請負の報酬と仕事の完成・注文者の解除(632条〜634条・641条・642条)うけおいのほうしゅうとしごとのかんせいちゅうもんしゃのかいじょ
請負とは、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対して報酬を支払うことを約する契約です(632条)。報酬は目的物の引渡しと同時に支払い(633条)、注文者は仕事の完成前ならいつでも損害を賠償して解除できます(641条)。
工務店に家を建ててもらう契約が請負です。お金を払うのは仕事が出来上がったからなので、完成した家の引渡しと代金の支払が引換えになります。途中で施主の都合が変わって家が要らなくなったら、施主は工務店の損害を償って契約をやめられます。完成しない仕事を続けさせても誰の得にもならないからです。途中まででも役に立つ部分があれば、その割合に応じて報酬を払います。

報酬は仕事の結果に対して支払うもので、額が具体的に決まっていなくても決め方が定まっていれば契約は成立します
請負は、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって、その効力を生ずる諾成契約です(632条)。報酬の額をその場で具体的に決めておくことは成立の要件ではなく、決定方法が定まっていれば報酬を請求できます。請負人は仕事を完成させる義務を負いますが、自分で労務を提供する義務まではないので、特約や仕事の性質で禁じられない限り下請負人を使えます。注文者の死亡は請負の終了原因ではありません。仕事の完成が目的で、当事者の個人的な信頼関係を基礎にする委任(653条1号)とは違うからです。
引渡しを要する請負では引渡しと報酬の支払が同時履行で、引渡しを要しなければ仕事の完成が先です
報酬は、仕事の目的物の引渡しと同時に支払わなければなりません(633条本文)。物の引渡しを要しないときは、624条1項が準用され、仕事を終わった後でなければ請求できません(633条ただし書)。建物の建築なら、建物を完成させることは先にしなければなりませんが、完成した建物の引渡しと報酬の支払は引換えで、引き渡した後でなければ報酬を請求できないわけではありません。「目的物の引渡しを要する請負契約においては、報酬は、仕事の目的物の引渡しと同時に、支払わなければならない」という肢(R5 問18 ア)は正しいです。引渡しを要しない請負では、仕事の完成が先で、報酬はその後になります。
完成できなくなった場合や完成前に解除された場合は、可分な部分で注文者が受ける利益の割合に応じて報酬を請求できます
注文者の責めに帰することができない事由によって仕事を完成することができなくなったとき、又は請負が仕事の完成前に解除されたときは、請負人が既にした仕事の結果のうち可分な部分の給付によって注文者が利益を受ける限り、その部分を仕事の完成とみなし、請負人は注文者が受ける利益の割合に応じて報酬を請求できます(634条)。請負人の債務不履行で解除された場合も2号に含まれます。「請負契約が仕事の完成前に解除された場合において、請負人が既にした仕事の結果のうち可分な部分の給付によって注文者が利益を受けるときは、請負人は、注文者が受ける利益の割合に応じて報酬を請求することができる」という肢(R5 問18 オ)は正しいです。基準は注文者が受ける利益で、委任の648条3項のような「既にした履行の割合」ではありません。注文者の責めに帰すべき事由で完成できなくなったときは、注文者は報酬の支払を拒めません(536条2項)。完成前に建物が当事者双方の責めに帰することができない事由で滅失しても、完成がなお可能なら請負人の完成義務は残り、新たに建物を完成させなければ請負代金全額の支払は請求できません。

注文者は仕事の完成前ならいつでも損害を賠償して解除でき、請負人にこの解除権はありません
請負人が仕事を完成しない間は、注文者は、いつでも損害を賠償して契約の解除をすることができます(641条)。注文者に要らなくなった仕事を完成させても無意味なので、請負人の損失を償うことを条件に解除を認めたものです。完成した後はこの解除はできず、目的物の引渡し前でも同じです。「目的物の引渡しを要する請負契約においては、請負人が仕事を完成した後であっても、その目的物の引渡しが完了するまでは、注文者は、いつでも損害を賠償して契約を解除することができる」という肢(R5 問18 イ)は誤りです。解除できるのは注文者だけで、請負人にこの任意解除権はありません。判例は、仕事が可分で一部が完成し、その部分が注文者に有益なときは、未完成部分に限って解除できるとしていました(大判昭和7年4月30日、最判昭和56年2月17日)。現行法では、全部を解除しても634条2号で可分な完成部分は仕事の完成とみなされ、利益の割合に応じた報酬が残るので、一部解除という構成をとらなくても同じ結論になります。注文者が破産手続開始の決定を受けたときは、請負人又は破産管財人は契約を解除できます(642条1項)。ただし、請負人からの解除は仕事を完成した後はできません(同項ただし書)。「注文者が破産手続開始の決定を受けたときは、請負人は、仕事を完成した後であっても、報酬の支払がされるまでは、注文者の破産手続開始を理由として請負契約を解除することができる」という肢(R5 問18 ウ)は誤りです。
- 報酬額具体的な額がなくても決め方が定まっていれば成立します
- 支払時期(633条)引渡しと同時。引渡しを要しなければ完成後
- 割合的報酬(634条)注文者の責めに帰することができない事由による不能・完成前の解除で、可分な部分の利益の割合に応じて
- 注文者の責めに帰すべき事由による不能(536条2項)注文者は報酬の支払を拒めません
- 注文者の任意解除(641条)完成前に限り、損害を賠償して。請負人にはありません
- 注文者の破産(642条)請負人又は破産管財人が解除できます。請負人は完成後は不可
- 注文者の死亡終了しません
民法 第632条(請負)
請負は、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。
民法 第633条(報酬の支払時期)
報酬は、仕事の目的物の引渡しと同時に、支払わなければならない。ただし、物の引渡しを要しないときは、第六百二十四条第一項の規定を準用する。
民法 第634条(注文者が受ける利益の割合に応じた報酬)
次に掲げる場合において、請負人が既にした仕事の結果のうち可分な部分の給付によって注文者が利益を受けるときは、その部分を仕事の完成とみなす。この場合において、請負人は、注文者が受ける利益の割合に応じて報酬を請求することができる。
一 注文者の責めに帰することができない事由によって仕事を完成することができなくなったとき。
二 請負が仕事の完成前に解除されたとき。
民法 第641条(注文者による契約の解除)
請負人が仕事を完成しない間は、注文者は、いつでも損害を賠償して契約の解除をすることができる。
試験ではこう問われる
- 引渡しを要する請負では、報酬は目的物の引渡しと同時に支払う(633条本文。R5 問18 ア ○)
- 完成前に解除されたときは、可分な部分の給付で注文者が受ける利益の割合に応じて報酬を請求できる(634条2号。R5 問18 オ ○)
- 注文者の任意解除は仕事の完成前に限られ、完成後は引渡し前でもできない(641条。R5 問18 イ ×)
- 注文者の破産による請負人の解除は、仕事を完成した後はできない(642条1項ただし書。R5 問18 ウ ×)
- 注文者の責めに帰すべき事由で完成できなくなれば、注文者は報酬の支払を拒めない(536条2項)
- 請負人に任意解除権はなく、注文者の死亡で請負は終了しない

