証人義務と証人能力しょうにんぎむとしょうにんのうりょく
証人能力とは、証人として尋問を受けることができる資格をいい、当事者本人とその法定代理人(法人の代表者を含む)を除いて誰にでも認められます。証人義務とは、日本の裁判権に服する者が負う、証人として出頭し、宣誓し、証言する義務をいいます(190条)。
事故を目撃したのが子どもだけでも、その子の話は真相を知る大切な手がかりです。だから民事訴訟では、誰でも証人になれるのが原則です。ただし、訴訟の当事者自身やその代わりに訴訟をする法定代理人は、自分の事件の証人ではなく当事者として話を聞かれます。また、証人として呼ばれた人は、来て、宣誓して、話す義務を負います。真実を明らかにする裁判に協力することは、社会の一員としての義務だからです。

証人には誰でもなることができ、呼ばれた証人は出頭・宣誓・証言の義務を負います
裁判所は、特別の定めがある場合を除き、何人でも証人として尋問することができます(190条)。証人となる資格(証人能力)には年齢や能力の制限がなく、証人義務は日本の裁判権に服するすべての人が負う一般的な義務です。証人義務の内容は、出頭義務・宣誓義務・供述(証言)義務の三つに分けて説明されます。特別の定めの例として、公務員又は公務員であった者を職務上の秘密について証人として尋問するには、監督官庁の承認が必要です(191条1項)。また、一定の事由があれば証言や宣誓を拒むことができ、これは証言拒絶権の語で扱います。義務に違反したときの過料・罰金・勾引は、証拠調べに協力しない者への効果の一覧で扱います。
当事者本人と法定代理人・法人の代表者はその訴訟の証人になれず、当事者尋問の手続で尋問します
当事者本人は、当事者尋問(207条以下)によって尋問されるので、自分の訴訟の証人にはなれません。訴訟で当事者を代表する法定代理人にも当事者本人の尋問に関する規定が準用されるので(211条)、法定代理人も当事者尋問の手続によります。法人の代表者には法定代理人の規定が準用されるので(37条)、株式会社を代表する代表取締役も当事者尋問の手続で尋問し、証人として出頭・宣誓する義務は負いません。
訴訟代理人、補助参加人、判決が確定した共同訴訟人は当事者ではないので、証人になることができます
訴訟委任による訴訟代理人は当事者でも法定代理人でもないので、その訴訟の証人になれます。補助参加人も、判決の名宛人となる当事者ではなく、当事者を補助する立場にとどまるので、補助参加をした訴訟で証人になれます。通常共同訴訟で共同訴訟人の一人について第一審判決が確定すれば、その者は控訴審の当事者ではなくなるので、控訴審で証人として尋問できます。

年少者や宣誓の趣旨を理解できない者も証人として尋問でき、その場合は宣誓をさせないだけです
証人には特別の定めがある場合を除き宣誓をさせなければなりませんが(201条1項)、16歳未満の者又は宣誓の趣旨を理解することができない者を証人として尋問する場合には、宣誓をさせることができません(同条2項)。この規定は、これらの者も証人として尋問できることを前提にしています。16歳未満の者に宣誓をさせられないことは、法定代理人の同意で変わりません。「16 歳未満の者を証人として尋問する場合であっても、法定代理人の同意があれば、宣誓をさせることができる」という肢(R5 午後 問4 エ)は誤りです。反対に、16歳以上であれば未成年者でも宣誓させることができ、親権者や後見人の同意は要りません。また、196条に該当して証言を拒めるのにこれを行使しない証人については、宣誓をさせないことができます(201条3項)。
証人は自己や近親者に著しい利害関係のある事項について宣誓を拒むことができ、専門家が職務で知った事実を述べるときは証人として扱われます
証人は、自己又は自己と196条各号に掲げる関係(配偶者・4親等内の血族・3親等内の姻族の関係にあり又はあったこと、後見人と被後見人の関係)を有する者に著しい利害関係のある事項について尋問を受けるときは、宣誓を拒むことができます(201条4項)。宣誓をすれば偽証罪の制裁を背負うことになり、近しい者の利害がかかった場面でそれを強いるのは酷だからです。また、患者を治療した医師にその患者の症状を述べさせる場合のように、特別の学識経験によって知り得た事実の尋問は、鑑定ではなく証人尋問の規定によります(217条。鑑定証人)。鑑定人は学識経験に基づく意見を述べる者で、鑑定に必要な学識経験を有する者が負う鑑定義務(212条1項)は、鑑定の語で扱います。
民事訴訟法 第190条(証人義務)
裁判所は、特別の定めがある場合を除き、何人でも証人として尋問することができる。
民事訴訟法 第201条第2項十六歳未満の者又は宣誓の趣旨を理解することができない者を証人として尋問する場合には、宣誓をさせることができない。
民事訴訟法 第211条(法定代理人の尋問)
この法律中当事者本人の尋問に関する規定は、訴訟において当事者を代表する法定代理人について準用する。ただし、当事者本人を尋問することを妨げない。
試験ではこう問われる
- 16歳未満の者には、法定代理人の同意があっても宣誓をさせることができない(201条2項。R5 午後 問4 エ ×)
- 16歳未満の者や宣誓の趣旨を理解できない者も証人として尋問でき、16歳以上の未成年者の宣誓に親権者の同意は要らない
- 補助参加人は、補助参加をした訴訟で証人として尋問できる(H26 午後 問3 ア ○・出題当時)
- 当事者本人・法定代理人・法人の代表者はその訴訟の証人になれず、当事者尋問の手続による(211条・37条)
- 訴訟代理人は証人になれ、判決が確定した共同訴訟人は控訴審で証人として尋問できる
- 自己や配偶者などに著しい利害関係のある事項について、証人は宣誓を拒める(201条4項)

