司法書士試験AIブートラボ 司法書士試験AIブートラボ

違憲判決の効力いけんはんけつのこうりょく

憲法 第13章 憲法訴訟・憲法保障 過去問で10肢

違憲判決の効力とは、最高裁判所がある法令を違憲と判断したとき、その判断が当該事件でその法令を適用しないという効果にとどまるのか、法令そのものが一般的に効力を失うのかという問題です。通説は個別的効力説をとりますが、事実上は一般的効力に近い状態が生じます。

先生が「この校則は生徒手帳の基本方針に反する」と判断してある生徒への処分を取り消したとき、その校則そのものが消えるのか、その生徒に適用しないだけなのかで、他の生徒への扱いが変わります。最高裁判所が法律を違憲と判断した場合も同じ問題があり、通説は当該事件で適用しないだけだとする個別的効力説をとります。ただ実際には行政も国会もその判断に従って動くので、一般的に失効したのに近い状態になります。どこまで遡るのか、どう救済するのかも、ここで問われます。

最高裁判所の法廷の場面。先生が裁判官役(札「最高裁判所 81条」)で法壇に座り、「法律○条」と書かれた紙に深紅の判「違憲」。判の効果を示す二本の矢印。太い矢印は目の前の当事者の男性(札「当該事件の当事者」)へ「この事件では適用しない(個別的

通説は個別的効力説をとります

個別的効力説は、付随的審査制のもとで裁判所は事件の解決に必要な限りで判断するという理解から導かれます。もっとも、この説に立っても、違憲とされた法令が当事者以外との関係で生き続けるわけではありません。最高裁判所が法令を違憲とした判決の効力は当該事件に限られ、違憲と判断された法律は当該事件の当事者との関係でのみ適用を排除される、とするのが個別的効力説です。「最高裁判所によりある法律が違憲無効であると判断された場合には、その法律は、直ちに効力を失う」という肢(R5 問2 イ)は誤りです。その根拠は、付随的審査制のもとでは審査が事件の解決に必要な限りで行われること、法令を一般的に失効させることは法律の廃止と同視され国会を唯一の立法機関とする41条に反する消極的立法になること、憲法にも法律にも一般的効力を定めた規定がないことにあります。法的安定性のために最高裁判所が違憲判断の効力の及ぶ範囲を制限する旨を説示できるという見解は、効力が当該事件に限られていないことを前提にするので、個別的効力説の根拠にはなりません。実際には、行政は違憲とされた規定の適用を控え、国会は改廃に動きますから、事実上は一般的効力に近い状態が生じます。下級裁判所も最高裁の判断に従うのが通例ですから、同種の事件では同じ結論が繰り返されます。個別的効力説の実益は、法令の改廃を国会の手に残す点にあります。

  • 個別的効力説違憲判断の効力は当該事件に限られ、法令は当然には失効しない。付随的審査制と、41条が国会を唯一の立法機関とした趣旨に沿う。通説
  • 一般的効力説違憲と判断された法令は一般的に効力を失う。98条1項の文言と法的安定に沿うが、裁判所が消極的立法を行うことになる
  • 法律委任説どちらの効力を与えるかは法律の定めに委ねられる
先生が憲法の先生役(札「個別的効力説の根拠」)で黒板の前に立ち、黒板に三本の柱「付随的審査制:事件の解決に必要な限りで審査」「41条:一般的失効は消極的立法」「一般的効力を定めた規定がない」が「個別的効力説」の屋根を支える図。黒板の隅に別の

一部違憲という形で、規定の一部だけを無効とすることがあります

最大判平成20年6月4日(国籍法違憲判決)は、国籍法3条1項全体を無効とせず、準正要件の部分だけを違憲無効としました。判決は、日本国民である父から出生後に認知された子について、準正要件を除いた所定の要件を満たせば届出により日本国籍を取得できるとしました。血統主義を補完する出生後の国籍取得制度の趣旨に照らして全部無効とする解釈は採らず、過剰な要件の部分だけを除いて解釈することは、裁判所が新たな要件を創設する立法作用には当たらないとしたのです。「日本国民である父と日本国民でない母との間に出生した子について、父母の婚姻及び父の認知によって嫡出子の身分を取得した子には法務大臣への届出によって日本国籍の取得を認める一方で、日本国民である父から認知されただけの嫡出でない子についてはこれを認めないという区別は、我が国との密接な結び付きを有する者に限り日本国籍を付与するという立法目的との間において合理的関連性を欠き、違憲である」という肢(R4 問2 イ)は正しいです。全部無効とすれば届出による国籍取得の道が閉ざされ、救済にならないという判断が働いています。

先生が最高裁判所の裁判官役(札「最高裁判所 大法廷」)で法壇に座り、机の上に「国籍法3条1項」の条文が書かれた紙。条文の中の「父母の婚姻(準正)」の部分だけに深紅の線が引かれ「この要件のみ違憲無効」の札、残りの部分に「有効:認知+届出で国籍

選挙無効の場面では、事情判決の法理が用いられてきました

定数配分規定を違憲としながら選挙を無効としない処理が、事情判決の法理です。最大判昭和51年4月14日(衆議院議員定数不均衡事件)は、行政事件訴訟法31条1項の事情判決の規定に一般的な法の基本原則に基づく要素が含まれているとして、主文で違法を宣言しつつ請求を棄却しましたが、公職選挙法219条1項が選挙の効力に関する訴訟について同条の準用を明示的に排除していることは正面から認めています。将来効の判決も認められておらず、最大判昭和60年7月17日も主文で選挙の違法を宣言するにとどめており、将来効的な無効判決を認めた判例はありません。学説には将来効判決を認めるべきだという主張がありますが、判例は事情判決の法理で処理しています。

先生が最高裁判所の裁判官役(札「最高裁判所」)で法壇に座り、判決文の主文に「本件選挙は違法である」と深紅で書き、その下に「請求は棄却する(選挙は無効としない)」。左に選挙人の男性(札「選挙人:定数配分は違憲、選挙は無効だ」)。机の上に二枚の

違憲判断の遡及効は、法律関係の安定との調整を受けます

違憲と判断された規定は、判決の時点から無効になるのではなく、もともと違憲だったことになるのが理屈です。そのまま遡及させると、過去に確定した法律関係まで覆りかねません。「嫡出でない子の法定相続分を嫡出子の相続分の 2 分の 1 とする規定は、民法が採用する法律婚の尊重と嫡出でない子の保護との調整を図ったものであり、立法府に与えられた合理的な裁量の限界を超えるものではなく、憲法に違反しない」という肢(R4 問2 エ)は誤りです。最大決平成25年9月4日(嫡出でない子の法定相続分差別違憲決定)は、違憲の判断が遺産分割の審判などで確定的となった法律関係には影響を及ぼさないとして、調整を図りました。いつの時点から違憲であったかを判示することも、この調整の一部です。同決定は、遅くとも当該事案の相続が開始した時点では違憲であったとして、違憲状態の始期を明示しました。遡及の範囲を判決自身が線引きするという手法です。線引きの基準は、関係者の間で法律関係が確定的な段階に至っているかどうかに置かれています。

刑事事件では、再審によって救済されるかが問題になります

違憲とされた規定によって有罪判決が確定していた場合、その救済をどうするかという問題があります。大阪高決平成16年5月10日(違憲判決の効力と再審開始決定)は、この場面を扱った裁判例として知られます。刑事訴訟法の再審事由に違憲判断が直接には挙げられていないため、無罪を言い渡すべき明らかな証拠を新たに発見したときに当たるかという形で議論されます。個別的効力説を前提としても、確定判決の効力をどこまで維持するかは別に検討すべき問題です。刑罰法規が違憲とされた場合には、刑の執行を続けること自体が新たな人権侵害になりますから、救済の必要は民事の場面より強く働きます。

日本国憲法 第98条第1項

この憲法は、国の最高法規であつて、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。

試験ではこう問われる

  1. 通説の個別的効力説では、違憲判断の効力は当該事件に限られ、法律が直ちに効力を失うわけではない(R5 問2 イ ×)
  2. 個別的効力説の根拠は、付随的審査制、41条(裁判所による消極的立法の否定)、一般的効力を定めた規定がないことにある
  3. 国籍法違憲判決(最大判平成20年6月4日)は、準正要件の部分だけを違憲として、認知された子の届出による国籍取得を認めた(R4 問2 イ ○)
  4. 定数配分規定が違憲でも、事情判決の法理により選挙は無効とせず違法の宣言にとどめる(最大判昭和51年4月14日)
  5. 嫡出でない子の法定相続分の規定は違憲とされ(最大決平成25年9月4日。R4 問2 エ ×)、その判断は確定的となった法律関係には影響しない

司法書士試験AIブートラボ

司法書士試験の対策を、
スマホひとつで。

過去問の肢別演習、記述式と雛形ドリル、先例と条文、用語集。司法書士試験の勉強に使う教材をひとつのアプリにまとめました。

関連する用語

憲法訴訟・憲法保障

違憲審査制の性格(81条)と仕組み

違憲審査制の性格とは、憲法81条が定める、法令その他の国家行為が憲法に適合するかを裁判所が審査する制度が、具体的な...
憲法訴訟・憲法保障

憲法判断の方法(回避・合憲限定解釈・適用違憲)

憲法判断の方法とは、違憲の疑いのある法令をめぐって、裁判所が憲法判断そのものを避ける憲法判断の回避、意味を限定して...
参政権と選挙

選挙訴訟と事情判決の法理

選挙訴訟とは、選挙の効力に関する争いを裁判で解決する手続で、選挙人または公職の候補者が高等裁判所に提起する客観訴訟...
憲法訴訟・憲法保障

判例の拘束力と判例変更

判例の拘束力とは、先に示された最高裁判所の判断が後の裁判をどこまで縛るかという問題で、判例に法律上の拘束力はなく事...