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第三者の違憲主張適格だいさんしゃのいけんしゅちょうてきかく

憲法 第13章 憲法訴訟・憲法保障 過去問で19肢

第三者の違憲主張適格とは、訴訟の当事者が、自分に適用される法令ではなく第三者に適用される部分の違憲性を主張できるかという問題です。付随的審査制のもとでは自己の権利に関わる限りで違憲を主張するのが原則ですが、第三者所有物没収事件(最大判昭和37年11月28日)のように例外が認められる場合があります。

自分の成績のことで先生に抗議するのは当然ですが、友だちの成績のつけ方がおかしいと自分の話として持ち出すのは筋が違います。裁判でも、当事者は自分の権利に関わる範囲で法令の違憲を主張するのが原則です。ただし、密輸の被告人が、告知も弁解の機会もないまま没収された他人の荷物について違憲を主張した事件では、最高裁判所は例外を認めました。被告人自身にも不利益があり、荷物の持ち主には自分で争う手段がなかったからです。

刑事法廷の場面。先生が裁判官役(札「裁判所」)で法壇に座る。手前に被告人の男性(札「被告人」)が立ち、その足元に「没収」と書かれた深紅の札が付いた荷物の箱がある。法廷の外、扉の向こうに荷物の持ち主の男性(札「第三者(荷物の所有者)」)が小さ

原則として、自己に適用される法令の違憲性のみを主張できます

付随的審査制の目的は個人の権利保護にあります。そこから、他人の権利侵害を持ち出して法令を争うことは筋が違う、という原則が導かれます。もっとも、この原則を裏返して、主張できる争点が当事者の権利に限られると言い切ることはできません。付随的違憲審査制の訴訟で主張できるのが訴訟当事者の権利に限られる、とまではいえません。原則は原則であって、例外を一切認めないという意味ではありません。第三者の憲法上の権利が現実に侵害される場合、その主張を当事者にさせることが適切な状況がありえますし、文面上無効の法理による主張も認められえます。原則を機械的に貫くと、誰も違憲を争えない規定が残ってしまうという不都合が生じます。

  • 原則自己に適用される法令の違憲性のみを主張できる。他人の権利に干渉して救済を求めることは許されない
  • 例外の要件第三者の権利の重要性、当事者と第三者の関係の密接さ、第三者が別に権利を争う手段をもたないことなどを考慮して、例外的に主張を認める

第三者所有物没収事件は、この原則に例外を認めました

最大判昭和37年11月28日(第三者所有物没収事件)は、密輸事件で第三者の所有物が没収された事案について、被告人が第三者の権利を援用して違憲を主張することを認めました。「被告人に対する没収の裁判が第三者の所有物を対象とするものであっても、当該被告人は、当該第三者に対して何ら告知、弁解、防禦の機会が与えられなかったことを理由に当該没収の裁判が違憲であることを主張することができる」という肢(R5 問2 エ)は正しいです。他人の権利に干渉して救済を求めるものだから許されない、という理由づけはとられませんでした。判決は、没収の対象が第三者の所有物であっても、被告人に対する附加刑として言い渡される以上、被告人自身がその違憲性を争う利益をもつとみました。

先生が裁判官役(札「裁判所」)で中央に立ち、両手に天秤を持つ。左の皿に「被告人自身の不利益」の札と、荷物の絵と「占有権原を失う」「持ち主から賠償請求を受ける危険」の小札。右の皿に「第三者に争う手段がない」の札と、扉の外で口を閉じた持ち主の男

例外を支えるのは、第三者が別に争う手段をもたないことです

この事案で例外が認められた理由は二つあります。第一に、被告人は没収によって当該物を占有し使用する権利を失い、また第三者から賠償を求められる可能性があるため、自身の利益が害されるという点です。第二に、第三者は刑事手続の当事者ではなく、自分で告知と聴聞を求める手段をもたないという点です。この二つがそろうことで、他人の権利に干渉するという非難が当たらなくなります。逆にいえば、第三者が自分で争う道をもつ場面では、例外を認める必要がありません。この判決は、31条の保障が行政手続にも及ぶかという議論や、告知と聴聞の機会の保障という論点の出発点にもなっており、違憲主張適格の話だけで終わる判例ではありません。同判決は、第三者に告知、弁解、防御の機会を与えずにその所有物を没収することは31条に違反するとしており、「その機会なくして第三者の所有物を没収することは,適正な法律手続によらないで財産権を侵害する制裁を科することにほかならないから,憲法第 31 条に違反する」という肢(R2 問2 イ)は正しいです。

選挙無効訴訟で他者の選挙権の制限を争うことはできません

最決平成26年7月9日(違憲の争点を提起しうる当事者適格――選挙無効訴訟)は、成年被後見人の選挙権の制限をめぐって、選挙人が公職選挙法204条の訴訟でこれを争えるかを判断しました。決定は、選挙無効訴訟で選挙人らが他者の選挙権の制限に係る規定の違憲を主張して争うことは、法律上予定されていないとしました。選挙無効訴訟は民衆訴訟(行政事件訴訟法5条)であり、法律に定める者が法律に定める場合に限り提起できるもので、選挙の管理執行に関する規定への違反を無効原因として選挙の効力を争う訴訟として法律が設けたものです。そこで他者の選挙権の制限を争うことは法律上予定されていない、という理由づけです。制限を受けた本人が自ら争う道があることも、例外を認めない方向に働きます。第三者所有物没収事件との違いは、当事者自身の不利益があるか、第三者に別の救済手段があるか、という二点に現れています。同じ違憲主張適格の問題でも、訴訟の型によって結論が変わる例です。

投票所の前の場面。先生が裁判官役(札「裁判所」)で立ち、左に「選挙無効訴訟(公職選挙法204条)」と書いた訴状を掲げる選挙人の男性(札「選挙人」)。選挙人の吹き出し「成年被後見人の選挙権を制限する規定は違憲だ。この選挙は無効だと争いたい」。

過度に広汎な規制の文面上無効の主張は、別の枠組みです

表現の自由の分野では、自分の行為が規制されてもやむをえない場合でも、法令が広汎にすぎることを理由に文面上無効を主張できるとされます。これは第三者の権利を援用する場面に似ていますが、根拠は違います。広汎な規制が存在すること自体が萎縮効果を生み、自分を含めた表現活動を縮ませるからです。最判平成19年9月18日は、条例の文言が過度に広汎だと争われた事案で規制の対象を限定的に解釈したうえで、規制目的の正当性、手段の合理性、得られる利益と失われる利益の均衡を検討しました。過度に広汎かどうかは、目的と手段を確定して初めて判定できるからです。第三者の権利の援用と文面上無効の主張は、根拠の異なる別の枠組みです。なお、限定解釈によって規定を救えるのは、規制の対象とそうでないものを区別でき、かつ一般の国民がその規定から具体的場合に規制の対象となるかを判断できる基準を読み取れる場合であり、「表現の自由を規制する法律の規定は、一般の国民が当該規定から具体的場合に当該表現が規制の対象となるかどうかの判断が可能となるような基準を読みとることができない場合であっても、当該規定を限定して解釈することによって規制の対象となるものとそうでないものとを区別することができるときには、違憲無効であるとの評価を免れることができる」という肢(R5 問2 ア)は誤りです。

違憲主張適格は、訴えの適法性ではなく主張の許否の問題です

用語に「適格」とあるため訴訟要件の話と混同しやすいのですが、ここで問われているのは、適法に係属している訴訟の中でどの主張を取り上げるかという問題です。訴えが不適法として却下されるわけではなく、その主張が判断の対象にならないにとどまります。選挙無効訴訟の事案でも、訴え自体は適法に係属しており、他者の選挙権の制限という争点を審理の対象としない、という形で処理されています。訴訟要件の検討とは別に、本案の主張として取り上げられるかを論じることになります。

最大判昭和37年11月28日(第三者所有物没収事件)

第三者の所有物を没収する場合において、その没収に関して当該所有者に対し、何ら告知、弁解、防禦の機会を与えることなく、その所有権を奪うことは、著しく不合理であつて、憲法の容認しないところであるといわなければならない。

試験ではこう問われる

  1. 当事者は原則として自己に適用される法令の違憲性を主張するが、第三者の権利の援用に例外がないわけではない
  2. 第三者の所有物の没収の裁判を受けた被告人は、第三者に告知・弁解・防御の機会がなかったことを理由に違憲を主張できる(最大判昭和37年11月28日。R5 問2 エ ○)
  3. 第三者に告知・弁解・防御の機会を与えずにその所有物を没収することは、31条に違反する(R2 問2 イ ○)
  4. 選挙無効訴訟で、他者の選挙権の制限に係る規定の違憲を争うことは法律上予定されていない(最決平成26年7月9日)
  5. 表現の自由を規制する規定は、限定解釈で規制対象を区別できても、一般の国民がその基準を読み取れなければ違憲の評価を免れない(R5 問2 ア ×)
  6. 違憲主張適格は訴訟要件ではなく、その主張が判断の対象になるかの問題である

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