内縁(準婚理論・不当破棄・死亡解消・居住権・扶養利益)ないえん
内縁とは、婚姻の届出をしていないが、男女が相協力して夫婦としての共同生活を営む結合のことで、判例は婚姻に準ずる関係(準婚関係)として、夫婦の共同生活の実体に基づく規定(760条・761条など)を類推し、不当な破棄に損害賠償を認めますが、届出を前提とする配偶者の相続権や嫡出推定は認めません。
婚姻届を出していなくても、夫婦として一緒に暮らしている男女がいます。これが内縁で、判例は結婚に準じる関係として守っています。生活費の分担や日常の買い物の責任は夫婦と同じに扱い、正当な理由なく一方的に関係を壊せば損害賠償の責任を負います。ただし、相続のように届出で関係をはっきりさせることが前提の制度は内縁には及ばず、内縁の配偶者は相続人になりません。そのため、相手が亡くなったときの住まいや生活をどう守るかが問題になります。

内縁は婚姻に準ずる関係で、正当な理由なく破棄されれば、婚姻予約の不履行と並んで不法行為を理由に損害賠償を請求できます
判例は、内縁は婚姻の届出を欠くため法律上の婚姻とはいえないが、男女が相協力して夫婦としての生活を営む結合である点で婚姻と異ならず、婚姻に準ずる関係(準婚関係)であるとし、内縁を正当な理由なく破棄された者は、相手方に対し婚姻予約の不履行を理由に損害賠償を求めることができるとともに、不法行為を理由に損害賠償を求めることもできるとしています(最判昭和33年4月11日)。内縁を不当に破棄された者は、債務不履行と不法行為のどちらを理由としても損害賠償を請求できます。
夫婦の共同生活の実体に基づく規定は内縁に類推され、婚姻費用の分担と日常家事債務の連帯責任が及びます
同じ判例は、婚姻費用の分担を定める760条は内縁にも準用され、内縁継続中に病気療養のため別居していた間の医療費も婚姻から生ずる費用に準じて分担すべきものとしています(最判昭和33年4月11日)。日常の家事に関する債務の連帯責任(761条)と、そこから導かれる日常家事代理権も、内縁夫婦に類推されます。内縁の夫婦は身分上・生活関係上一体を成す関係にあるので、内縁の夫の過失は、同乗していた内縁の妻の損害賠償額を定めるときに被害者側の過失として考慮できます(最判平成19年4月24日)。内縁の妻が懐胎した子は認知がなければ法律上の父子関係を生じませんが、判例は、内縁成立から200日後又は解消から300日以内に生まれた子について、認知の訴えでは772条を類推して内縁の夫の子と推定するとしています(最判昭和29年1月21日)。内縁の夫が子を認知しても、父母が婚姻していない以上、親権は母が行い、父母の協議で父母の双方又は父を親権者と定めたときに限り父も親権者になります(819条4項)。
内縁配偶者には相続権がなく、一方の死亡による解消には財産分与の規定も類推されません
890条の配偶者は婚姻の届出をした者をいい、内縁配偶者は相続人にならず、配偶者に準ずる相続分も主張できません。生前に内縁が解消したときは財産分与の規定(768条)が類推されますが、判例は、内縁の夫婦の一方の死亡により内縁関係が解消した場合に768条を類推適用することはできないとしています(最決平成12年3月10日)。法律婚では離婚による解消は財産分与、死亡による解消は相続で処理する仕組みになっており、死亡解消に財産分与の法理を持ち込むと相続の制度と矛盾するからです。内縁配偶者は、遺産や建物の所有権について財産分与を請求することもできません。相続人がいないときは、特別縁故者(958条の2)として相続財産の分与を受ける道があります。
- 婚姻費用の分担(760条)類推される(最判昭和33年4月11日)
- 日常家事債務の連帯責任(761条)類推される
- 不当破棄の損害賠償債務不履行・不法行為のいずれでも請求できる
- 生前の解消と財産分与(768条)類推される
- 死亡による解消と財産分与類推されない(最決平成12年3月10日)
- 配偶者の相続権(890条)認められない
- 嫡出推定(772条)及ばない。認知の訴えでは772条を類推して事実上推定(最判昭和29年1月21日)

相手方が死亡した後の住まいは、相続人の賃借権の援用、借地借家法36条、単独使用の合意の推認で守られます
賃借人の内縁の妻は相続人ではないので賃借権を相続しませんが、判例は、賃借人の死亡後はその相続人の賃借権を援用して、賃貸人に対し居住する権利を主張できるとし、相続人と並んで共同賃借人になるのではないとしています(最判昭和42年2月21日)。居住用建物の賃借人が相続人なしに死亡した場合には、事実上夫婦と同様の関係にあった同居者が賃借人の権利義務を承継します(借地借家法36条1項)。相続人がいる場合は、この承継は生じません。判例は、内縁の夫婦がその共有する不動産を居住又は共同事業のために共同で使用してきたときは、特段の事情のない限り、一方が死亡した後は他方がその不動産を単独で使用する旨の合意が成立していたものと推認するとしています(最判平成10年2月26日)。生存した内縁配偶者は、相続人からの建物使用に係る不当利得返還請求を拒むことができます。
内縁配偶者は、相手方を死亡させた加害者に対し、扶養利益の喪失による損害と固有の慰謝料を請求できます
判例は、内縁の配偶者は、他方の配偶者が不法行為で死亡したとき、自己が他方から受けることができた将来の扶養利益の喪失を損害として、加害者に賠償を請求できるとしています(最判平成5年4月6日)。死亡した者に相続人がいても請求できます。また判例は、711条に該当しない者でも、被害者との間に同条所定の者と実質的に同視しうべき身分関係があり、被害者の死亡により甚大な精神的苦痛を受けた者は、同条の類推適用により加害者に直接固有の慰謝料を請求できるとしています(最判昭和49年12月17日)。内縁の配偶者は配偶者と同視できるので、加害者の自分に対する故意過失を証明する必要はありません。
最判昭和33年4月11日民法760条の規定は、内縁に準用されるものと解すべきであり
民法 第760条(婚姻費用の分担)
夫婦は、その資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担する。
民法 第890条(配偶者の相続権)
被相続人の配偶者は、常に相続人となる。この場合において、第八百八十七条又は前条の規定により相続人となるべき者があるときは、その者と同順位とする。
試験ではこう問われる
- 内縁の不当破棄は債務不履行でも不法行為でも損害賠償を請求できる(最判昭和33年4月11日)
- 婚姻費用の分担(760条)と日常家事債務の連帯責任(761条)は内縁に類推される
- 内縁配偶者は相続人にならず、死亡による解消に財産分与の規定は類推されない(890条・最決平成12年3月10日)
- 生前の解消には財産分与の規定が類推され、財産分与を原因とする所有権の移転の登記ができる(768条。R4 午後 問15 ア ×)
- 賃借人の内縁配偶者は相続人の賃借権を援用して居住でき、相続人がいなければ借地借家法36条で賃借人の権利義務を承継する(最判昭和42年2月21日)
- 内縁夫婦の共有建物は、一方の死亡後は他方が単独で使用する合意が推認される(最判平成10年2月26日)
- 内縁配偶者は扶養利益の喪失の賠償と、711条の類推による固有の慰謝料を請求できる(最判平成5年4月6日・最判昭和49年12月17日)

