弁済による代位の要件と効果(499条〜501条・原債権と求償権)べんさいによるだいいのようけんとこうか
弁済による代位とは、債務者のために弁済をした者が、債務者に対する求償権の範囲内で、債権者が有していた債権の効力及び担保としての一切の権利を行使できることです(499条・501条)。
保証人が借主の代わりに銀行へ全額を返したとします。保証人は借主に「立て替えた分を返して」と求められますが、借主にお金がなければ回収できません。そこで民法は、返した保証人が銀行の立場に入れ替わり、銀行が持っていた貸金債権や抵当権をそのまま使えるようにしています。これが弁済による代位です。銀行の権利は消えずに保証人へ移り、保証人は借主に求償できる範囲でその権利を行使します。担保を使って立替金を確実に取り戻させるための仕組みです。

債務者のために弁済をした者は債権者の承諾なしに代位し、正当な利益を有しない者だけが債権譲渡と同じ対抗要件を備える必要があります
499条は、債務者のために弁済をした者は債権者に代位すると定めています。平成29年改正前は、弁済をするについて正当な利益を有する者が当然に代位する法定代位(旧500条)と、それ以外の者が債権者の承諾を得て代位する任意代位(旧499条1項)が分かれていましたが、現在はどちらも債権者の承諾は要りません。500条は、正当な利益を有する者が代位する場合を除いて467条を準用するので、正当な利益を有しない者が代位を債務者や第三者に対抗するには、通知又は承諾が必要です。物上保証人は正当な利益を有するので、対抗要件を備えなくても代位した権利を行使でき、旧規定のもとでも法定代位として債権者の承諾は要りませんでした。正当な利益を有しない第三者も、現在は債権者の承諾なしに代位しますが、対抗要件の問題が残ります。後順位抵当権者は先順位の被担保債権を弁済するについて正当な利益を有し、弁済すれば債権者に代位して先順位抵当権を取得します。
代位は求償権を確保するための制度なので、求償権を取得しない者は代位できず、権利の行使は求償できる範囲に限られます
501条1項は、代位した者は債権の効力及び担保としてその債権者が有していた一切の権利を行使できると定め、2項は、その行使は代位者が自己の権利に基づいて債務者に求償できる範囲内(保証人の一人が他の保証人に代位する場合はその保証人に求償できる範囲内)に限るとしています。代位は求償権を確保するための制度なので、求償権を取得しない者は代位できません。債務者自身が自分の債務を弁済しても債権は消滅するだけで、債務者は誰にも求償できないので代位は生じません。連帯債務者の一人が弁済すれば、他の連帯債務者への求償権(442条1項)の範囲で代位します。連帯債務者の一人が債権者を相続して混同が生じた場合も、その連帯債務者は弁済をしたものとみなされる(440条)ので同じく代位します。根抵当権については、元本の確定前に債務者のために弁済をした者は根抵当権を行使できないので(398条の7第1項)、「元本の確定前に,第三者がその時点における被担保債権の全部を債務者のために弁済したときは,その第三者は,弁済した債権について根抵当権を行使することができる」という肢(R3 問14 ア)は誤りです。

代位者が行使する担保権の被担保債権は求償権ではなく原債権で、原債権と求償権は別個の債権として扱われます
判例は、弁済による代位は求償権を確保するために、弁済で消滅するはずの原債権とその担保権を代位者に移転させ、求償権の範囲内で行使させる制度であるとし、代位者が取得した担保権を実行するときの被担保債権は原債権であって求償権ではないとしています(最判昭和59年5月29日)。原債権と求償権は、元本額・弁済期・利息の有無などが異なる別個の債権で、別個に消滅時効にかかります(最判昭和61年2月20日)。保証人と債務者の間で求償権について法定利率を超える遅延損害金の特約をしていれば、原債権の額の範囲内では物上保証人に対してもその特約による求償権の額まで代位でき(最判昭和59年5月29日)、物上保証人との関係で法定利率の範囲に限られるわけではありません。代位弁済の後に債務者が保証人に一部弁済をしたときは、求償権と原債権のそれぞれに弁済があったものとして充当されます(最判昭和60年1月22日)。
代位者が原債権を行使して給付を求める訴訟では、原債権の発生原因事実のほか、求償権の発生原因事実も主張立証しなければなりません
原債権とその担保権は求償権を確保するための附従的なもので、求償権が消滅すれば当然に消滅し、行使は求償権の存する限度に制約されます。そこで判例は、代位弁済者が原債権及び担保権を行使して訴訟で給付又は確認を求めるには、それによって確保される求償権の成立と内容を主張立証しなければならないとしています(最判昭和61年2月20日)。
全部の弁済を受けた債権者は債権証書と自己の占有する担保物を代位者に交付し、一部の代位弁済なら証書に代位を記入します
503条1項は、代位弁済によって全部の弁済を受けた債権者は、債権に関する証書及び自己の占有する担保物を代位者に交付しなければならないと定めています。代位者が質物などの担保を実際に行使できるようにするためです。証書を交付すれば足りるわけではありません。2項は、債権の一部について代位弁済があった場合は、債権者は証書にその代位を記入し、自己の占有する担保物の保存を代位者に監督させなければならないとしています。一部代位の行使と配当の順位、代位者相互の割合は代位者相互の関係の語で扱います。
民法 第499条(弁済による代位の要件)
債務者のために弁済をした者は、債権者に代位する。
民法 第500条第四百六十七条の規定は、前条の場合(弁済をするについて正当な利益を有する者が債権者に代位する場合を除く。)について準用する。
民法 第501条(弁済による代位の効果)
前二条の規定により債権者に代位した者は、債権の効力及び担保としてその債権者が有していた一切の権利を行使することができる。
前項の規定による権利の行使は、債権者に代位した者が自己の権利に基づいて債務者に対して求償をすることができる範囲内(保証人の一人が他の保証人に対して債権者に代位する場合には、自己の権利に基づいて当該他の保証人に対して求償をすることができる範囲内)に限り、することができる。
第一項の場合には、前項の規定によるほか、次に掲げるところによる。
一 第三取得者(債務者から担保の目的となっている財産を譲り受けた者をいう。以下この項において同じ。)は、保証人及び物上保証人に対して債権者に代位しない。
二 第三取得者の一人は、各財産の価格に応じて、他の第三取得者に対して債権者に代位する。
三 前号の規定は、物上保証人の一人が他の物上保証人に対して債権者に代位する場合について準用する。
四 保証人と物上保証人との間においては、その数に応じて、債権者に代位する。ただし、物上保証人が数人あるときは、保証人の負担部分を除いた残額について、各財産の価格に応じて、債権者に代位する。
五 第三取得者から担保の目的となっている財産を譲り受けた者は、第三取得者とみなして第一号及び第二号の規定を適用し、物上保証人から担保の目的となっている財産を譲り受けた者は、物上保証人とみなして第一号、第三号及び前号の規定を適用する。
民法 第503条(債権者による債権証書の交付等)
代位弁済によって全部の弁済を受けた債権者は、債権に関する証書及び自己の占有する担保物を代位者に交付しなければならない。
債権の一部について代位弁済があった場合には、債権者は、債権に関する証書にその代位を記入し、かつ、自己の占有する担保物の保存を代位者に監督させなければならない。
試験ではこう問われる
- 元本の確定前に被担保債権の全部を債務者のために弁済した第三者は、根抵当権を行使できない(398条の7第1項。R3 問14 ア ×)
- 代位弁済を原因とする根抵当権の移転の登記は、その前提として元本の確定の登記を申請する(R3 午後 問22 イ ○)
- 根抵当権者が単独で申請する元本の確定の登記と代位弁済を原因とする根抵当権の移転の登記を、一の申請情報で申請しなければならないわけではない(R5 午後 問15 エ ×)
- 債務者の破産で元本が確定した根抵当権の被担保債権を代位弁済した者が、単独で移転の登記と併せて元本の確定の登記を申請することはできない(R6 午後 問13 イ ×)
- 債務者のために弁済した者は債権者の承諾なしに代位し、正当な利益を有しない者の代位だけ467条の対抗要件が要る(499条・500条)
- 代位で取得した担保権の被担保債権は原債権で、原債権と求償権は別個に時効にかかる(最判昭和59年5月29日・最判昭和61年2月20日)
- 求償権を取得しない者・債務者自身は代位しない。行使は求償できる範囲に限られる(501条2項)

