株式の分割と株式無償割当てかぶしきのぶんかつとかぶしきむしょうわりあて
株式の分割とは、1株を2株にするように既存の株式を細分化して同じ種類の株式の数を増やすことで、株主総会(取締役会設置会社では取締役会)の決議で割合と基準日・効力発生日・種類を定めて行います(会社法183条)。株式無償割当てとは、株主に新たに払込みをさせないで会社の株式を割り当てることで、株主の有する株式と異なる種類の株式を割り当てることもできます(185条)。
株価が高くなりすぎて買いにくいとき、1株を2株に分けて株式の数を増やすのが株式の分割です。株主の持株数は一律に増え、出資は増えないので持株比率も会社の財産も変わりません。似た仕組みに、株主に払込みをさせずに株式を配る株式無償割当てがあります。こちらは持っている株式とは別の種類の株式を配ることや、会社が持つ自己株式を配ることができる一方、会社自身が持つ自己株式には配りません。どちらも取締役会の決議でできますが、発行可能株式総数との関係で分割にだけ定款変更の特則が置かれています。

株式の分割は取締役会の決議でできる普通の手続で、同じ種類の株式が一律に増え、自己株式の数も増えます
会社は、株式の分割をしようとするときは、その都度、株主総会(取締役会設置会社では取締役会)の決議で、分割により増加する株式の総数の分割前の発行済株式の総数に対する割合と基準日、効力発生日、種類株式発行会社では分割する株式の種類を定めます(183条2項)。基準日の株主は、効力発生日に、基準日に有する株式の数に割合を乗じた数の株式を取得します(184条1項)。株式の併合がその都度の株主総会の特別決議を要するのと違い、分割は株主に不利益が無いので要件が軽く、取締役会設置会社では取締役会の決議で行えます。決議事項に基準日があるのは分割で、併合ではありません。分割は株主の有する株式と同じ種類の株式が一律に増える仕組みなので、株主の有する株式と異なる種類の株式を取得させることはできず、会社が有する自己株式の数も分割の割合に応じて増えます。分割では新たな株式を生じさせるので自己株式を株主に交付することはできません。発行済株式の総数は増えますが、出資は無いので資本金の額は変わりません。
株式の分割では、現に2以上の種類の株式を発行していない限り、株主総会の決議なしに発行可能株式総数を割合の範囲で増やせます
分割で発行済株式の総数が増えると発行可能株式総数(113条)を超えてしまうことがあります。本来、発行可能株式総数を増やす定款変更は株主総会の特別決議によりますが(466条・309条2項11号)、分割の割合と同じ範囲で増やすだけなら既存株主の持株比率は変わらないので、現に2以上の種類の株式を発行している会社を除き、会社は株主総会の決議によらないで、効力発生日における発行可能株式総数をその前日の発行可能株式総数に分割の割合を乗じた数の範囲内で増やす定款変更ができます(184条2項)。発行可能株式総数1,000株・発行済株式300株の会社が1株を5株に分割するなら、5,000株まで株主総会の決議なしに増やせるので4,000株にすることもできます。現に2以上の種類の株式を発行している会社はこの特則を使えないので、「現に 2 以上の種類の株式を発行している取締役会設置会社がそのうち 1 の種類の株式の分割をする場合には、株式の分割の効力発生と同時に当該株式の分割に係る分割比率を超えない範囲内で発行可能株式総数を増加する定款の変更の決議をした取締役会の議事録を添付して、当該発行可能株式総数の変更の登記を申請することができる」という肢(R4 午後 問29 エ)は誤りです。株式無償割当てにはこの特則が無いので、発行可能株式総数を超えるときは株主総会の決議で定款を変更しなければなりません。

株式無償割当ては異なる種類の株式を割り当てることができ、自己株式には割り当てず、自己株式を交付することができます
会社は、株主に新たに払込みをさせないで会社の株式を割り当てる株式無償割当てをすることができます(185条)。その都度、株主に割り当てる株式の数又はその算定方法、効力発生日、種類株式発行会社では割当てを受ける株主の有する株式の種類を、株主総会(取締役会設置会社では取締役会)の決議で定めます(186条1項・3項。定款で別段の定めができます)。割り当てる株式の種類は株主の有する株式と違ってもかまいません。割当ては「当該株式会社以外の株主」の有する株式の数に応じて行うので(186条2項)、会社の自己株式には割り当てられず、自己株式の数は増えません。その反面、割り当てる株式には新たに発行する株式のほか会社が有する自己株式を使うことができます。割当てを受けた株主は効力発生日に株主になり、会社は効力発生日後遅滞なく割り当てた数を通知します(187条)。払込みが無いので資本金は増えず、資金調達の方法にはなりません。
分割でも無償割当てでも1株に満たない端数は生じ得ます
1株を1.5株にする分割や、2株につき1株を割り当てる無償割当てでは、株主の持株数によって1株に満たない端数が生じます。分割で生じた端数は235条1項により、無償割当てで生じた端数は234条1項3号により、端数の合計数に相当する数の株式を競売するなどして代金を株主に交付します。
株式の分割と株式無償割当ての異同
- 決議: どちらも株主総会(取締役会設置会社では取締役会)の決議(183条2項・186条3項)
- 増える株式の種類: 分割は同じ種類だけ。無償割当ては異なる種類も可
- 自己株式: 分割では自己株式の数も増える。無償割当ては自己株式に割り当てないが、自己株式を交付できる
- 発行可能株式総数: 分割は現に2以上の種類を発行していなければ株主総会の決議なしに割合の範囲で増やせる(184条2項)。無償割当てには特則が無い
- 基準日: 分割は決議事項(183条2項1号)。無償割当ては定めなくてよい
- 端数: どちらも生じ得る(235条1項・234条1項3号)。資本金の額: どちらも変わらない
会社法 第184条第2項株式会社(現に二以上の種類の株式を発行しているものを除く。)は、第四百六十六条の規定にかかわらず、株主総会の決議によらないで、前条第二項第二号の日における発行可能株式総数をその日の前日の発行可能株式総数に同項第一号の割合を乗じて得た数の範囲内で増加する定款の変更をすることができる。
会社法 第186条第2項前項第一号に掲げる事項についての定めは、当該株式会社以外の株主(種類株式発行会社にあっては、同項第三号の種類の種類株主)の有する株式(種類株式発行会社にあっては、同項第三号の種類の株式)の数に応じて同項第一号の株式を割り当てることを内容とするものでなければならない。
試験ではこう問われる
- 株式の分割は株主総会の普通決議により、取締役会設置会社では取締役会の決議で行い、決議事項には基準日がある(183条2項)
- 分割では同じ種類の株式が一律に増えて自己株式の数も増え、異なる種類の株式や自己株式を株主に取得させることはできない(184条1項)
- 分割に伴い株主総会の決議なしに発行可能株式総数を割合の範囲で増やせるのは、現に2以上の種類の株式を発行していない会社に限られる(184条2項。R4 午後 問29 エ ×)
- 株式無償割当てにはこの特則が無く、発行可能株式総数を超えるときは株主総会の決議で定款を変更する
- 株式無償割当ては異なる種類の株式を割り当てられ、自己株式には割り当てず、自己株式を交付できる(185条・186条2項)
- 分割でも無償割当てでも1株未満の端数が生じ得る(235条1項・234条1項3号)
- どちらも払込みが無いので資本金の額は変わらない(445条1項)

