株式の併合かぶしきのへいごう
株式の併合とは、数個の株式を合わせてそれより少ない数の株式にすることで、会社はその都度、株主総会の特別決議で併合の割合・効力発生日・併合する株式の種類・効力発生日における発行可能株式総数を定めて行います(会社法180条・309条2項4号)。株主は効力発生日に、その前日に有する株式の数に併合の割合を乗じた数の株式の株主になります(182条1項)。
10株を1株にまとめるように、株式の数を減らすのが株式の併合です。株式の数が減るだけで会社の財産は動きませんが、5株しか持たない株主は1株未満の端数になって株主の地位を失うので、少数株主を締め出す手段にもなります。そこで会社法は、併合をその都度の株主総会の特別決議事項とし、取締役に理由の説明を求め、違法な併合をやめるよう請求する権利と、端数になる株式を公正な価格で買い取ってもらう権利を株主に与えています。株式の数を増やすだけの株式の分割にはこれらが無く、取締役会の決議でできる点と対比されます。

株式の併合はその都度の株主総会の特別決議によるので、株式の分割とは決議要件が違い、定款で取締役会に委ねることはできません
会社は、株式の併合をしようとするときは、その都度、株主総会の決議で、併合の割合、効力発生日、種類株式発行会社では併合する株式の種類、効力発生日における発行可能株式総数を定めなければならず(180条2項)、この決議は特別決議です(309条2項4号)。取締役はこの株主総会で併合を必要とする理由を説明しなければなりません(180条4項)。「取締役は、株式の併合に関する事項を定める株主総会において、株式の併合をすることを必要とする理由を説明しなければならない」という肢(R6 問29 イ)は正しいです。併合の割合について下限を定めた規定は無く、「株式の併合における併合の割合は、法務省令で定める一定の割合を下回ることはできない」という肢(R6 問29 ア)は誤りです。株式の分割は株主総会の普通決議(取締役会設置会社では取締役会の決議)でできるので(183条2項)、決議要件が違います。会社法が株主総会の決議事項と定めた事項を取締役会が決められるとする定款の定めは効力を有しないので(295条3項)、取締役会の決議で併合できる旨を定款で定めることもできません。決議事項に基準日は含まれません。株主は効力発生日にその前日に有する株式の数に割合を乗じた数の株主になるので、権利者は法律上定まっているからです。会社は効力発生日の2週間前(端数が生ずる併合では20日前)までに株主と登録株式質権者に決議事項を通知するか公告します(181条・182条の4第3項)。
効力発生日に発行可能株式総数の定款変更をしたものとみなされ、公開会社では発行済株式の総数の4倍を超えられません
併合で発行済株式の総数が減ると、定款の発行可能株式総数がそのままでは取締役会が発行できる株式の枠が実質的に広がり、既存株主の持株比率が薄まるおそれがあります。そこで決議で効力発生日における発行可能株式総数を定めさせ、公開会社ではそれが効力発生日の発行済株式の総数の4倍を超えてはならないとしています(180条3項)。併合をした会社は、効力発生日に、この定めに従って発行可能株式総数に係る定款の変更をしたものとみなされます(182条2項)。併合によって発行済株式の総数は減りますが、資本金の額は払込みを受けた財産の額として定まる計算上の数額(445条1項)なので変わりません。株券発行会社は、効力発生日以後遅滞なく併合した株式の株券を発行します(215条2項)。

法令・定款に違反する併合は差止めを請求でき、端数が生ずる併合では反対株主が端数の買取りを請求できます
株式の併合が法令又は定款に違反する場合に株主が不利益を受けるおそれがあるときは、株主は会社に対し併合をやめることを請求できます(182条の3)。株式の分割にはこのような差止請求の規定はありません。併合により1株に満たない端数が生ずる場合には、反対株主(総会に先立って反対を通知し総会でも反対した株主と、議決権を行使できない株主)は、端数となる株式の全部を公正な価格で買い取ることを請求できます(182条の4第1項・2項)。請求は効力発生日の20日前の日から前日までにし(同条4項)、会社の承諾がなければ撤回できません(同条6項)。価格は協議で定め、効力発生日から30日以内に協議が調わなければその後30日以内に裁判所に価格の決定を申し立てることができます(182条の5)。株式の分割には買取請求権はありません。買取請求に応じて支払った金銭が分配可能額を超えたときは業務執行者が超過額を支払う義務を負います(464条1項)。これらの差止請求と買取請求は平成26年改正で新設されたもので、買取請求の対象は端数となる株式であり、保有する株式の全部ではありません。
締出しの手段として使うときは特別決議が要り、端数の合計は競売か裁判所の許可を得て売却します
支配株主が少数株主を締め出すには、少数株主の持株がすべて1株未満になる割合で株式を併合する方法があります。全部取得条項付種類株式の取得と同じく株主総会の特別決議が要り、特別支配株主の株式等売渡請求と違って株主総会の決議を省けません。併合で生じた端数は、その合計数に相当する数の株式を競売して代金を端数に応じて株主に交付するのが原則で(235条1項)、市場価格のある株式は市場価格で、市場価格のない株式は裁判所の許可を得て競売以外の方法で売却でき、その許可の申立ては取締役が2人以上あるときは全員の同意によります(235条2項・234条2項)。「株式会社は、株式の併合をすることにより株式の数に一株に満たない端数が生ずる場合において、当該株式について市場価格がないときは、その端数の合計数に相当する数の株式を競売以外の方法によって売却することはできない」という肢(R6 問29 ウ)は誤りです。併合をする会社は決議事項などを記載した書面を本店に備え置き(182条の2)、効力発生後は併合に関する事項を記載した書面を6か月間備え置いて株主の閲覧に供します(182条の6)。
株式の併合と株式の分割の違い
- 決議: 併合は株主総会の特別決議(180条2項・309条2項4号)。分割は普通決議、取締役会設置会社では取締役会(183条2項)
- 決議事項: 併合は割合・効力発生日・種類・効力発生日の発行可能株式総数。分割は割合と基準日・効力発生日・種類
- 発行可能株式総数: 併合は決議で定め効力発生日に定款変更をしたものとみなす(182条2項)。分割は現に2以上の種類を発行していなければ株主総会の決議なしに増やせる(184条2項)
- 差止請求と買取請求: 併合にはある(182条の3・182条の4)。分割には無い
- 資本金の額: どちらも変わらない。発行済株式の総数は併合で減り、分割で増える
会社法180条2項・3項株式会社は、株式の併合をしようとするときは、その都度、株主総会の決議によって、次に掲げる事項を定めなければならない。
一 併合の割合
二 株式の併合がその効力を生ずる日(以下この款において「効力発生日」という。)
三 株式会社が種類株式発行会社である場合には、併合する株式の種類
四 効力発生日における発行可能株式総数
3 前項第四号の発行可能株式総数は、効力発生日における発行済株式の総数の四倍を超えることができない。ただし、株式会社が公開会社でない場合は、この限りでない。
会社法 第182条の4第1項株式会社が株式の併合をすることにより株式の数に一株に満たない端数が生ずる場合には、反対株主は、当該株式会社に対し、自己の有する株式のうち一株に満たない端数となるものの全部を公正な価格で買い取ることを請求することができる。
試験ではこう問われる
- 株式の併合はその都度の株主総会の特別決議により、株式の分割とは決議要件が違い、取締役会の決議で併合できる旨を定款で定めることもできない(180条2項・309条2項4号・295条3項)
- 取締役は併合を必要とする理由を説明しなければならず、併合の割合に下限の規定は無い(180条4項。R6 問29 イ ○、R6 問29 ア ×)
- 決議事項は割合・効力発生日・種類・効力発生日の発行可能株式総数で、基準日は定めない(180条2項)
- 公開会社では効力発生日の発行可能株式総数は発行済株式の総数の4倍までで、効力発生日に定款変更をしたものとみなす(180条3項・182条2項)
- 法令・定款違反で不利益を受けるおそれがあれば差止めを請求でき、端数が生ずる併合では反対株主が端数の買取りを請求できる(182条の3・182条の4)
- 端数の合計は競売か、市場価格のない株式は裁判所の許可を得て競売以外の方法で売却でき、許可の申立ては取締役全員の同意による(235条・234条2項。R6 問29 ウ ×)
- 現に2以上の種類の株式を発行している会社は種類ごとに異なる割合で併合でき、その内容で変更の登記を申請できる(180条2項3号。R4 午後 問29 ウ ○)

