被担保債権の範囲ひたんぽさいけんのはんい
根抵当権がどの債権を担保するかを、取引の種類や特定の契約で限定して定めたものです。どんな定め方なら登記できるか、確定前の変更の申請人と承諾の要否が肢の軸です。
被担保債権の範囲は、根抵当権が担保する不特定の債権を、債務者との一定の種類の取引か特定の継続的取引契約によって限定したものです。登記記録には「債権の範囲」として記録され、根抵当権の必須の登記事項です。「銀行取引」「売買取引」のような取引の種類のほか、特定の原因に基づいて継続して生じる債権、手形・小切手上の請求権、電子記録債権も加えられます。債務者との一切の債権を担保する定めは認められず、元本の確定前なら後順位者の承諾なしに変更できますが、確定前に登記しなければ変更しなかったものとみなされます。肢では、登記できる定め方と、変更の申請人・前提登記が問われます。
民法 第398条第2項前項の規定による抵当権(以下「根抵当権」という。)の担保すべき不特定の債権の範囲は、債務者との特定の継続的取引契約によって生ずるものその他債務者との一定の種類の取引によって生ずるものに限定して、定めなければならない。

取引の種類か特定の契約で限定し、包括根抵当は認められません
債権の範囲は、債務者との一定の種類の取引によって生じる債権か、特定の継続的取引契約によって生じる債権に限定して定めます。「銀行取引」「金銭消費貸借取引」「売買取引」は取引の種類による定めで、「令和○年○月○日当座貸越契約」のように日付と名称で特定した契約は特定の継続的取引契約による定めです。「『平成30年6月6日リース取引等契約』を当該根抵当権の債権の範囲として登記の申請をすることはできない」という肢は誤りです。「信託取引」も取引の種類として登記でき、「『信託取引』を当該根抵当権の債権の範囲として当該根抵当権の設定の登記を申請することができる」という肢は正しい肢です。
手形・小切手債権や電子記録債権も加えられます
債務者との取引によらずに取得した手形上・小切手上の請求権や電子記録債権も、債権の範囲に加えることができます。取引先が振り出した手形を第三者から取得した場合などで、「手形債権 小切手債権 電子記録債権」と書きます。ただし債務者の支払停止や破産手続開始の申立て、抵当不動産への競売申立てや差押えの後に取得したものは、その事由を知らずに取得した場合を除いて根抵当権を行使できません。
確定前の変更に後順位者の承諾は要りません
元本の確定前は、根抵当権者と設定者の合意で債権の範囲を変更でき、後順位の抵当権者その他の第三者の承諾は要りません。極度額の枠が変わらないので後順位者は害されないからです。範囲を広げる変更は根抵当権者が利益を受けるので、根抵当権者が登記権利者、設定者が登記義務者です。「債権の範囲を『銀行取引』とする合意をしたときは、Aを登記権利者、Bを登記義務者として、当該根抵当権の変更の登記の申請をすることができる」という肢は誤りで、設定者Aが義務者、根抵当権者Bが権利者です。変更の登記は確定前にしなければならず、確定後に申請しても変更しなかったものとみなされます。
会社分割のときは債務者の変更を先に登記します
債務者である会社が吸収分割をすると、根抵当権は分割の時に存する債務のほか、分割会社と承継会社の両方が分割後に負担する債務を担保します。承継会社の債務だけを担保するように絞るには、まず会社分割を登記原因として債務者を分割会社と承継会社の二人とする変更の登記をします。その後に合意で債務者を承継会社だけにする変更の登記と、分割後に負担する債務に限る債権の範囲の変更の登記をします。「当該定めに従った当該根抵当権の変更の登記の前提として、会社分割を原因とする債務者を吸収分割会社及び吸収分割承継会社とする根抵当権の変更の登記の申請をしなければならない」という肢は正しい肢です。根抵当権者が分割前から持っていた債権を担保に加えるときも、債務者の変更の登記の後に債権の範囲の変更の登記を申請します。
民法 第398条の4(根抵当権の被担保債権の範囲及び債務者の変更)
元本の確定前においては、根抵当権の担保すべき債権の範囲の変更をすることができる。債務者の変更についても、同様とする。
前項の変更をするには、後順位の抵当権者その他の第三者の承諾を得ることを要しない。
第一項の変更について元本の確定前に登記をしなかったときは、その変更をしなかったものとみなす。
試験ではこう問われる
- 日付で特定した継続的取引契約や信託取引を債権の範囲にできるか(できる)
- 債務者との一切の債権を担保する定めはできるか(できない)
- 確定前の債権の範囲の変更に後順位抵当権者の承諾は要るか(要らない)
- 範囲を広げる変更の登記権利者は誰か(根抵当権者)
- 債務者の会社分割で範囲を絞るとき何を先に登記するか(債務者を両会社とする変更の登記)
この用語が問われた肢
Aを所有権の登記名義人とする甲土地について、Bを根抵当権者とする根抵当権を設定した場合において、登記原因を証する情報に被担保債権の範囲として「信託取引」と記載されているときは、「信託取引」を当該根抵当権の債権の範囲として当該根抵当権の設定の登記を申請することができる。
根抵当権の元本の確定前に債務者を吸収分割会社とする吸収分割があった場合には,分割計画書に当該根抵当権で担保すべき債権の範囲について会社分割後に吸収分割承継会社が負担する債務のみとする旨の定めがあるときであっても,当該定めに従った当該根抵当権の変更の登記の前提として,会社分割を原因とする債務者を吸収分割会社及び吸収分割承継会社とする根抵当権の変更の登記の申請をしなければならない。
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