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株主総会の決議の省略と報告の省略かぶぬしそうかいのけつぎのしょうりゃくとほうこくのしょうりゃく

会社法・商法 第6章 株主総会 過去問で3肢

株主総会の決議の省略とは、取締役又は株主が株主総会の目的である事項について提案をした場合に、その提案につき議決権を行使できる株主の全員が書面又は電磁的記録により同意の意思表示をしたときに、その提案を可決する旨の株主総会の決議があったものとみなす制度です(会社法319条1項)。報告の省略とは、取締役が株主の全員に報告すべき事項を通知し、報告を要しないことに株主の全員が書面又は電磁的記録で同意したときに、報告があったものとみなす制度です(320条)。

株主が数人しかいない会社で、全員が賛成している議案のためにわざわざ会場を借りて総会を開くのは無駄です。そこで会社法は、提案に対して議決権のある株主全員が書面やメールで同意すれば、総会を開かなくても決議があったものとみなす仕組みを用意しました。これが決議の省略です。報告事項も、全員に通知して全員が「報告は要らない」と同意すれば、報告があったものとみなされます。全員の同意が要るのは、総会を開けば質問や説明の機会があるのに、それを無くして決めるからです。一人でも反対や無回答の株主がいれば、総会を開くしかありません。

小さな会社の事務室の場面。先生が取締役役(札「取締役」)で机の上に書面「提案書 定款変更の件」と、その横に並んだ4通の返信「同意書 株主A」「同意書 株主B」「同意書 株主C」「同意書 株主D」を置いている。壁の株主名簿に株主は4人。4通の

決議の省略は、提案につき議決権を行使できる株主の全員が書面又は電磁的記録で同意したときに決議があったものとみなす制度です

取締役又は株主が株主総会の目的である事項について提案をした場合において、その提案につき株主(その事項について議決権を行使できる者に限る)の全員が書面又は電磁的記録により同意の意思表示をしたときは、その提案を可決する旨の株主総会の決議があったものとみなされます(319条1項)。提案は取締役からでも株主からでもでき、同意は書面か電磁的記録によることが要ります。口頭の同意では足りません。議決権を行使できない株主の同意は要りません。特別決議や特殊の決議を要する事項でも、全員の同意があればこの方法で決議できます。会社は、決議があったものとみなされた日から10年間、同意の書面又は電磁的記録を本店に備え置き、株主と債権者は営業時間内はいつでも閲覧・謄写を請求でき、親会社の社員は裁判所の許可を得て請求できます(319条2項〜4項)。定時株主総会の目的事項のすべてについての提案を可決する旨の決議があったものとみなされた場合には、その時に定時株主総会が終結したものとみなされます(319条5項)。計算書類の承認(438条)や公告(440条)の起算点になるからです。株主総会の決議の省略には定款の定めは要りません。取締役会の決議の省略(370条)が定款の定めを要し、監査役会には決議の省略を定めた規定がないのと違います。

招集手続の省略や書面による議決権行使とは、総会を開くかどうかが違います

決議の省略は、株主総会を開催しないで決議があったものとみなす制度です。これに対し、招集手続の省略(300条)は、株主全員の同意があるときに招集の通知などの手続を経ないで総会を開くもので、総会そのものは開きます。書面による議決権行使(298条1項3号)は、開かれる総会に出席しない株主が書面で議決権を行使するもので、これを定めても総会の開催は省けません。三つはいずれも株主の意思を簡便に反映する仕組みですが、全員の同意で総会自体を省くのは決議の省略だけです。決議の省略をした場合も、法務省令の定めにより、その旨と決議があったものとみなされた事項を記載した株主総会の議事録を作成します。

教室の場面。先生が教壇に立ち、黒板に3列の表。見出しは左から「招集手続の省略(300条)」「書面による議決権行使(298条1項3号)」「決議の省略(319条)」。行「総会を開くか」の欄に、左から「開く(通知なしで)」「開く(出席しない株主が

報告の省略は、取締役が株主の全員に通知し、報告を要しないことに全員が書面又は電磁的記録で同意したときに報告があったものとみなします

取締役が株主の全員に対して株主総会に報告すべき事項を通知した場合において、その事項を株主総会に報告することを要しないことにつき株主の全員が書面又は電磁的記録により同意の意思表示をしたときは、その事項の株主総会への報告があったものとみなされます(320条)。事業報告の内容の報告(438条3項)や会計監査人設置会社での計算書類の内容の報告(439条)がこの対象です。決議の省略が議決権を行使できる株主の全員の同意であるのに対し、報告の省略は株主の全員の同意です。報告は議決権の有無にかかわらず株主全員が受ける情報だからです。取締役会への報告の省略(372条)は、取締役・監査役の全員に通知すれば同意なしに報告を要しないとされ、監査役会への報告の省略(395条)も監査役の全員に通知すれば足りる点で、株主総会の報告の省略より簡単です。

株主総会・取締役会・監査役会の省略の違い

  • 株主総会の決議の省略(319条): 議決権を行使できる株主の全員の書面等による同意。定款の定めは不要
  • 取締役会の決議の省略(370条): 議決に加わることができる取締役の全員の書面等による同意に加え、定款の定めが要る。監査役設置会社では監査役が異議を述べないことも要る
  • 監査役会: 決議の省略を定めた規定は無い
  • 株主総会の報告の省略(320条): 株主の全員への通知と全員の書面等による同意
  • 取締役会(372条)・監査役会(395条)の報告の省略: 全員への通知だけで足り、同意は要らない
会社法 第319条第1項

取締役又は株主が株主総会の目的である事項について提案をした場合において、当該提案につき株主(当該事項について議決権を行使することができるものに限る。)の全員が書面又は電磁的記録により同意の意思表示をしたときは、当該提案を可決する旨の株主総会の決議があったものとみなす。

会社法 第320条

(株主総会への報告の省略)
取締役が株主の全員に対して株主総会に報告すべき事項を通知した場合において、当該事項を株主総会に報告することを要しないことにつき株主の全員が書面又は電磁的記録により同意の意思表示をしたときは、当該事項の株主総会への報告があったものとみなす。

会社法 第319条第5項

第一項の規定により定時株主総会の目的である事項のすべてについての提案を可決する旨の株主総会の決議があったものとみなされた場合には、その時に当該定時株主総会が終結したものとみなす。

試験ではこう問われる

  1. 決議の省略は、提案につき議決権を行使できる株主の全員の書面又は電磁的記録による同意で、決議があったものとみなす(319条1項)。提案は取締役からでも株主からでもよい
  2. 定款の定めは要らない。取締役会の決議の省略(370条)は定款の定めが要る
  3. 同意の書面等は10年間本店に備え置き、株主・債権者が閲覧できる(319条2項・3項)
  4. 定時株主総会の目的事項のすべてについてみなし決議があれば、その時に定時株主総会が終結したものとみなす(319条5項)
  5. 書面投票を定めても総会の開催は省けない。総会を開かずに済むのは決議の省略だけ
  6. 報告の省略は、株主の全員への通知と全員の書面等による同意(320条)。取締役会・監査役会の報告の省略は通知だけで足りる

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