司法書士試験AIブートラボ 司法書士試験AIブートラボ

解除権の行使と消滅(540条・544条・547条・548条)かいじょけんのこうしとしょうめつ

民法 第12章 契約総論 過去問で7肢

解除権の行使とは、契約又は法律の規定により解除権を有する当事者が、相手方に対する意思表示によって契約を解除することで、その意思表示は撤回できません(540条)。解除権の消滅とは、相手方の催告に対する不確答(547条)や解除権者による目的物の著しい損傷(548条)などによって解除権が失われることです。

解除権を持つ人は、相手に「契約を解除します」と伝えるだけで契約を終わらせることができます。相手の同意は要りませんが、その分、一度伝えた解除を取り消すことは許されません。相手は解除を前提に動き始めるからです。いつまでも解除するかどうか決めない人に対しては、相手から「解除するのかしないのか、期間内に答えてください」と迫ることができ、返事がなければ解除権は消えます。解除権を持つ人が自分で目的物を壊してしまった場合も、原則として解除権を失います。

郵便局の窓口の場面。先生が売主役(札「解除権者」)で、窓口に内容証明郵便「契約解除通知書」を差し出している。窓口の外で、後ろに並んだ知人の男性が「やっぱり取り消せるの?」と尋ねている。先生の吹き出し「この通知が相手に届けば契約は解除されます

解除は相手方に対する意思表示によってし、一度した解除の意思表示は撤回できません

540条1項は、契約又は法律の規定により当事者の一方が解除権を有するときは、その解除は相手方に対する意思表示によってすると定め、同条2項は、その意思表示は撤回することができないと定めています。解除権は相手方の同意なしに契約を消滅させる形成権なので、撤回を認めると相手方の地位が不安定になり、消えた契約が復活して法律関係が複雑になるからです。解除の意思表示にも意思表示の一般原則が当てはまります。相手方が未成年者のときは、法定代理人がその意思表示を知った後は対抗できます(98条の2ただし書)。相手方が正当な理由なく受取を拒んだときは通常到達すべきであった時に到達したものとみなされ(97条2項)、発送後に表意者が死亡し、又は意思能力を喪失しても効力は妨げられません(97条3項)。「契約を解除する旨の意思表示は、その通知の発信から相手方への到達までの間に表意者が意思能力を喪失したときは、その効力を生じない」という肢(R7 問5 イ)は誤りです。通信システムの不具合で電子メールが届かなかったときは到達がないので、解除の意思表示は効力を生じません。所在を知らない相手方には公示の方法で意思表示ができ、最後に官報に掲載した日などから2週間を経過した時に到達したものとみなされますが、所在を知らないことに過失があれば到達の効力を生じません(98条3項)。「公示による意思表示は、表意者が相手方を知らないこと又はその所在を知らないことについて過失がないときは、最後に官報に掲載した日又はその掲載に代わる掲示を始めた日から 2 週間を経過した時に、相手方に到達したものとみなされる」という肢(R7 問5 エ)は正しいです。公示の手続は、相手方を知ることができない場合は表意者の住所地の、所在を知ることができない場合は相手方の最後の住所地の簡易裁判所の管轄で(98条4項)、「公示による意思表示の公示に関する手続は、表意者の住所地の登記所の管轄に属する」という肢(R7 問5 オ)は誤りです。意思表示の到達そのものは前半の意思表示の語で扱います。

当事者の一方が数人あるときは、解除は全員から又は全員に対してしなければなりませんが、共有物の賃貸借の解除は持分の過半数で決められます

544条1項は、当事者の一方が数人ある場合には、契約の解除はその全員から又はその全員に対してのみすることができると定めています。一つの契約が一部の者との間でだけ消えると、法律関係が複雑になるからです。同条2項により、解除権が当事者のうちの一人について消滅したときは、他の者についても消滅します。賃借人が死亡して複数の相続人が賃借権を共同相続した場合、賃貸人が賃貸借契約を解除するには、相続人全員に対して解除の意思表示をしなければなりません。もっとも、判例は、共有者が共有物を目的とする賃貸借契約を解除することは共有物の管理に関する事項に当たり、544条1項の適用はなく、持分の価格の過半数で決することができるとしています(最判昭和39年2月25日)。共有物の賃貸借契約の解除は、共有者全員でする必要はありません。共有物の管理の要件は前半の共有の語で扱います。

行使期間の定めのない解除権は、相手方の催告に対し期間内に解除の通知がなければ消滅しますが、債務不履行の責任は消えません

547条は、解除権の行使について期間の定めがないときは、相手方は解除権を有する者に対し、相当の期間を定めて、その期間内に解除をするかどうかを確答すべき旨の催告をすることができ、その期間内に解除の通知を受けないときは解除権は消滅すると定めています。解除されるかどうか分からない相手方の不安定な地位を、相手方の側から解消できるようにする趣旨です。ただし、この催告で消えるのは解除権だけで、不履行をした債務者の責任が消えるわけではありません。債権者は、契約を維持したまま履行や損害賠償を請求できます。確答がなかったからといって、債務不履行に陥っていた者が以後の債務不履行責任や損害賠償を免れることはありません。民法上の催告の効果は、催告の一覧の語にまとめています。

家電販売店の事務室の場面。販売店の担当者の男性(札「相手方」)が電話をかけ、受話器の向こうにいる先生(札「解除権者」)に話している。担当者の机の上に書面「2週間以内に、解除するかどうかご回答ください」。2週間後を示す小さなコマで、先生が「返

解除権者が故意や過失で目的物を著しく損傷するなどしたときは解除権を失いますが、解除権を有することを知らなかったときは失いません

548条本文は、解除権を有する者が故意若しくは過失によって契約の目的物を著しく損傷し、若しくは返還することができなくなったとき、又は加工若しくは改造によってこれを他の種類の物に変えたときは、解除権は消滅すると定めています。目的物を自分で損なうことは、解除しないで契約を維持する意思の表れとみられるからです。そう評価できるのは解除権があることを知っている場合に限られるので、同条ただし書は、解除権を有する者がその解除権を有することを知らなかったときは消滅しないとしています。このただし書は令和2年の改正で加わりました。過失で目的物を返還できなくなった場合や著しく損傷した場合でも、解除権を有することを知らなかったときは解除権は消滅しません。

解除権が生じても、行使する前に債務者が遅延賠償とともに履行すれば、もはや解除できません

解除の意思表示がされるまでは、契約はなお存続しています。判例は、債務者が解除される前に遅延賠償とともに債務の本旨に従った履行又は履行の提供をしたときは、解除権は消滅するとしています(大判大正6年7月10日)。履行を受けた債権者には、契約から離れる理由がなくなるからです。催告期間の経過後でも、解除権の行使前に弁済の提供を受けた売主は、これを拒絶して解除することはできません。解除権は時効によっても消滅しますが、債務者が国外にいることは時効の完成猶予の事由ではないので、国外にいる期間も時効は進行します。

民法 第540条

(解除権の行使)
契約又は法律の規定により当事者の一方が解除権を有するときは、その解除は、相手方に対する意思表示によってする。
前項の意思表示は、撤回することができない。

民法 第544条

(解除権の不可分性)
当事者の一方が数人ある場合には、契約の解除は、その全員から又はその全員に対してのみ、することができる。
前項の場合において、解除権が当事者のうちの一人について消滅したときは、他の者についても消滅する。

民法 第547条

(催告による解除権の消滅)
解除権の行使について期間の定めがないときは、相手方は、解除権を有する者に対し、相当の期間を定めて、その期間内に解除をするかどうかを確答すべき旨の催告をすることができる。この場合において、その期間内に解除の通知を受けないときは、解除権は、消滅する。

民法 第548条

(解除権者の故意による目的物の損傷等による解除権の消滅)
解除権を有する者が故意若しくは過失によって契約の目的物を著しく損傷し、若しくは返還することができなくなったとき、又は加工若しくは改造によってこれを他の種類の物に変えたときは、解除権は、消滅する。ただし、解除権を有する者がその解除権を有することを知らなかったときは、この限りでない。

試験ではこう問われる

  1. 解除は相手方に対する意思表示でし、撤回できない(540条)
  2. 解除の意思表示の発信後に表意者が意思能力を喪失しても、効力は妨げられない(97条3項。R7 問5 イ ×)
  3. 公示による意思表示は最後の官報掲載日等から2週間で到達したものとみなされ(98条3項。R7 問5 エ ○)、手続は簡易裁判所の管轄に属する(98条4項。R7 問5 オ ×)
  4. 当事者の一方が数人あるときは全員から又は全員に対して解除するが、共有物の賃貸借の解除は持分の価格の過半数で決められる(544条1項、最判昭和39年2月25日)
  5. 行使期間の定めのない解除権は、催告に対し期間内に解除の通知がなければ消滅するが、債務不履行責任は消えない(547条)
  6. 解除権者が故意・過失で目的物を著しく損傷すれば解除権は消滅するが、解除権を有することを知らなかったときは消滅しない(548条)
  7. 解除権の行使前に遅延賠償とともに履行の提供がされれば解除できない(大判大正6年7月10日)

司法書士試験AIブートラボ

司法書士試験の対策を、
スマホひとつで。

過去問の肢別演習、記述式と雛形ドリル、先例と条文、用語集。司法書士試験の勉強に使う教材をひとつのアプリにまとめました。

関連する用語

契約総論

申込みの撤回・失効と申込者の死亡(523条〜526条)

申込みの撤回とは、申込者が自分のした申込みを将来に向かってなかったことにすることで、承諾期間を定めた申込みは撤回で...
契約総論

解除の要件(催告解除・無催告解除・軽微な不履行・帰責事由不要)

解除の要件とは、債務不履行を理由に契約を解除するために満たすべき条件で、催告による解除(541条)は相当の期間を定...
契約総論

解除の効果(545条・原状回復・使用利益・利息・損害賠償)

解除の効果とは、解除権の行使によって生じる法律効果で、契約は遡って消滅し、各当事者は相手方を原状に復させる義務を負...
法律行為と意思表示

意思表示の到達と効力発生(97条・到達の意義・到達妨害・発信後の死亡と能力喪失)

意思表示の到達とは、意思表示の通知が相手方の了知可能な状態に置かれること、つまり相手方の支配圏内に置かれることで、...
占有権・所有権

共有物の使用・管理・変更(249条〜252条の2・令和3年改正)

共有物の使用・管理・変更とは、共有物の扱いの重さに応じた決め方の規律です。各共有者は持分に応じて全部を使用でき(2...
民法の基礎と権利の主体

民法上の催告の一覧(確答がない場合の効果)

民法上の催告とは、相手方に一定の行為や確答を促す意思の通知のことで、催告に対して期間内に確答や行為がない場合の効果...