転付命令てんぷめいれい
転付命令とは、差押債権者の申立てにより、支払に代えて券面額で差し押さえられた金銭債権を差押債権者に転付する命令です(159条1項)。転付命令が効力を生ずると、差押債権者の債権及び執行費用は、転付された債権が存する限り、その券面額で、転付命令が第三債務者に送達された時に弁済されたものとみなされます(160条)。
転付命令は、差し押さえた債権そのものを差押債権者に移し、その分だけ請求債権が弁済されたものとして扱う方法です。取立て(155条)では実際に回収した額の限度で弁済の効果が生じるのに対し、転付命令では債権が移った時点で券面額の弁済の効果が生じます。

民事執行法 第159条第1項執行裁判所は、差押債権者の申立てにより、支払に代えて券面額で差し押さえられた金銭債権を差押債権者に転付する命令(以下「転付命令」という。)を発することができる。
転付命令は、差押債権者の申立てにより執行裁判所が発します
執行裁判所は、差押債権者の申立てにより、支払に代えて券面額で差し押さえられた金銭債権を差押債権者に転付する命令を発することができます(159条1項)。平成28年には、この内容の肢が出題され、正しいとされています。転付命令は債務者及び第三債務者に送達しなければならず(同条2項)、申立てについての決定に対しては執行抗告をすることができ(同条4項)、確定しなければ効力を生じません(同条5項)。
民事執行法 第159条第5項転付命令は、確定しなければその効力を生じない。
第三債務者への送達の時までに他の債権者が差押えなどをすると、効力を生じません
転付命令が第三債務者に送達される時までに、転付命令に係る金銭債権について、他の債権者が差押え、仮差押えの執行又は配当要求をしたときは、転付命令はその効力を生じません(159条3項)。転付命令は差押債権者に債権を独占させるので、他の債権者が手続に加わっているときには認められません。送達の時までに競合がなければ、差押債権者は他の債権者に先んじて満足を得ることができます。
民事執行法 第159条第3項転付命令が第三債務者に送達される時までに、転付命令に係る金銭債権について、他の債権者が差押え、仮差押えの執行又は配当要求をしたときは、転付命令は、その効力を生じない。
弁済の効果は、券面額で、第三債務者への送達の時に生じます
転付命令が効力を生じた場合においては、差押債権者の債権及び執行費用は、転付命令に係る金銭債権が存する限り、その券面額で、転付命令が第三債務者に送達された時に弁済されたものとみなされます(160条)。第三債務者が無資力で実際には回収できなくても、弁済の効果は覆らないので、差押債権者は第三債務者の無資力の危険を負います。転付された債権が存在しなかったときは、「金銭債権が存する限り」に当たらないので、弁済の効果は生じません。

民事執行法 第160条第1項転付命令が効力を生じた場合においては、差押債権者の債権及び執行費用は、転付命令に係る金銭債権が存する限り、その券面額で、転付命令が第三債務者に送達された時に弁済されたものとみなす。
給料などの転付命令は、債務者への送達から4週間を経過するまで効力を生じません
差し押さえられた金銭債権が給料などの152条1項各号又は2項の債権である場合には、転付命令は、確定し、かつ、債務者に対して差押命令が送達された日から4週間を経過するまでは、効力を生じません(159条6項)。扶養義務等に係る金銭債権を請求する場合は除かれます。取立ての時期を4週間にした155条2項と同じく、令和元年改正(令和2年4月1日施行)で加わった規定です。
民事執行法 第159条第6項差し押さえられた金銭債権が第百五十二条第一項各号に掲げる債権又は同条第二項に規定する債権である場合(差押債権者の債権に第百五十一条の二第一項各号に掲げる義務に係る金銭債権が含まれているときを除く。)における前項の規定の適用については、同項中「確定しなければ」とあるのは、「確定し、かつ、債務者に対して差押命令が送達された日から四週間を経過するまでは、」とする。
試験ではこう問われる
- 執行裁判所は、差押債権者の申立てにより転付命令を発することができる(159条1項。H28 午後 問7 オ ○・出題当時)
- 第三債務者への送達の時までに他の債権者が差押え・仮差押えの執行・配当要求をすると、転付命令は効力を生じない(159条3項)
- 転付命令は確定しなければ効力を生じない(159条5項)
- 転付命令が効力を生じると、券面額で第三債務者への送達の時に弁済されたものとみなされる(160条)
- 給料などの転付命令は、確定し、かつ債務者への送達の日から4週間を経過するまで効力を生じない(159条6項)

