解除の効果(545条・原状回復・使用利益・利息・損害賠償)かいじょのこうか
解除の効果とは、解除権の行使によって生じる法律効果で、契約は遡って消滅し、各当事者は相手方を原状に復させる義務を負い、金銭には受領の時からの利息を、物には受領の時以後の果実を付けて返還し、なお損害があれば賠償を請求できることです(545条)。
売買契約を解除すると、契約ははじめからなかったことになり、売主と買主は受け取ったものをお互いに返し合います。売主が受け取った代金を返すときは、受け取った日からの利息も付けます。買主が品物を返すときは、使っていた間の利益も返します。こうして、契約がなかった状態にできるだけ近づけるのです。それでも損害が残れば、解除した側は損害賠償を請求できます。ただし、賃貸借や委任のように続いてきた契約の解除は、過去にさかのぼらず、将来に向かってだけ効力を生じます。

解除によって契約は遡って消滅し、移転していた所有権は当然に売主に復帰します
判例は、解除によって契約は遡って消滅し、契約に基づいて生じた債権債務ははじめから存在しなかったことになると解しています(直接効果説)。そのため、売買の目的物の所有権は、返還や登記の移転を待たずに当然に遡って売主に復帰します(最判昭和34年9月22日)。545条1項ただし書は、解除によって第三者の権利を害することはできないと定めていますが、ここでいう第三者は、解除された契約から生じた法律効果を基礎として、解除前に新たな権利を取得した者をいいます。解除された契約から生じた債権そのものを譲り受けた者は、これに当たりません(大判明治42年5月14日)。また、債務者は対抗要件具備時までに譲渡人に対して生じた事由をもって譲受人に対抗できるところ(468条1項)、この事由には抗弁権発生の基礎となる事由も含まれます(最判昭和42年10月27日)。債権譲渡の時に解除の原因となる双務契約が存在していれば、その後に解除しても、債務者は代金債権の消滅を譲受人に対抗でき、譲受人は債務者に履行を請求できません。不動産の転得者が解除前か解除後に現れた場合の扱いは、前半の解除と登記の語で扱います。
原状回復では、金銭には受領の時からの利息を付け、物は受領の時以後の果実や使用の利益も返します
545条1項本文は、解除をしたときは各当事者はその相手方を原状に復させる義務を負うと定め、同条2項は、金銭を返還するときはその受領の時から利息を付さなければならないとし、同条3項は、金銭以外の物を返還するときはその受領の時以後に生じた果実をも返還しなければならないとしています。金銭を持っていた間の運用益や物から生じた果実も返させて、契約がなかった状態に戻すためです。利息は、どちらの債務不履行による解除か、受領者が善意か悪意かを問わず付け、代金の一部を返還するときも受領の時からの利息を付けます。判例は、目的物を使用したことによる利益も返還すべきだとし、他人の物の売買が解除された場合も買主は使用利益を返還しなければならないとしました(最判昭和51年2月13日)。相互の原状回復義務は同時履行の関係に立ちます(546条)。「双務契約が解除された場合には、各当事者は、その相手方に対する解除による原状回復義務について、同時履行の抗弁を主張することができない」という肢(R8 問17 エ)は誤りです。

解除しても損害賠償を請求でき、債権者は履行に代わる損害賠償を請求できます
545条4項は、解除権の行使は損害賠償の請求を妨げないと定めています。原状回復だけでは埋まらない損害は、債務不履行の一般原則(415条)によって賠償を請求できます。415条2項3号は、債務が契約によって生じたものである場合に、その契約が解除され、又は債務の不履行による契約の解除権が発生したときは、債務の履行に代わる損害賠償を請求できると定めています。そのため、買主の債務不履行で売買契約を解除した売主は、代金債務の履行に代わる損害賠償を請求できます。手付による解除では545条4項は適用されず(557条2項)、損害賠償は請求できません。
原状回復請求権の消滅時効は、債務不履行の時からではなく、解除の時から進行します
原状回復請求権は解除によってはじめて生じる権利なので、判例は、契約の解除による原状回復請求権の消滅時効は解除の時から進行するとしています(大判大正7年4月13日)。現行法の下では、権利を行使することができることを知った時から5年、権利を行使することができる時から10年で時効が完成しますが(166条1項)、起算点は解除の時です。債務不履行の時や解除権の発生を知った時から数えるのではありません。原状回復義務が履行不能になったことによる損害賠償請求権も、本来の債務が姿を変えたもので同一性を失わないので、その消滅時効は本来の債務である原状回復義務の履行を請求できる時から進行し(最判昭和35年11月1日)、履行不能になった時から進行するのではありません。
賃貸借・雇用・委任・組合の解除は、将来に向かってのみ効力を生じます
620条は、賃貸借の解除をした場合には、その解除は将来に向かってのみその効力を生ずるとし、この場合には損害賠償の請求を妨げないと定めています。雇用(630条)、委任(652条)、組合(684条)にもこの規定が準用されます。継続してきた契約関係を遡って清算すると、すでに済んだ使用や労務の対価まで巻き戻すことになり、かえって不合理だからです。賃貸借が解除されても、契約の時に遡って効力を失うことはありません。「委任の解除をした場合には、その解除は、将来に向かってのみその効力を生ずる」という肢(R8 問19 イ)は正しいです。組合では、組合員は、他の組合員が組合契約に基づく債務の履行をしないことを理由として組合契約を解除することができません(667条の2第2項)。「組合員は、他の組合員が組合契約に基づく債務の履行をしないことを理由として、組合契約を解除することができない」という肢(R6 問19 イ)は正しいです。契約の終了の比較は横断の語にまとめています。
民法 第545条(解除の効果)
当事者の一方がその解除権を行使したときは、各当事者は、その相手方を原状に復させる義務を負う。ただし、第三者の権利を害することはできない。
前項本文の場合において、金銭を返還するときは、その受領の時から利息を付さなければならない。
第一項本文の場合において、金銭以外の物を返還するときは、その受領の時以後に生じた果実をも返還しなければならない。
解除権の行使は、損害賠償の請求を妨げない。
民法 第620条(賃貸借の解除の効力)
賃貸借の解除をした場合には、その解除は、将来に向かってのみその効力を生ずる。この場合においては、損害賠償の請求を妨げない。
試験ではこう問われる
- 解除で契約は遡って消滅し、所有権は当然に遡って売主に復帰する(直接効果説。最判昭和34年9月22日)
- 解除された契約から生じた債権の譲受人は545条1項ただし書の第三者に当たらず、債務者は債権譲渡後の解除による代金債権の消滅を譲受人に対抗できる(大判明治42年5月14日、468条1項)
- 金銭の返還には受領の時からの利息を、物の返還には受領の時以後の果実と使用利益を付ける(545条2項・3項、最判昭和51年2月13日)
- 相互の原状回復義務は同時履行の関係に立つ(546条。R8 問17 エ ×)
- 解除しても損害賠償を請求でき、履行に代わる損害賠償も請求できる(545条4項・415条2項3号)。原状回復請求権の消滅時効は解除の時から進行する(大判大正7年4月13日)
- 賃貸借・雇用・委任・組合の解除は将来に向かってのみ効力を生じる(620条・630条・652条・684条。R8 問19 イ ○)
- 組合員は、他の組合員の債務不履行を理由に組合契約を解除できない(667条の2第2項。R6 問19 イ ○)

