婚姻の効力と夫婦財産制(750条〜762条・日常家事債務・夫婦間の時効)こんいんのこうりょくとふうふざいさんせい
婚姻の効力とは、婚姻によって夫婦の間に生じる効果で、夫婦の氏(750条)・同居協力扶助の義務(752条)・夫婦間の権利の時効の完成猶予(159条)などがあり、夫婦財産制とは、夫婦財産契約(755条〜759条)がないときの法定財産制として、婚姻費用の分担(760条)・日常の家事に関する債務の連帯責任(761条)・別産制と共有の推定(762条)を定めるものです。
結婚すると、夫婦は同じ氏を名乗り、同居して協力し合う義務を負います。財産は原則として別々で、結婚前からの財産や自分の名で得た財産は各自のものですが、どちらのものか分からない財産は共有と推定されます。生活費は収入などに応じて分担し、日用品の買い物のような日常の家事の取引で生じた借りは、もう一方も連帯して責任を負います。夫婦の間の権利は、婚姻中に争うのが難しいので、婚姻が終わってから6か月が過ぎるまで時効が完成しません。

夫婦の一方が他方に対して持つ権利は、婚姻の解消の時から6か月を経過するまで時効が完成しません
夫婦の一方が他の一方に対して有する権利については、婚姻の解消の時から6か月を経過するまでの間は、時効は完成しません(159条)。婚姻中に夫婦が互いに時効の完成を妨げる手段をとるのは期待しにくいからです。婚姻が続く限り、夫婦の一方が他方に対して有する債権の消滅時効は完成しません。夫婦間でした契約を婚姻中いつでも取り消せるとした規定(旧754条)は、令和6年の改正で削除されました。この取消権が債権者代位の目的になるかという問いも、現在は成り立ちません。
夫婦の一方が日常の家事に関して第三者と法律行為をすれば他方も連帯して責任を負いますが、責任を負わない旨を予告していれば負いません
夫婦の一方が日常の家事に関して第三者と法律行為をしたときは、他の一方は、これによって生じた債務について、連帯してその責任を負います(761条本文)。ただし、第三者に対し責任を負わない旨を予告した場合は負いません(同条ただし書)。判例は、761条は夫婦が相互に日常の家事に関する法律行為について他方を代理する権限を持つことも定めているとしています(最判昭和44年12月18日)。夫婦の一方は、個別に代理権を授与されていなくても、日常の家事に関する事項について他方のために法律行為をすることができます。日常の家事の範囲を超えた行為と110条の趣旨の類推は、日常家事債務の語で扱います。761条は夫婦の規定なので婚姻していない父母には適用されず、母が子の監護に関してした取引について、父が連帯責任を負うことはありません。

夫婦は婚姻前に夫婦財産契約を結ばなければ法定財産制に服し、各自の財産は特有財産、帰属の分からない財産は共有と推定されます
夫婦が婚姻の届出前にその財産について別段の契約をしなかったときは、法定財産制によります(755条)。法定財産制と異なる契約は、婚姻の届出までに登記をしなければ夫婦の承継人及び第三者に対抗できず(756条)、婚姻の届出後は財産関係を変更できません(758条1項)。法定財産制では、夫婦の一方が婚姻前から有する財産と婚姻中自己の名で得た財産はその特有財産で、夫婦のいずれに属するか明らかでない財産は共有に属するものと推定されます(762条)。「夫婦の一方が婚姻中自己の名で得た財産は、その夫婦の共有に属するものと推定される。」という肢(R7 問20 オ)は誤りです。夫婦は、その資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担します(760条)。婚姻費用の分担は内縁にも準じて認められ、過当に負担した婚姻費用は財産分与で清算できます。
- 750条夫婦は婚姻の際に定めた夫又は妻の氏を称する
- 752条同居・協力・扶助の義務
- 755条〜759条夫婦財産契約。届出までに登記しなければ対抗できず、届出後は変更できない
- 760条婚姻費用の分担
- 761条日常の家事に関する債務の連帯責任。予告で免れる
- 762条特有財産。帰属不明の財産は共有と推定
- 159条夫婦間の権利は婚姻の解消から6か月は時効が完成しない
婚姻しても、配偶者は当然には成年後見人にならず、配偶者の子の親権者にもなりません
家庭裁判所は、後見開始の審判をするときは、職権で成年後見人を選任します(843条1項)。配偶者を当然に後見人とする旧規定は平成11年の改正で廃止されたので、夫婦の一方が後見開始の審判を受けても、他方が成年後見人になるわけではありません。婚姻は配偶者の子との間に親子関係を生じさせず、配偶者の連れ子は一親等の姻族にとどまります。連れ子の親権者になるには養子縁組が必要で(818条3項)、離婚して子Cの親権者となったBがFと婚姻した事例で、「BがFと婚姻して,FがCと養子縁組をした場合には,Cの親権者は,B及びFである。」という肢(R2 問20 エ)は正しいです。婚姻による成年擬制(旧753条)は削除されていますが、婚姻だけでは配偶者の子の親権者にならないという結論は変わりません。
民法 第159条(夫婦間の権利の時効の完成猶予)
夫婦の一方が他の一方に対して有する権利については、婚姻の解消の時から六箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。
民法 第761条(日常の家事に関する債務の連帯責任)
夫婦の一方が日常の家事に関して第三者と法律行為をしたときは、他の一方は、これによって生じた債務について、連帯してその責任を負う。ただし、第三者に対し責任を負わない旨を予告した場合は、この限りでない。
民法 第762条第1項夫婦の一方が婚姻前から有する財産及び婚姻中自己の名で得た財産は、その特有財産(夫婦の一方が単独で有する財産をいう。)とする。
民法 第762条第2項夫婦のいずれに属するか明らかでない財産は、その共有に属するものと推定する。
試験ではこう問われる
- 夫婦間の権利は婚姻の解消から6か月を経過するまで時効が完成しない(159条)
- 日常家事債務は他方も連帯して責任を負うが、責任を負わない旨を予告していれば負わない(761条)
- 761条は夫婦相互の日常家事代理権も定めている(最判昭和44年12月18日)
- 夫婦財産契約は婚姻の届出までに登記しなければ対抗できず、届出後は変更できない(756条・758条1項)
- 婚姻中自己の名で得た財産は特有財産で、帰属の分からない財産だけが共有と推定される(762条。R7 問20 オ ×)
- 婚姻しても配偶者の子の親権者にはならず、配偶者が連れ子と養子縁組をすれば実親と養親が親権者になる(818条3項。R2 問20 エ ○)
- 夫婦間の契約取消権(旧754条)は令和6年改正で削除された

