間接事実・補助事実の自白(書証の成立の真正)かんせつじじつほじょじじつのじはく
間接事実・補助事実の自白とは、主要事実の存否を推認させる事実(間接事実)や、書証の成立の真正のように証拠の信用性にかかわる事実(補助事実)について、相手方の主張を認める陳述のことです。判例は、どちらも裁判所を拘束せず、自白した当事者も拘束しないとしています。
「この契約書は確かに私が署名したものです」と認めても、裁判所がほかの証拠から「いや、これは偽造だ」と判断することは許されます。契約書が本物かどうかは、権利の発生を直接決める事実ではなく、証拠をどこまで信用するかの問題だからです。主要事実を推認させる間接事実も同じです。裁判官の自由な心証による事実認定を、当事者の自白で縛るのは不自然です。そこで、間接事実と補助事実の自白には、主要事実の自白のような拘束力は生じません。

間接事実の自白は、裁判所も自白した当事者も拘束しません
弁論主義が及ぶのは主要事実で、主要事実の存否を推認させる間接事実は、証拠と同じく事実認定の材料です。もし間接事実の自白が裁判所を拘束すると、裁判所は不自然な事実を前提に主要事実を推認しなければならなくなり、自由心証主義(247条)とぶつかります。判例(最判昭和41年9月22日)は、債権譲渡の抗弁を基礎づける建物の売買の事実について、主要事実を認定する資料となるにすぎない間接事実であるとし、その自白は裁判所を拘束しないのはもちろん、自白した当事者も拘束しないとしました。そのため間接事実の自白は撤回でき、真実に反すると知りながら認めた場合でも撤回できます。Yの占有権原の抗弁の前提となる、XとAの過去の賃貸借の事実を、真実に反すると知りながら認めた場合でも、否認に変更できます。「間接事実についての自白は、裁判所を拘束しません」という肢(R7 午後 問2 ア。対話形式の問の解答)は正しいです。XA間の合意解除の事実を認めた場合も、裁判所は証拠調べの結果に基づいてその事実を認めないことができます。貸金請求で過去に別の消費貸借をした事実を被告が認めても、被告はその陳述を撤回できます。
主要事実を否認しながらそれを推認させる事実だけを認めても、裁判所はその事実を判決の基礎としなくてかまいません
被告が抗弁としてAとの賃貸借(賃料月10万円)を主張し、原告が賃貸借の締結は否認しつつ、YがAに毎月10万円を支払っていたことは認めたとします。月々の支払は賃貸借を推認させる間接事実にすぎないので、自白としての拘束力はなく、裁判所はほかの証拠と合わせて自由に評価できます。また、自白が成立するかは主要事実ごとに判断します。無断転貸による解除を理由に土地の明渡しを求める原告に対し、被告が合意解除による賃貸借の終了を認めても、それは原告の主張する解除とは別の主要事実で、原告が援用しない限り一致はありません。しかも「契約が終了した」ことは事実ではなく法的評価です。そのため、裁判所は賃貸借契約の終了を判決の基礎としなければならないわけではありません。

書証の成立の真正を認める陳述は補助事実の自白で、裁判所を拘束せず、いつでも撤回できます
書証の成立の真正とは、その文書が挙証者の主張する作成者の意思に基づいて作成されたことで、文書の形式的証拠力を基礎づける補助事実です。判例(最判昭和52年4月15日)は、書証の成立の真正についての自白は裁判所を拘束しないとしました。そのため裁判所は、相手方が成立の真正を認めていても、証拠から文書が真正に成立したものではないと判断できます。「文書の成立の真正についての自白は,裁判所を拘束しない」という肢(R3 午後 問4 イ)は正しいです。「書証の成立の真正についての自白は、裁判所を拘束します」という肢(R7 午後 問2 イ。対話形式の問の解答)は誤りです。領収証の成立の真正を原告が認めても、裁判所はそれが原告の作成したものではないと判断できます。当事者の拘束力も生じないので、委任状の成立の真正を認めた当事者は、その陳述をいつでも撤回できます。
拘束力はなくても、争いのない補助事実は証拠によらずに認定できます
間接事実や補助事実の自白に拘束力がないといっても、179条の証明不要の効果まで否定されるわけではありません。当事者間に争いがなければ、裁判所は証拠調べをしないでその事実を認めてもかまいません。つまり、拘束力がないことの意味は、裁判所が反対の認定をしてもよく、当事者も撤回してよいという点にあります。なお、主要事実と間接事実のどちらにも拘束力を認めるべきだとする見解もあります。私文書の成立の推定は後半の私文書の成立と二段の推定の語で扱います。
- 主要事実の自白不要証効・裁判所拘束力・不可撤回効がすべて生じます
- 間接事実の自白証明は不要ですが、裁判所も自白した当事者も拘束しません(最判昭和41年9月22日)
- 補助事実(書証の成立の真正)の自白証明は不要ですが、裁判所を拘束せず、いつでも撤回できます(最判昭和52年4月15日)
- 法的評価(契約の終了など)事実ではないので自白の対象になりません
民事訴訟法 第247条(自由心証主義)
裁判所は、判決をするに当たり、口頭弁論の全趣旨及び証拠調べの結果をしん酌して、自由な心証により、事実についての主張を真実と認めるべきか否かを判断する。
試験ではこう問われる
- 間接事実の自白は裁判所も自白した当事者も拘束せず、真実に反すると知りながら認めた場合でも撤回できる(最判昭和41年9月22日、R7 午後 問2 ア ○)
- 主要事実(賃貸借の締結)を否認しつつ間接事実(毎月の支払)を認めても、裁判所はその事実を判決の基礎としなくてよい
- 合意解除による終了を認めても、原告の主張する解除とは別の主要事実で、契約の終了は法的評価なので、裁判所は拘束されない
- 書証の成立の真正の自白は裁判所を拘束せず(最判昭和52年4月15日、R3 午後 問4 イ ○、R7 午後 問2 イ ×)、当事者もいつでも撤回できる
- 私文書の成立に争いがなければ、証拠によらずに真正に成立したと認めることができる(179条)

