口頭弁論の諸原則(公開主義・双方審尋主義・口頭主義・必要的口頭弁論・公開停止)こうとうべんろんのしょげんそく
口頭弁論の諸原則とは、判決の基礎となる口頭弁論を、公開の法廷で(公開主義)、当事者双方に平等に主張の機会を与えて(双方審尋主義)、口頭で陳述されたものだけを判断の資料として(口頭主義)行うという審理の方式の原則のことです。判決は原則として口頭弁論を経てしなければならず(必要的口頭弁論)、決定で完結すべき事件では口頭弁論をするかどうかを裁判所が定めます。
裁判は密室で行えば手早く済みますが、どんな言い分が出て何を根拠に勝ち負けが決まったのかが外から見えなくなります。そこで民事訴訟の判決は、公開の法廷で、当事者双方の言い分を平等に聴き、口頭で述べられたことを基礎にして下すのが原則とされています。国民が審理を監視でき、当事者も相手の主張にその場で反論できるので、裁判の公正と納得が確保されるからです。

判決は口頭弁論を経てするのが原則で、決定で完結すべき事件では口頭弁論を開くかどうかを裁判所が決めます
87条1項本文は、当事者は訴訟について裁判所において口頭弁論をしなければならないと定めます(必要的口頭弁論)。判決は、この口頭弁論に現れた主張と証拠だけを基礎にします。これに対し、決定で完結すべき事件については、裁判所が口頭弁論をすべきか否かを定めます(87条1項ただし書。任意的口頭弁論)。口頭弁論をしない場合には、裁判所は当事者を審尋することができます(同条2項)。判決にも、法律の定めにより口頭弁論を経ないでできるものがあり、訴えが不適法でその不備を補正できないときの訴え却下判決(140条)、控訴が不適法で補正できないときの控訴却下判決(290条)、上告に理由がないと認めるときの上告棄却判決(319条)がその例です。決定についても、口頭弁論を開くことが禁じられているわけではありません。「控訴が不適法でその不備を補正することができない場合において、控訴裁判所が判決で当該控訴を却下するときは、口頭弁論を経ることを要しない」という肢(R8 午後 問5 エ)は正しいです。
- 判決口頭弁論を経なければなりません(87条1項本文)。例外は、補正できない不適法な訴えの却下(140条)・控訴の却下(290条)・上告の棄却(319条)などです
- 決定口頭弁論をするかどうかを裁判所が定めます(87条1項ただし書)。開かないときは当事者を審尋できます(同条2項)
- ウェブ会議裁判所は、相当と認めるときは、当事者の意見を聴いて、映像と音声の送受信による方法で口頭弁論の期日の手続を行うことができます(87条の2第1項)。この方法で関与した当事者は期日に出頭したものとみなされます(同条3項)

対審は公開の法廷で行うのが原則で、証人尋問の期日も対審に含まれるので、憲法の要件を満たせば公開を停止できます
憲法82条1項は、裁判の対審及び判決は公開法廷で行うと定めます(公開主義)。民事訴訟では口頭弁論が対審に当たり、口頭弁論の期日に行う証人尋問も対審に含まれます。例外は憲法自身が限っており、裁判官の全員一致で公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがあると決した場合に限り、対審を公開しないで行うことができます(同条2項本文)。証人尋問の期日も、この要件を満たせば公開を停止できます。公開するかどうかは当事者が処分できる事柄ではなく、簡易裁判所の特則にも非公開を許す規定はありません。そのため、当事者双方が申し出ても、口頭弁論の期日を公開せずに行うことはできません。判決の言渡しは例外なく公開しなければなりません。公開の規定に違反したことは絶対的上告理由であり(312条2項5号)、当事者が異議を述べなくても違反は治癒されません。個別の法律では、人事訴訟の当事者尋問等で私生活上の重大な秘密にかかわる事項を尋問する場合や、特許権等の侵害訴訟で営業秘密にかかわる事項を尋問する場合に、厳格な要件のもとで公開を停止できる制度が置かれています(人事訴訟法22条、特許法105条の7)。訴訟記録の閲覧も公開主義の延長にあり、何人も閲覧を請求できますが、私生活上の重大な秘密や営業秘密が記載された部分は、当事者の申立てにより閲覧できる者を当事者に限ることができます(91条1項・92条1項)。公開を禁止した口頭弁論の記録も同じ考え方で、「公開を禁止した口頭弁論に係る訴訟記録については、当事者及び利害関係を疎明した第三者でなければ、裁判所書記官に対し、その閲覧を請求することができない」という肢(R4 午後 問2 イ)は正しいです。
口頭で陳述されたものだけが判決の基礎になるので、弁論準備手続で主張した事実も口頭弁論で結果を陳述して初めて訴訟資料になります
民事訴訟法は、口頭弁論で口頭により陳述されたものだけを判決の基礎とする口頭主義をとっています。訴状・答弁書・準備書面を提出しただけでは足りず、期日で「陳述します」と述べることで記載内容が陳述されたことになります。弁論準備手続は口頭弁論の準備のための手続で、公開が要求されず、法廷外の準備室でも行われます。そこで173条は、当事者は口頭弁論において弁論準備手続の結果を陳述しなければならないと定め、この結果陳述によって弁論準備手続で出た主張が一括して口頭弁論に上程されます。もっとも、訴えの提起や控訴の提起のように明確さが求められる訴訟行為は、訴状や控訴状を提出してしなければなりません(134条1項・286条1項)。簡易裁判所でも同じで、「簡易裁判所の終局判決に対する控訴の提起は,控訴状を提出してしなければならない」という肢(R3 午後 問3 オ)は正しいです。
双方審尋主義は当事者双方に平等に主張の機会を与える原則で、手続の中断や対席の保障がこれを支えています
双方審尋主義とは、当事者の双方に、平等に主張と立証の機会を与えなければならないという原則です。当事者対等の原則や武器平等の原則とも呼ばれます。当事者が死亡したり訴訟能力を失ったりして手続に関与できないときに訴訟手続を中断する制度(124条以下)は、関与できない当事者を置き去りにして手続を進めないことで、この原則を実質的に保障しています。また、公平に言い分が聴かれていることが当事者に分かるように、期日には当事者双方が同時に立ち会えることが求められ、弁論準備手続も当事者双方が立ち会うことができる期日において行われます(169条1項)。
証人と当事者本人の尋問は、争点と証拠の整理が終わった後に集中して行わなければなりません
182条は、証人及び当事者本人の尋問は、できる限り、争点及び証拠の整理が終了した後に集中して行わなければならないと定めます(集中証拠調べ)。期日ごとに証人を一人ずつ調べ、次の期日が数か月先になる審理では、裁判官の心証が薄れ、裁判官の交代で直接主義の実質も損なわれるからです。まず準備的口頭弁論・弁論準備手続・書面による準備手続で争点と証拠を絞り込み、その後に人証の取調べをまとめて行います。
民事訴訟法 第87条第1項当事者は、訴訟について、裁判所において口頭弁論をしなければならない。ただし、決定で完結すべき事件については、裁判所が、口頭弁論をすべきか否かを定める。
憲法82条2項裁判所が、裁判官の全員一致で、公の秩序又は善良の風俗を害する虞があると決した場合には、対審は、公開しないでこれを行ふことができる。但し、政治犯罪、出版に関する犯罪又はこの憲法第三章で保障する国民の権利が問題となつてゐる事件の対審は、常にこれを公開しなければならない。
民事訴訟法 第173条(弁論準備手続の結果の陳述)
当事者は、口頭弁論において、弁論準備手続の結果を陳述しなければならない。
民事訴訟法 第182条(集中証拠調べ)
証人及び当事者本人の尋問は、できる限り、争点及び証拠の整理が終了した後に集中して行わなければならない。
試験ではこう問われる
- 判決は口頭弁論を経るのが原則(87条1項本文)だが、140条・290条・319条など口頭弁論を経ない判決もある。不適法で補正できない控訴の却下判決もその一つ(R8 午後 問5 エ ○)
- 決定で完結すべき事件は、口頭弁論をするかを裁判所が定める(87条1項ただし書。任意的口頭弁論)
- 証人尋問の期日も対審に含まれ、憲法82条2項の要件を満たせば公開を停止できる。当事者双方の申出があっても口頭弁論を非公開にはできない
- 判決の言渡しは例外なく公開で、公開の規定違反は絶対的上告理由(312条2項5号)として異議権の喪失で治癒されない
- 公開を禁止した口頭弁論に係る訴訟記録は、当事者と利害関係を疎明した第三者に限り閲覧を請求できる(91条2項、R4 午後 問2 イ ○)
- 弁論準備手続で主張された事実は、結果を口頭弁論で陳述して訴訟資料になる(173条)。控訴は控訴状を提出してする(286条1項、R3 午後 問3 オ ○)
- 証人と当事者本人の尋問は、争点と証拠の整理の後に集中して行う(182条)

