名義書換(不当拒絶と名義書換未了の株主)めいぎかきかえ
名義書換とは、株式を取得した者の氏名又は名称と住所を株主名簿に記載又は記録することで、株式取得者は会社に対して株主名簿記載事項の記載を請求できます(会社法133条1項)。株式の譲渡は名義書換をしなければ会社(株券を発行しない会社ではその他の第三者にも)に対抗できません(130条)。
株式を買っても、株主名簿の名前を自分に書き換えてもらわなければ、会社は前の持ち主を株主として扱い続けます。これが名義書換で、会社に対して「私が株主です」と主張するための要件です。ただし、この仕組みは多数の株主を相手にする会社の事務を楽にするためのものなので、会社の側から書換え前の買主を株主と認めることはできますし、会社が不当に書換えを拒んでおいて「名簿に無いから株主ではない」と言うことは許されません。買主が書換えを忘れている間に売主が配当を受け取ってしまったら、売主は買主にそれを返さなければなりません。

名義書換は会社の便宜のための対抗要件なので、会社の側から名義書換未了の譲受人を株主として扱うことができます
株式の譲渡は、取得者の氏名又は名称と住所を株主名簿に記載又は記録しなければ、会社その他の第三者に対抗できません(130条1項)。株券発行会社では、株券の交付が譲渡の効力要件なので、名義書換は会社に対する対抗要件にとどまります(同条2項)。「株券発行会社の株式の譲渡は、その株式を取得した者の氏名又は名称及び住所を株主名簿に記載し、又は記録しなければ、当該株券発行会社その他の第三者に対抗することができない」という肢(R4 問28 イ)は誤りです。株式取得者は、原則として名簿上の株主と共同して名義書換を請求します(133条)。この対抗要件は、多数の株主を画一的に処理するという会社の事務処理の便宜のために設けられたもので、名義書換が無いことを主張できる利益は会社の側にあります。そこで判例は、株式の移転は株主名簿に記載しなければ会社に対抗できないが、会社の側から移転があったことを主張することは妨げないとし、株主名簿の書換えが何らかの都合で遅れていても、会社が譲渡を認めて譲受人を株主として取り扱うことを妨げないとしています(最判昭和30年10月20日)。基準日が定められた権利についても、会社は譲渡を認めて譲受人に行使させることができます。
会社が正当な事由なく名義書換を拒み、又は過失で書換えをしなかったときは、譲受人を株主として扱わなければなりません
会社が自ら名義書換を拒んでおきながら、名簿に記載が無いことを理由に譲受人の株主としての地位を否定するのは、自分の義務違反で生じた状態を都合よく使うもので信義則に反します。判例は、正当の事由なくして株式の名義書換請求を拒絶した会社は、その書換えの無いことを理由としてその譲渡を否認できず、譲受人を株主として取り扱うことを要するとし、この理は会社が過失により名義書換請求に応じなかった場合にも同様に当てはまるとしました(最判昭和41年7月28日)。この場合、会社は名簿上の譲渡人を株主として扱うこともできません。

譲受人が名義書換を失念している間に譲渡人が受けた配当金や分割新株の売却代金は、譲渡人が譲受人に不当利得として返還します
株券発行会社で基準日の前に株券が交付されて株式が譲渡されたのに、譲受人が基準日までに名義書換を請求しなかった場合(いわゆる失念株)、会社は基準日の名簿上の株主である譲渡人に配当を支払えば足り、その支払は有効です。しかし、株式は株券の交付によって当事者間では譲受人に移っている(128条1項)ので、配当を受ける実質的な利益は譲受人に帰属し、譲渡人が受け取った配当金は譲受人との関係では法律上の原因を欠きます。判例は、譲渡人は譲受人に対し受領した配当金相当額の金員について不当利得返還義務を負うとしています(最判昭和37年4月20日)。株式の分割で譲渡人が新株式を取得して第三者に売却した場合も同じで、判例は、法律上の原因なく利得した代替性のある物を第三者に売却した受益者は、損失者に対し原則として売却代金相当額の金員の不当利得返還義務を負うとしました(最判平成19年3月8日)。これに対し、旧法下の株主割当ての新株引受権については、判例は、割当てを受けるのは株主名簿上の株主であって、名義人が自己の権利として新株を取得したとして、実質上の株主からの請求を認めませんでした(最判昭和35年9月15日)。
会社法 第130条(株式の譲渡の対抗要件)
株式の譲渡は、その株式を取得した者の氏名又は名称及び住所を株主名簿に記載し、又は記録しなければ、株式会社その他の第三者に対抗することができない。
株券発行会社における前項の規定の適用については、同項中「株式会社その他の第三者」とあるのは、「株式会社」とする。
最判昭和41年7月28日(会社の過失による名義書換の未了と株式譲渡人の地位)正当の事由なくして株式の名義書換請求を拒絶した会社は、その書換のないことを理由としてその譲渡を否認し得ないのであり、従って、このような場合には、会社は株式譲受人を株主として取り扱うことを要し、株主名簿上に株主として記載されている譲渡人を株主として取り扱うことを得ない。そして、この理は会社が過失により株式譲受人から名義書換請求があったのにかかわらず、その書換をしなかったときにおいても、同様であると解すべきである。
試験ではこう問われる
- 名義書換は会社に対する対抗要件で、株券を発行しない会社ではその他の第三者に対する対抗要件にもなる(130条1項)
- 株券発行会社では株券の交付が譲渡の効力要件で、株主名簿の記載は会社に対する対抗要件にとどまる(128条1項・130条2項。R4 問28 イ ×)
- 相続により譲渡制限株式を取得した者は、会社の承認なしに名義書換を請求できる(134条4号。R7 問28 オ ×)
- 会社の側から名義書換未了の譲受人を株主として扱うことはできる(最判昭和30年10月20日)
- 会社が正当な事由なく名義書換を拒んだとき、過失で書換えをしなかったときは、名義書換が無いことを理由に譲渡を否定できない(最判昭和41年7月28日)
- 名義書換の失念中に譲渡人が受領した配当金は、譲渡人が譲受人に不当利得として返還する(最判昭和37年4月20日)
- 名義書換の失念中に譲渡人が株式の分割で得た新株式を売却したときは、売却代金相当額を不当利得として返還する(最判平成19年3月8日)

