決議無効確認の訴えと決議不存在確認の訴え(判決の効力)けつぎむこうかくにんのうったえとけつぎふそんざいかくにんのうったえ
決議無効確認の訴えとは、株主総会の決議の内容が法令に違反することを理由として、決議が無効であることの確認を訴えをもって請求するものです(会社法830条2項)。決議不存在確認の訴えとは、決議が存在しないことの確認を訴えをもって請求するもので(830条1項)、どちらも確認の利益がある限り誰でもいつでも提起でき、被告は会社で、請求を認容する確定判決は第三者に対しても効力を持ちます(834条16号・838条)。
決議の中身そのものが法律に反する場合(株主平等の原則に反する配当など)や、そもそも総会が開かれていないのに議事録だけがある場合は、3か月で争えなくなる取消しの仕組みにはなじみません。そこで、決議の内容の法令違反は無効確認の訴え、決議の実体がない場合は不存在確認の訴えで、期限なく誰でも争えるようにしています。株主の大半に招集通知を送らずに身内だけで開いた総会のように、手続の欠けが著しいときも不存在です。そして、不存在の決議で選ばれた取締役が次の総会を招集しても、その総会の決議もまた不存在になります。

無効確認の訴えは決議の内容が法令に違反する場合の訴えで、出訴期間の制限がありません
株主総会等の決議については、決議の内容が法令に違反することを理由として、決議が無効であることの確認を訴えをもって請求することができます(830条2項)。無効事由は決議の内容の法令違反に限られ、決議の内容の定款違反や、招集手続・決議方法の法令違反は取消事由です(831条1項)。無効確認の訴えには出訴期間の制限がなく、原告の資格も限定されていませんが、確認の訴えなので確認の利益が要ります。決議の無効は訴えによらずに主張することもできますが、訴えで争うときは会社の組織に関する訴えとして被告と判決の効力が法定されます。無効確認の訴えには裁量棄却がなく、無効確認の訴えで主張された瑕疵が実は取消事由であるときは、取消しの訴えの要件を満たしていれば期間後の取消請求の追加も適法です。
招集通知の漏れが著しいときは不存在確認の訴えを提起でき、不存在の決議で選ばれた取締役が招集した総会の決議も不存在です
株主総会等の決議については、決議が存在しないことの確認を訴えをもって請求することができます(830条1項)。総会が開かれていないのに議事録だけが作られたような物理的な不存在だけでなく、手続の瑕疵が著しく、社会通念上およそ株主総会の決議があったと評価できない場合も不存在に当たります。招集通知の漏れは通常は招集手続の法令違反として取消事由にとどまりますが、判例は、株主9名のうち6名に通知をせず代表取締役の親子3名だけで開いた総会の決議について、法律上決議が存在するとはいえないとしました(最判昭和33年10月3日)。取締役を選任する総会の決議が不存在の場合、その取締役によって構成される取締役会で選任された代表取締役が、その取締役会の招集決定に基づいて総会を招集しても、判例は、全員出席総会に当たるなどの特段の事情がない限り、その総会の決議も不存在であるとしています(最判平成2年4月17日)。招集権限のない者が招集した総会は総会として成立しないからで、瑕疵は後の決議に連鎖します。株式を共同相続した共同相続人の1人が、権利行使者の指定と会社への通知(106条)を欠いたまま共有者として決議不存在確認の訴えを提起するときは、判例は、特段の事情がない限り原告適格を認めません(最判平成2年12月4日)。会社自身が決議があったものとして登記までしている場合は、会社が権利行使者の指定の欠缺を主張して争うのは信義則に反するとして特段の事情が認められます。

被告は会社で管轄は本店の所在地の地方裁判所に専属し、認容判決は第三者にも効力が及びますが棄却判決は及びません
決議無効確認の訴えと決議不存在確認の訴えはいずれも会社の組織に関する訴えで、被告はその株式会社です(834条16号)。決議の存在を主張している株主や、決議で選任された取締役を被告にすることはできません。管轄は被告となる会社の本店の所在地を管轄する地方裁判所に専属し(835条1項)、支店の所在地には提起できません。会社の組織に関する訴えに係る請求を認容する確定判決は、第三者に対してもその効力を有します(838条)。会社をめぐる多数の利害関係人の間で決議の効力を画一的に確定するためで、取消しの訴えも無効確認の訴えも不存在確認の訴えも同じです。これに対し、請求を棄却する確定判決に対世効を認める規定はなく、その既判力は当事者間にしか及びません(民事訴訟法115条1項1号)。他の株主は改めて同じ決議を争えます。「株主総会決議無効確認の訴えに係る請求を棄却する確定判決は,第三者に対しても,その効力を有する」という記述と、「株主総会決議取消しの訴えに係る請求を棄却する確定判決は,第三者に対しても,その効力を有する」という記述は誤りで、「株主総会決議の取消しの訴えに係る請求を認容する確定判決は,第三者に対してもその効力を有するが,その請求を棄却する確定判決は,第三者に対してはその効力を有しない」という記述と、決議の取消し・無効・不存在の判決は839条の将来効の対象ではないので、決議の効力は初めから失われます。
三つの訴えの比較
- 取消しの訴え(831条): 招集手続・決議方法の法令定款違反又は著しい不公正、決議内容の定款違反、著しく不当な決議。株主等が3か月以内。裁量棄却あり
- 無効確認の訴え(830条2項): 決議内容の法令違反。誰でもいつでも。確認の利益が要る。裁量棄却なし
- 不存在確認の訴え(830条1項): 決議の実体がない、手続の瑕疵が著しい。誰でもいつでも。確認の利益が要る
- 共通: 被告は会社(834条16号・17号)、本店所在地の地裁の専属管轄(835条1項)、認容判決に対世効(838条)、棄却判決は当事者間のみ
会社法 第830条第2項株主総会等の決議については、決議の内容が法令に違反することを理由として、決議が無効であることの確認を、訴えをもって請求することができる。
会社法 第834条第1項第16号株主総会等の決議が存在しないこと又は株主総会等の決議の内容が法令に違反することを理由として当該決議が無効であることの確認の訴え 当該株式会社
会社法 第838条(認容判決の効力が及ぶ者の範囲)
会社の組織に関する訴えに係る請求を認容する確定判決は、第三者に対してもその効力を有する。
試験ではこう問われる
- 無効確認の訴えは決議内容の法令違反(830条2項)。内容の定款違反・決議方法の法令違反は取消しの訴え
- 無効確認・不存在確認の訴えに出訴期間は無い。確認の利益がある限り誰でも提起できる
- 招集通知の漏れが著しいときは不存在確認の訴えを提起できる(最判昭和33年10月3日)
- 不存在の選任決議で選ばれた取締役の取締役会が選んだ代表取締役が招集した総会の決議も、特段の事情がない限り不存在(最判平成2年4月17日)
- 共同相続人が権利行使者の指定・通知なしに不存在確認の訴えを提起するのは特段の事情がない限り原告適格なし(最判平成2年12月4日)
- 被告は会社(834条16号)。決議の存在を主張する株主は被告にできない。管轄は本店所在地の地裁に専属(835条1項)
- 認容判決は第三者にも効力が及ぶ(838条)。棄却判決は及ばない。不存在確認も同じ

