取り消すことができる行為の追認と法定追認(122条〜125条)とりけすことができるこういのついにんとほうていついにん
取り消すことができる行為の追認とは、取消権者が取消権を放棄して行為を確定的に有効とする意思表示で、追認すると以後取り消すことができなくなります(122条)。法定追認とは、追認をすることができる時以後に取消権者が履行や権利の譲渡などをしたときに、追認したものとみなされることです(125条)。
取り消すことができる契約は、取り消されるまでは有効ですが、いつ取り消されるか分からない状態が続くと、相手方は安心できません。そこで取消権者は、取り消さずにこの契約でよいと決めることができ、これを追認といいます。追認すると以後は取り消せなくなります。ただ、だまされている最中や未成年のうちに追認させても意味がないので、追認は取消しの原因がなくなってからする必要があります。また、成年になってから代金を払うなど、契約を前提にした行動をとれば、追認したものとみなされます。

追認は取消権を放棄することで、取消権者が追認すると、以後はその行為を取り消すことができなくなります
取り消すことができる行為は、120条に規定する者が追認したときは、以後、取り消すことができません(122条)。追認は取消権を放棄する意思表示で、これにより行為の有効が確定します。追認できる者は取消権者と同じで、制限行為能力者本人のほか、その代理人・承継人・同意権者、瑕疵ある意思表示をした者とその代理人・承継人です。保護者が追認すれば取消権そのものが消えるので、本人も以後は取り消せません。被保佐人がした法律行為を代理権のある保佐人が追認したときも同じです(家庭裁判所の審判で代理権を付与された保佐人は120条1項の代理人に当たり、保佐人は同意権者でもあります)。追認があったことを本人が知っていたかどうかは関係がなく、知らなかったとしても本人はもはや取り消せません。
追認は、取消しの原因となっていた状況が消滅し、取消権を有することを知った後にしなければ効力を生じませんが、保護者の追認と保護者の同意を得た追認は例外です
取り消すことができる行為の追認は、取消しの原因となっていた状況が消滅し、かつ、取消権を有することを知った後にしなければ、その効力を生じません(124条1項)。未成年者なら成年に達した後、だまされた者なら詐欺に気づいた後、強迫された者なら畏怖の状態を脱した後でなければ、追認しても有効にならないということです。追認は取消権の放棄なので、取り消せると知らずにした追認は放棄といえないからです。ただし、法定代理人又は制限行為能力者の保佐人若しくは補助人が追認をするときと、成年被後見人を除く制限行為能力者が法定代理人、保佐人又は補助人の同意を得て追認をするときは、状況が消滅した後である必要はありません(同条2項)。親権者の同意を得ずに契約した未成年者は、成年に達するまでは、親権者の同意を得なければ自ら追認できません。成年被後見人は保護者の同意を得ても有効に追認できないので、行為能力者となった後に追認するか、成年後見人が追認することになります。
追認をすることができる時以後に、取消権者が履行・履行の請求・権利の譲渡などをすると、追認したものとみなされます
追認をすることができる時以後に、取り消すことができる行為について、全部又は一部の履行、履行の請求、更改、担保の供与、取り消すことができる行為によって取得した権利の全部又は一部の譲渡、強制執行のいずれかがあったときは、追認をしたものとみなされます(125条)。ただし、異議をとどめたときは追認とはみなされません。これらの行為は契約が有効であることを前提にしたもので、相手方もそれを見て契約が確定したと信じるからです。未成年のときに不動産を買って代金債務を負った者が、成年に達した後に代金を支払えば、全部の履行として追認したものとみなされ、もはや取り消せません。相手方からの履行を受け取った場合も履行に当たり、「BがCの詐欺を理由としてBC間の売買契約を取り消すことができることを知った後、異議をとどめることなくCから売買代金を受領した場合には、Bは、自らの債務を履行する前であっても、Cの詐欺を理由としてBC間の売買契約を取り消すことができない」という肢(R5 問5 ウ)は正しいです。判例は、法定追認は取消権の存在を知っていたかどうかを問わないとしています(大判大正12年6月11日)。もっとも、改正で124条1項が取消権を知ったことを追認の要件にしたので、法定追認にもこれを求める見解が有力です。行為能力者となった後に売買代金債権を他人に譲渡すれば、取得した権利の譲渡として追認したものとみなされます。これに対し、履行の請求は取消権者が請求した場合に限られ、相手方から請求を受けただけでは追認とみなされません(大判明治39年5月17日)。相手方から所有権移転登記手続の請求を受けただけでは、法定追認にはなりません。
- 全部又は一部の履行(1号)取消権者が履行した場合も、相手方の履行を受領した場合も当たります
- 履行の請求(2号)取消権者が請求した場合に限られ、相手方から請求を受けた場合は当たりません
- 更改(3号)取消権者が債権者としてした場合も債務者としてした場合も当たります
- 担保の供与(4号)取消権者が担保を供与した場合も、相手方から担保の供与を受けた場合も当たります
- 取得した権利の譲渡(5号)取消権者が譲渡した場合に限られます
- 強制執行(6号)取消権者が債権者として執行した場合に限られます

確答がなければ追認したものとみなす催告ができるのは制限行為能力者の相手方だけで、詐欺や強迫をした相手方はこの催告ができません
制限行為能力者の相手方は、その者が行為能力者となった後、1か月以上の期間を定めて、取り消すことができる行為を追認するかどうかを確答すべき旨の催告をすることができ、期間内に確答を発しないときは追認したものとみなされます(20条1項)。行為能力の制限は相手方に落ち度がなくても契約を不安定にするので、相手方に法律関係を確定させる手段を与えたのです。これに対し、詐欺や強迫による意思表示については、このような催告権の規定がありません。法律関係を不安定にしたのは詐欺や強迫をした側なので、その者に早く確定させる手段を与える必要はないからです。詐欺や強迫をした相手方が追認するかどうかの催告をしても、確答がないことで追認したものとみなされることはありません。催告の効果の一覧は民法上の催告の一覧の語で扱います。
民法 第122条(取り消すことができる行為の追認)
取り消すことができる行為は、第百二十条に規定する者が追認したときは、以後、取り消すことができない。
民法 第124条第1項取り消すことができる行為の追認は、取消しの原因となっていた状況が消滅し、かつ、取消権を有することを知った後にしなければ、その効力を生じない。
民法 第124条第2項次に掲げる場合には、前項の追認は、取消しの原因となっていた状況が消滅した後にすることを要しない。
一 法定代理人又は制限行為能力者の保佐人若しくは補助人が追認をするとき。
二 制限行為能力者(成年被後見人を除く。)が法定代理人、保佐人又は補助人の同意を得て追認をするとき。
民法 第125条(法定追認)
追認をすることができる時以後に、取り消すことができる行為について次に掲げる事実があったときは、追認をしたものとみなす。ただし、異議をとどめたときは、この限りでない。
一 全部又は一部の履行
二 履行の請求
三 更改
四 担保の供与
五 取り消すことができる行為によって取得した権利の全部又は一部の譲渡
六 強制執行
試験ではこう問われる
- 取消権者が追認すると以後取り消すことができず、法定代理人が追認すれば、本人が追認を知らなくても本人も取り消せない(122条)
- 追認は、取消しの原因となっていた状況が消滅し、取消権を有することを知った後でなければ効力を生じない(124条1項)
- 未成年者は成年に達するまでは、親権者の同意を得なければ自ら追認できない(124条2項2号)
- 詐欺を理由に取り消せると知った後に異議をとどめず相手方から代金を受領すれば、自分の債務の履行前でも法定追認となる(125条1号。R5 問5 ウ ○)
- 成年に達した後の代金の支払や代金債権の譲渡は法定追認となるが、相手方から履行の請求を受けただけでは法定追認とならない(125条、大判明治39年5月17日)
- 追認するかどうかの催告と追認の擬制は制限行為能力者の相手方に限られ、詐欺・強迫による意思表示の相手方には催告権がない(20条)

