極度額の変更(増額・減額)きょくどがくのへんこう
根抵当権の担保する枠である極度額を契約で増やしたり減らしたりする変更で、利害関係を有する者の承諾がなければできません。承諾が効力要件である点と、登記の形や原因日付が承諾で決まる点が肢の軸です。
極度額の変更は、根抵当権が担保する上限額を契約で変える変更です。債権の範囲や債務者の変更と違って、極度額は後順位者や設定者が引き当てにしている枠そのものなので、利害関係を有する者の承諾を得なければ変更できません。増額なら後順位の抵当権者や差押債権者、減額なら転抵当権者などが利害関係人で、承諾は効力要件なので契約の後に承諾がされた場合の登記原因の日付は承諾の日になります。元本の確定前後を問わずできる点も、確定前に限られる債権の範囲の変更との違いです。肢では、承諾の位置づけ、原因日付、登記の形、通知の有無が問われます。
民法 第398条の5(根抵当権の極度額の変更)
根抵当権の極度額の変更は、利害関係を有する者の承諾を得なければ、することができない。

利害関係人の承諾が効力要件で、原因日付は承諾の日になります
極度額の変更契約が先に結ばれ、唯一の利害関係人の承諾がその後にされたときは、承諾の日に変更の効力が生じるので、登記原因の日付は承諾の日です。「唯一の利害関係人の承諾がその契約の後にされたときは、極度額の増額による根抵当権の変更の登記の申請情報として提供する登記原因の日付は、当該利害関係人の承諾の日である」という肢は正しい肢です。承諾が契約より前にされていれば契約の日が原因日付です。承諾を証する情報は登記原因証明情報の一部として提供し、変更の登記は常に付記登記でされます。
増額でも減額でも登記の形は付記登記です
変更の登記は、登記上の利害関係を有する第三者の承諾があるときは付記登記で、承諾がないときは主登記でされるのが原則です。しかし極度額の変更は承諾が効力要件なので、承諾がない状態で登記されることがありません。したがって主登記でされる場合はなく、常に付記登記です。「根抵当権の極度額の変更の登記は、主登記によってされる場合と付記登記によってされる場合とがある」という肢は誤りです。
増額の変更で後順位者は利害関係人になります
極度額を増額すると、後順位の抵当権者や根抵当権者、差押債権者、所有権の仮登記権利者などは配当を受ける枠が減るので、登記上の利害関係を有する第三者です。順位の変更で後順位に下がっている根抵当権の極度額を増額するときも、その根抵当権より後順位になった権利者の承諾が要ります。一方、増額の変更の登記が完了しても、根抵当権者は新たに登記名義人となるわけではないので登記識別情報は通知されません。「極度額を増額する根抵当権の変更の登記を完了したときは、当該登記の申請人であるBに対して登記識別情報は通知されない」という肢は正しい肢です。
増額の予約を保全する仮登記にも利害関係人の承諾が要ります
極度額の増額の予約を原因とする根抵当権の変更請求権を保全する仮登記も、付記登記でするには登記上の利害関係人の承諾を証する情報が要ります。承諾に代えて、その者に対抗できる裁判があったことを証する情報でも足ります。仮登記であっても付記登記でされる以上、利害関係人の承諾を欠いたままではできません。「当該仮登記につき登記上の利害関係を有するAの承諾を証するAが作成した情報又はAに対抗することができる裁判があったことを証する情報の提供がない場合であっても、付記登記によってすることができる」という肢は誤りです。本登記の段階でも、極度額の変更の効力要件として改めて承諾が要ります。
不動産登記法 第66条(権利の変更の登記又は更正の登記)
権利の変更の登記又は更正の登記は、登記上の利害関係を有する第三者(権利の変更の登記又は更正の登記につき利害関係を有する抵当証券の所持人又は裏書人を含む。以下この条において同じ。)の承諾がある場合及び当該第三者がない場合に限り、付記登記によってすることができる。
試験ではこう問われる
- 極度額の変更に利害関係人の承諾は要るか(要る。効力要件)
- 契約の後に承諾がされたとき登記原因の日付はいつか(承諾の日)
- 極度額の変更の登記は主登記でされることがあるか(ない。常に付記登記)
- 増額の変更登記で根抵当権者に登記識別情報は通知されるか(されない)
- 増額の予約による変更請求権保全の仮登記に利害関係人の承諾は要るか(要る。対抗できる裁判でもよい)
この用語が問われた肢
元本の確定前の根抵当権について、根抵当権者と根抵当権設定者が極度額を増額する旨の契約を行った場合において、唯一の利害関係人の承諾がその契約の後にされたときは、極度額の増額による根抵当権の変更の登記の申請情報として提供する登記原因の日付は、当該利害関係人の承諾の日である。
Aを所有権の登記名義人とする甲不動産について,Bを根抵当権者とする根抵当権の設定の登記がされている場合において,当該根抵当権の極度額を増額する根抵当権の変更の登記を完了したときは,当該登記の申請人であるBに対して登記識別情報は通知されない。
解説と関連先例は肢別演習で読めます。
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