務者に給付の目的物を管理人に交付すべき旨を命じます(93条1項)。
開始決定では差押えを宣言し、債務者の審尋は要りません
執行裁判所は、強制競売の手続を開始するには、強制競売の開始決定をし、その開始決定において、債権者のために不動産を差し押さえる旨を宣言しなければなりません(45条1項)。開始決定は債務者に送達しなければなりません(同条2項)。開始決定の前に債務者を審尋しなければならないとする規定はなく、執行裁判所は必要があると認めるときに審尋することができるにとどまります(5条)。「執行裁判所は、不動産の強制競売の開始決定をする場合には、債務者を審尋しなければならない」という肢(R5 午後 問7 ア)は誤りです。
民事執行法 第45条第1項執行裁判所は、強制競売の手続を開始するには、強制競売の開始決定をし、その開始決定において、債権者のために不動産を差し押さえる旨を宣言しなければならない。
差押えの効力は送達の時に生じ、登記が先ならば登記の時に生じます
46条1項本文は、差押えの効力は強制競売の開始決定が債務者に送達された時に生ずると定め、ただし書で、差押えの登記がその開始決定の送達前にされたときは登記がされた時に生ずると定めています。送達と登記のうち早い方の時点で効力が生じます。「差押えの登記がされる前に不動産の強制競売の開始決定が債務者に送達された場合であっても、差押えの効力は、登記がされた時に生ずる」という肢(R5 午後 問7 ウ)は誤りで、この場合は送達の時に効力が生じます。差押えがされても、債務者は通常の用法に従って不動産を使用し、又は収益することができます(46条2項)。差押えが禁じるのは処分で、住み続けることや賃料を受け取ることまでは妨げません。

民事執行法 第46条第1項差押えの効力は、強制競売の開始決定が債務者に送達された時に生ずる。ただし、差押えの登記がその開始決定の送達前にされたときは、登記がされた時に生ずる。
申立てを却下する裁判には執行抗告、開始決定には執行異議で争います
強制競売の申立てを却下する裁判に対しては、執行抗告をすることができます(45条3項)。「不動産の強制競売の申立てを却下する裁判に対しては、執行抗告をすることができる」という肢(R5 午後 問7 エ)は正しい記述です。開始決定には執行抗告の定めがないので、債務者は執行異議(11条1項)で争います。これに対し、強制管理では、申立てについての裁判に対して執行抗告をすることができると定められています(93条5項)。
民事執行法 第45条第3項強制競売の申立てを却下する裁判に対しては、執行抗告をすることができる。
試験ではこう問われる
- 強制競売と強制管理は併用することができる(43条1項。R3 午後 問7 イ ○)
- 強制競売の開始決定をするのに債務者の審尋は要らない(45条1項・5条。R5 午後 問7 ア ×)
- 開始決定の送達が差押えの登記より先なら、差押えの効力は送達の時に生ずる(46条1項。R5 午後 問7 ウ ×)
- 強制競売の申立てを却下する裁判に対しては執行抗告をすることができる(45条3項。R5 午後 問7 エ ○)
- 差押え後も、債務者は通常の用法に従って不動産を使用・収益できる(46条2項)
この用語が問われた肢
不動産に対する強制執行の方法は,強制競売と強制管理とがあり,これらの方法は併用することができる。
執行裁判所は、不動産の強制競売の開始決定をする場合には、債務者を審尋しなければならない。
差押えの登記がされる前に不動産の強制競売の開始決定が債務者に送達された場合であっても、差押えの効力は、登記がされた時に生ずる。
不動産の強制競売の申立てを却下する裁判に対しては、執行抗告をすることができる。
解説と関連先例は肢別演習で読めます。

