遺産分割による所有権更正いさんぶんかつによるしょゆうけんこうせい
法定相続分で相続登記をした後に遺産分割などで相続人の一人が所有権を取得したとき、持分移転登記ではなく所有権更正登記で登記名義を整える扱いです。令和5年の通達で単独申請が認められた点が突かれます。
遺産分割による所有権更正は、令和5年3月28日民二第538号通達で明確にされた登記の形です。法定相続分による相続登記の後に、遺産分割、相続放棄、特定財産承継遺言、相続人に対する遺贈で相続人の一人が所有権を取得したとします。その相続人は、登記権利者として単独で所有権更正登記を申請できます。従来は他の相続人を登記義務者とする持分移転登記か、錯誤による更正登記の共同申請が必要でした。相続登記の申請義務化に合わせて手続が軽くなった分、原因・申請人・承諾・税額の4点で肢が作られます。
不動産登記法 第66条第1項権利の変更の登記又は更正の登記は、登記上の利害関係を有する第三者(権利の変更の登記又は更正の登記につき利害関係を有する抵当証券の所持人又は裏書人を含む。以下この条において同じ。)の承諾がある場合及び当該第三者がない場合に限り、付記登記によってすることができる。

登記原因は遺産分割で、錯誤ではありません
更正登記の登記原因は「年月日遺産分割」で、日付は遺産分割協議が成立した日です。「甲土地をBの単独所有とする所有権の更正の登記の登記原因は錯誤になります」という肢は誤りです。相続放棄なら「年月日相続放棄」、特定財産承継遺言や相続人に対する遺贈なら「年月日特定財産承継遺言」「年月日遺贈」というように、取得の原因をそのまま書きます。遺産分割や放棄の場合は最初の登記が間違っていたのではなく後から実体が変わった、遺言の場合は当初から実体と食い違っていた、と事情は分かれますが、通達はどちらも取得の原因をそのまま書く扱いにしました。錯誤を原因とする更正登記は、最初の登記が申請時点で実体と違っていた場合に使う別の形です。
所有権を取得した相続人が単独で申請できます
通達の前は、更正登記は登記上不利益を受ける他の相続人を登記義務者とする共同申請でした。通達後は、遺産分割で所有権を取得した相続人が登記権利者として単独で申請でき、「Bが、単独で申請することができます」という肢は正しい肢です。他の相続人を登記義務者として扱わないので、その登記識別情報や、義務者として申請書に押す印鑑証明書は要りません。ただし登記原因証明情報として提供する遺産分割協議書には、協議書の真正を示すために他の協議者の印鑑証明書を添えます。相続放棄なら相続放棄申述受理証明書を提供します。持分が減る相続人が申請人に加わることも妨げられませんが、必須ではありません。
登記上の利害関係人がいれば承諾を証する情報が要ります
更正登記は付記登記でするため、登記上の利害関係を有する第三者がいるときは、その承諾を証する情報を提供しなければなりません。法定相続分の登記の後に所有権全部を目的とする抵当権が設定されていれば、その抵当権者の承諾が要ります。「当該抵当権の抵当権者の承諾を証する情報を提供しなければなりませんか」に「はい」と答える肢は正しい肢です。承諾が得られないときは、従来どおり持分移転登記によることになります。持分を失う相続人の持分だけを目的とする抵当権があれば、更正で抵当権が消えるので承諾は不可欠です。
登録免許税は1個1,000円で、登記識別情報は通知されます
更正登記の登録免許税は不動産1個につき1,000円で、「所有権の更正の登記の登録免許税の額は、不動産の個数1個につき1000円である」という肢は正しい肢です。持分移転登記なら移転する持分の価額の1000分の4がかかるので、更正登記の方が低くなる場合が多くなります。更正登記によって新たに持分を取得する相続人には登記識別情報が通知されるので、「登記識別情報は通知されません」という肢は誤りです。更正で持分が減る相続人には通知されません。
従来の持分移転登記も引き続きできます
通達は更正登記の道を開いただけで、遺産分割を原因とする持分移転登記を禁じたわけではありません。調停調書に持分移転登記手続をする旨の記載があれば、判決による登記として取得者が単独で持分移転登記を申請できます。抵当権者の承諾が得られない場合や、持分の一部だけが動く場合には、持分移転登記の方が適しています。どちらの形を選んでも、登記原因の日付は遺産分割が成立した日で、相続開始日ではありません。
民法 第909条第1項遺産の分割は、相続開始の時にさかのぼってその効力を生ずる。ただし、第三者の権利を害することはできない。
試験ではこう問われる
- 法定相続分の登記後に遺産分割があったときの更正登記の登記原因は何か(遺産分割)
- その更正登記は誰が申請できるか(取得した相続人が単独で)
- 抵当権者など登記上の利害関係人の承諾が要るか(要る)
- 登録免許税はいくらか(不動産1個につき1,000円)
- 登記識別情報は通知されるか(持分が増える相続人に通知される)
この用語が問われた肢
【問】それでは、当該事例において、甲土地をBの単独所有とする所有権の更正の登記を申請する場合について考えていきましょう。当該所有権の更正の登記の登記原因は何になりますか。 登記原因は錯誤になります。
【問】当該所有権の更正の登記は、誰から申請することができますか。 Bが、単独で申請することができます。
【問】では、当該事例において、法定相続分での相続登記がされた後に、甲土地の所有権全部を目的として抵当権の設定の登記がされた場合において、当該所有権の更正の登記の申請をするときは、添付情報として当該抵当権の抵当権者の承諾を証する情報を提供しなければなりませんか。 はい、当該承諾を証する情報を提供しなければなりません。
【問】最後に、当該事例において、所有権の更正の登記が申請され、その登記が完了した場合には、当該登記の登記権利者に登記識別情報が通知されますか。 いいえ、登記識別情報は通知されません。
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